見出し画像

昆虫の危機は人類の危機を招く

 2019年に発表された研究報告によると、「世界中の昆虫種の数が40%減り、絶滅の危機に瀕しているという。昆虫の減少は恐るべき脅威であり、 「地球の生態系を壊滅的に崩壊させる」引き金になり得ると最新の研究は記した。生息地の破壊や農薬の土壌への散布、外来異種の存在などが原因とみられ、気候変動の影響も指摘される。

 世界各地で今までに発表された昆虫の減少に関する73件の研究によると、地球上に生息する昆虫の総数が1年に2.5%のペースで減少しているという。この傾向が続けば、100年後の2119年には地球上から昆虫がいなくなるかもしれないとの研究報告だ。

 昆虫の減少は大問題だ。昆虫は、鳥、魚、哺乳類など数多くの生物の食糧であり、また、ハチや蝶といった花粉を運ぶ昆虫は、果物、野菜、ナッツ類の栽培において極めて重要な役割を担っている。蛾や蝶もヨーロッパ各地およびアメリカから姿を消しつつある。イギリスでは、2000〜2009年の間だけで、農地に生息する蝶が58%減少した。トンボ、カゲロウ、カブトムシも同様に減少しているようだ。同研究は、昆虫は「すべての生態系を正常に機能させるために必須のもの」と強調した。昆虫は食糧源、農作物の花粉の媒介者、害虫の天敵、土壌の栄養をリサイクルする存在だ。「もしも昆虫種の減少をくい止めることができなければ、地球の生態系と人類の生存のどちらにとっても壊滅的な結果となる」と専門家は語る。

 2017年に発表された研究によると、地球上のすべての動物の個体数を観察すると(昆虫だけでなく)、地球は「生物学的な絶滅」の過程にあるようだ。研究は「かつて地球上に生息していた動物個体のうち、およそ50%がすでに絶滅した」と推測した。この地球規模の生物多様性の急激な減少は、時に「6度目の大量絶滅」と呼ばれる。地球の生物史においては、過去に5度、動物の数が大規模に減少している。

 過去の大量絶滅は氷河期の到来や隕石の衝突が原因だった。しかし、今回の大量絶滅は「人間の活動が原因」、つまり、森林破壊、資源採掘、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出などだ。

 「昆虫は陸上の生物の約3分の2を占める。上記の傾向は、6度目の大量絶滅が地球上の生物に大きな影響を与えていることを示している」と研究は記した。昆虫はまた、鳥、魚、そして他の脊椎動物にとって重要な食糧源であり、昆虫がいなくなれば、それらの動物もいなくなると付け加えた。

 農業が昆虫減少の原因と科学者が昆虫の急激な減少に警鐘を鳴らしている。2017年、ある研究はドイツに生息する飛行昆虫の数が1990年代と比較して、75%減少したと指摘した。殺虫剤、肥料、そして土地の過度な農業利用がこの減少の主な要因だ。「全体的に見ると、過去60年間、殺虫剤が農地や牧草地において、体系的かつ広範囲、そしてしばしば必要以上に使用されてきたことが、昆虫から鳥、コウモリまで、ほとんどの生物にネガティブな影響をもたらした」と研究は記した。そして次のように付け加えた。「結論は明白。我々が食糧の生産方法を変えない限り、すべての昆虫が数十年で絶滅の道をたどることになる」

 日本でも里山の蝶や蛍などの数が2008年から2017年の間に大幅に減ったことが報告されている。ゲンゴロウやタガメなど昔はどこにでもいた昆虫が今や絶滅危惧種だ。たしかに、カミキリムシやザリガニ、カマキリ、カエルの卵など、子どものころにふつうに見られた生き物にしばらくお目にかかっていない。

 人類は自分で自分の首を絞めるような行いばかりしている。1月7日の朝日新聞の「折々のことば」に載っていた。「動物も人間もさ、地球に間借りっしてるんだって思ったらどうだい!」…漫画家の坂口尚氏が『石の花』というマンガで使った言葉だそうだ。たしかに、地球は人間だけのものではない。未来を生きるすべての生命体のために地球環境を美しいまま継承するのが、今を生きるすべての生命体の責任なのではないだろうか。

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。