見出し画像

動物と暮らす責任、その命を守る責任

 名古屋市動物愛護センターは、犬や猫と触れ合うことのできる施設だが、実はもう一つの顔を持っていた。野良犬や捨て猫、飼い主の都合で持ち込まれたペットを殺処分する場所であった。平成21年には全国で犬6万6千匹・猫17万4千匹が殺処分され、全国47都道府県の中で、愛知県は年間の殺処分数が第1位、全国の政令指定都市の中では名古屋市も負けずに第1位という、たいへん不名誉なワースト1の記録を出していた。殺処分は“安楽死”というものの、実際にはナチスがユダヤ人に対して行った“ガス室”と同じで、狭い空間に入れられ、ガスが注入されたり、徐々に中が真空状態にされたりして、もがき苦しみながら逝くのだ。

 当時、ペットを動物愛護センターに持ち込む飼い主の言い分は次のとおりだった。「年をとったから」「病気になってしまったから」「新居に引っ越すから」「勝手に子どもを産んじゃったから」と人間の自己中心的な考え方で命を落とさざるを得ない動物がたくさんいるのだ。きわめつけは、「アホだから」と飼い犬を処分するよう持ち込んだのに、帰りに子犬を「譲ってくれ」と言った男性…。処分場所である管理棟で、捨てた犬と記念写真を撮り、そのまま置いていった親子…。動物愛護センターにやって来る犬猫はそれだけではなかった。空前のペットブームがもたらしたものは、やはり人間のエゴの発露である。血統書付きの雌犬や雌猫を狭い折に閉じ込め、ただ子犬や子猫を産ませるための道具として扱うのは、ブリーダーと呼ばれるペットの繁殖業者だ。これは現在も続いている動物虐待だ。


 令和2年度、日本全国で殺処分された犬猫の数は2万4千匹…名古屋市では令和2年度から犬の殺処分はゼロになったが、猫の殺処分数はまだまだ数十匹単位だ。
 名古屋市は、令和2年10月に「名古屋市 人とペットの共生サポートセンター」を開設し、動物愛護センターに持ち込まれる犬猫の譲渡会を主催している。「人とペットの共生するまち・なごや」を実現するために、以下の業務を担い、動物愛護への関心・理解の深め、正しい飼い方を普及するとともに、のら猫の減少、多頭飼育崩壊の減少、保護犬猫の飼育の普及を図っている。
■ 動物の適正飼養・動物愛護に関する普及啓発教室
■ ペットの飼主への支援
■ 地域猫活動の推進
■ 犬猫の譲渡会
■ ボランティアへの支援


 松山市にある愛媛県動物愛護センターは、命の大切さに気づいてもらおうと、殺処分の様子を原則公開している全国でも珍しい施設だ。希望者には面談をしたうえで、殺処分を含めて施設のほとんどの様子を公開しているという。その残酷な実態や、職員にどれだけ負担がかかっているかを市民に知らせる取り組みを続けているそうだ。この結果、犬の引き取り依頼や捨て犬は目に見えて減ったそうだ。

 私自身は小学生のころから現在に至るまで、ニワトリ、犬、猫、カメ、ハリネズミなどの動物たちに癒されながら生きてきた。生活の中にペットがいることは、時として悲しい別れに涙することがあったとしても、特に犬や猫のような表情や喜怒哀楽のある動物と一緒の生活には何とも言えない癒しがある。ペットと暮らすには、最後まで責任をもって愛情を注ぐという最低限の資格が必要だ。
 2002年に見学させていただいた名古屋市と愛知県の殺処分場の檻の中で、死を待つだけの彼らの悲しい目がそう語りかけていたのを今でも忘れない。

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。