女性議員の割合が先進国最低の日本 女子教育問題の解決に乗り出してくれそうな女性候補者は?(Wezzy2021.10.23掲載)
10月31日は衆議院選挙投開票日です。今回は女子教育の問題を解決するために活動してくれるのでは、と期待できる女性の候補者を列挙してみようと思います。
先進国の中で日本が、女子教育の問題が最も大きな国であることは繰り返し言及してきました。実はインドやドイツでは、女性の議員が増えるとチャイルドケアや女子教育が改善するという因果関係を明らかにした研究があります(チャイルドケアや女子教育が推進されている社会だから女性の政治家が多く誕生する、という逆側の因果関係ではないのがポイントです)。途上国の教育支援をしていても同様の感触がありました。おそらく日本も、女子教育問題を解決するためのキーパーソンになるのは女性の国会議員でしょう。
しかし、日本の国会議員に占める女性議員の割合も先進国で最低です。そして今回の衆議院選挙でも、政党からの候補者のうち女性はたった18%しかいないようです。この数字はどうやっても擁護できるようなものではありません。
このような状況なので、私としては女性の候補者には全員当選してもらいたいと思っています。とはいえ、「性別ではなく、能力の高い候補者が政治家になってくれることがベストだろ!」という意見も同意できるところはあります。そこで今回は日本の女子教育の問題を解決してくれるポテンシャルが高いと考えられる女性の候補者たちを紹介していきたいと思います。
6割以上の小選挙区に女性候補者がいない!
先日、ある政治ゴシップを読み、「女性の候補者の中でも女子教育の問題を解決してくれるポテンシャルに濃淡があるかもしれないな」と思いました。私は政治ゴシップにはまったく関心がないのですが、話題になった政治家の教育関係のマニフェストは必ず目を通すようにしています。
「教育」は皆が経験するため、何かしら一家言を持てるものです。しかし、自分の経験が広く他人に当てはまることはほぼありえません。教育関係のマニフェストを読み込むと、自分の経験や思い込みで政策を考えてしまう人なのか、データや研究から政策を考えられる人なのか、さらにはデータや研究に自分の経験や思いを乗せて語れる人なのかが判断できると私は考えています。
件の自民党の高橋舞子候補のそれを読むと、男女間の賃金格差や、給食費の問題、未就園児への支援などを掲げています。一方、先進国で最低水準の女性の大学院進学率や、理系進学率、旧帝国大学群で女子学生が1/3にも満たないといった女子教育の問題には全く触れられていません。これが女性候補者の中でも女子教育の問題を解決してくれるポテンシャルに濃淡があるのかもしれないと思った理由です。
この疑問を解決するために、今回の衆議院選挙すべての女性候補者のマニフェストをレビューして、女子教育の問題を解決してくれそうなマニフェストを持っている候補を探しました。
衆議院選挙の比例代表は、拘束名簿方式のため個人名で投票することができません。今回は小選挙区から立候補する女性にだけフォーカスを当てました。
選挙ドットコムにまとめられている候補者のうち、10月17日時点で各小選挙区の予想される顔ぶれに掲載された女性候補者のHPに掲載されているマニフェスト(政策)をレビューしました。小選挙区のみなのは、比例代表は個人名で投票ができないためです。
また、調べていく途中で小選挙区から比例に回るといったニュースが引っかかった人はリストから除外しています(群馬一区の自民党の尾身朝子さんなど)。
リストを作成してみて驚愕したのが、全国で289ある小選挙区のうち、177、すなわち61%の小選挙区では女性の候補者が一人もいないという点です。残りの女性候補者が少なくとも一人はいる122の小選挙区のうち21の小選挙区では、立候補している女性候補者全員の(女性候補者が一人しかいない小選挙区ではその女性候補者の)学歴ないしはマニフェストが分かりませんでした。これも勘案すれば、実に7割の小選挙区では女性候補者による政策提言が選択肢に入らないという惨状です。
これにはかなりの地域差があります。秋田県や高知県、新潟県西部から長野県北部、富山県、石川県には女性の候補者が一人もいないようです。一方で、都心部を見ると半数程度の小選挙区には少なくとも一人は女性の候補者がいます。私も岐阜の田舎から大学で上京した口なので実感がありますが、同じ日本の中でも住んでいる地域によってジェンダー問題の見え方が相当に違うんだろうなということを実感させられます。
期待できる女性候補者は…?
