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横断歩道で車が止まらない国:日本

 信号機のない横断歩道って、いつから自動車優先になったんだろう。私が自動車運転免許を取るために自動車学校で学んだときには、テキストには「横断歩道は歩行者優先」と書いてあったと記憶している。文教地区やビル街の裏道には「信号機のない横断歩道」がたくさんある。近くに派出所があったり、警官の姿があったりすれば、自動車は歩行者を優先して止まってくれるが、そうでない場所の「信号機のない横断歩道」では、子どもたちやお年寄りが横断歩道を渡ろうとしていても車がビュンビュン走っていく。横断歩道を渡っている人がいると、停止させられた自動車の運転手はとてもイヤそうな顔をする。運転をすると性格が変わる人がいると聞くが、この国は本当に大丈夫だろうか。

 「歩行者のいる信号機のない横断歩道での車の一時停止違反」を「歩行者妨害」というそうだ。2022年の「歩行者妨害」の検挙件数は全国で33万6504件(1日平均は約922件)で、前年より1万0735件も多くなっている。5年以上連続で増加しており2018年の約1.9倍だ。歩行者妨害等が原因の死亡事故は243件で、前年より27件も増えている。ちなみに、歩行者妨害の最も多い都道府県は、恥ずかしながら我が愛知県だ。愛知県は2018年まで16年連続で交通事故死者数ワースト1位という不名誉な記録を作り、2019年から2022年はワースト2位を続けている。
 横断歩道のない交差点でも歩行者が優先となっている(道路交通法第38条の2)。自動車だけでなく、自転車も車の一種であることを認識してほしい。歩道を猛スピードで走る自転車、人で混み合っている歩道をわざわざ自転車に乗って走ろうという人もいる。

 名城大学准教授のマーク・リバック氏が『横断歩道のルール 止まらぬ車、戸惑う外国人』と題して朝日新聞に寄稿したのは2017年11月のこと。
リバック氏は、日本に来て、とまどったことのひとつは、日本は「信号機のない横断歩道は車優先」ということだと語りながらも、日本の法律はどうなっているのかを調べてみると、日本でも信号機のない横断歩道は歩行者優先となっているのに驚いたという。このままの状態だと、日本を訪れる外国人は、「横断歩道では車は止まってくれる」のを当たり前だと思っているため、すぐに交通事故にあってしまうだろう。実際にリバック氏の母親が初めて来日したとき、横断歩道であやうく命を落としそうになったそうだ。その運転マナーは「道が整備されており、秩序を守る国」という日本のイメージからはかけ離れ、リバック氏の母親は「キラーゼブラ(=「人を殺す横断歩道」の意)」と呼んだと言う。

 外国から日本を訪れた人は「日本人は親切で礼儀正しい」と信じているので、きっと横断歩道でも「必ず停車して、私たちが渡り終わるまで笑顔で見守ってくれるだろう」くらいの期待をもっている。「日本では横断歩道で車はとまりません」と空港に降り立った外国人全員によく周知しないと、「日本人は思っていたほど親切じゃない」と来日した外国人をがっかりさせるだけでなく、実際に事故にあう外国人も出てしまうだろう。

 岡山トヨペット株式会社が、2021年4月に、春の全国交通安全運動期間にあわせて、交通事故ZEROプロジェクトとして、PR動画『Road to Ninja 〜 一億総忍者の国 〜』を公開している。この動画が面白い。この動画のテーマは、「信号機の無い横断歩道での車の一時停止」。意外と知られていないこの恐ろしい実態を周知すべく、日本文化の象徴の一つである忍者を用いて表現している。横断歩道でも車が止まらないため、日本人全員が忍者として修行し、老若男女問わずアクロバティックな動きで横断歩道を渡らざるを得なくなった日本を描いている。https://youtu.be/yiVyULb7AGA

 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)の調査によると、岡山県では、歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとする場面で一時停止した車は、 2021年にはわずか10.3%で、全国ワースト1位だった。この結果を受けて、横断歩道での一時停止を啓発するPR動画を公開したり、また県内では官民一体となって一時停止を促す活動を展開した。すると、2021年に10.3%だった一時停止率は、直近の2022年調査では49.0%と、38.7ポイントもの大幅改善。伸び率は全国2位で、順位も最下位から20位になり、大きく改善する結果となった。一方で、日本全国で見ると「信号機のない横断歩道での車の一時停止」率は平均39.8%で、以前と比較すると徐々に改善しつつあるもののいまだに60%以上が一時停止をしていない。岡山県の大幅改善の流れをぜひ全国に広げて、日本の一時停止率を底上げしていくために、岡山トヨペットが今回制作したPR動画が『横断歩道の恋?』。この動画もかなり面白い。https://youtu.be/XCEIiJgTVQQ?list=TLGGjRuR0N-2cC4yMDA5MjAyMw&t=26

 自虐的だが、この方が国民の心に届くのかもしれない。


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