女性候補者達の教育関連のマニフェストを読む前に、少し寄り道をして、女性の活躍・ジェンダー平等がどれだけ言及されているか紹介します。
当然ですが、女性候補者というだけで育児や男女間格差、ジェンダー平等の問題に取り組んでくれるというわけではありません。自身のHPに経歴やマニフェストが掲載されている99名の女性候補のうち、実に24名はそのようなトピックにまったく触れていませんでした。
候補者たちの中は、特定の業界団体を代表していて、その業界に関することしか政策で言及していないという人もいます。さらに、そもそもマニフェストが全然出来ていない、このトピックにまったく興味関心が無さそう、という候補者たちもいました。どのような政策を掲げている候補なのか、一人一人しっかり確認しないといけないと改めて思わされました。
肝心の教育政策、特に女子教育についてですが、残念ながら女子教育に言及している女性候補者は2名しかいませんでした。
一人は宮崎1区の脇谷のりこ候補(無所属・元自民党県議)で、「教育における男女間格差の改善」が掲げられていました。もう一人は千葉7区の竹内千春候補(立憲民主)で、「学校教育において、性別役割分担意識をなくし、多様な性のあり方を知り理解する機会をつくる」とかなり踏み込んだ政策を掲げていました。たった2名しか女子教育について考えていないのかと愕然とさせられましたが、この2名が落選するようなことがあれば、より一層状況は厳しくなるでしょう。
次に、教育のことをしっかり考えていてくれて、きっと女子教育の問題も考慮してくれるだろうという候補者を紹介したいと思います。
候補者たちによく言及されていた人気の教育政策は、①教育費無償化or負担軽減で機会の平等、②少人数学級、③給食費の無償化の3点セットです。この中で3番目は異論がないのですが、①と②は難しいところがあります。
まず①は、逆進性や教育の質、ガバナンスの問題が発生してくるので、+αでもう一歩踏み込んで政策を考えていく必要があります(詳しくは私のブログを参照ください)。
②の少人数学級も、教員の過酷な労働環境が明るみに出て、教職志望者が減少する中で、必要数が増加する教員(志望者)の数と質をどう確保していくのか、これも+αでもう一歩踏み込んで政策を考えていく必要があります。
また、諸外国と比べて日本の基礎教育段階で明確に問題になっているのが、女子教育に加えて、教育におけるICTの活用です。これをスルーしてしまうのも、あまり褒められたものではありません。
この+αの部分や教育とICTで様々な研究結果と照らし合わせて教育政策的に妥当だと考えられる候補に絞りたかったのですが……あまりにも人数が少なくなってしまったので、今回は妥当性はともかく+αまで踏み込めている、女子教育の問題を解決してくれそうなポテンシャルを持っていると私が考える候補の列挙に留めておきたいと思います。
北海道11区中川郁子候補(自民)
東京6区碓井梨恵候補(維新)
東京8区吉田晴美候補(立憲民主)
東京15区金澤結衣候補(維新)
神奈川2区岡本英子候補(立憲民主)
愛知10区安井美沙子候補(れいわ)※旧HPに掲げられていたもの
岐阜5区今井瑠々候補(立憲民主)
京都1区堀場幸子候補(維新)
大阪5区大石晃子候補(れいわ)
大阪9区大椿裕子候補(社民)
大阪11区佐藤ゆかり候補(自民)
徳島2区中野真由美候補(立憲民主)
この2名+12名の計14名を列挙すると、他の女性候補はダメなのかと思うかもしれませんが、そうではありません。男性の候補のマニフェストもパラパラと眺めてみましたが、子育て・ジェンダー・教育の問題をしっかりと考えられている候補は、女性の候補以上にまばらで唖然とさせられました。そもそも女性の候補者が全員当選したとしても、男女半々からは程遠い女性の衆議院議員の割合にしかなりません。この14名は、日本の女子教育とジェンダー平等の問題を考えた時に、落選されては本当に困る14名だ、と解釈してもらえれば幸いです。
しかし、男女問わずですが、政治家の教育関連のマニフェストを読んでいると、教育政策ではなく中学校の校訓のようなことをつらつらと書いている人が散見され、かなりイラっとさせられます。そういう政治家が落選して、効果・効率・公平性を勘案した教育政策を考えてくれる政治家の割合が増えてくれるような選挙になると良いですね。
サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。