教育関連のミレニアム開発目標(MDGs)小ネタ-小学校の修了率をどう計測するか?(2010年9月頃の話)

国連でMDGsサミットが行われているので、MDGsの教育部分について少し触れてみようと思います。

MDGsは8つの開発目標を60からなる指標で評価しています。

教育関係はMDGsの
ゴール2:Achieving Universal Primary Educationと
ゴール3のPromote Gender Equality and empower women
に含まれています。

指標で言うと、
2.1初等教育純就学率
2.2最終学年残存率(初等教育修了率)
2.3青年(15-24)識字率
3.1初等・中等・高等教育における男女間格差(gender Parity Index:GPI)
の辺りになってきます。

今回小ネタにしたいのは、初等教育修了率です。

初等教育修了率と言われると、どれだけの子どもが小学校を卒業したかだから、卒業生の数に関する指標なんだな、と思うかもしれませんが、そうではありません。

途上国は先進国に比べて教育行政のキャパシティーが弱いので、データを正確に収集することができない国が殆どです。多くの国では1年に1回調査を行ってデータを取っています。大体は年度初めに調査を実施して就学率に関するデータを取っているので、卒業に関するデータも取ろうとすると、年度末にもう一度調査を実施して卒業や進級できそうかのデータを取らなければならず、2回データを取りに行かなければならなくなり、コストが現状の倍へと跳ね上がります。コスト的に正直それは難しいので、何らかの指標を用いて修了率の代替指標としなければいけません。

今日お仕事で教育分野でない人と話していて、小学校から中学校に進学した割合ではダメなのか?と質問されたのですが、これはダメなのです。これはTransition rateと呼ばれる指標が設定されています。Transitionできるかどうかは、小学校最終学年の教育よりも、中学校のほうにそれだけの生徒を受け入れられるだけのキャパがあるかどうかに影響されるものなので、初等教育の成果をTransition rateをもって論じることは出来ません。

確かに、先進国で生まれ育つと、小学校が終わったら中学校に当たり前のように進学するので気づきづらいかもしれませんが、途上国で小学校が拡大したスピードよりも中学校が拡大するスピードのほうが圧倒的に遅いので、結構多くの生徒が中学校に行くことを断念しています。

では、どのような指標が初等教育修了率の代替指標とされているかというと、gross intake rate to last grade of primary education(租最終学年進級率)です。これは、ある年度の最終学年の生徒数から、前年度留年して最終学年に残っている生徒数を引き、その学年に当たる年齢の人口で割ったものです。

ちょっと奇妙な感じがするかもしれませんが、よく考えてみるとなるほどな、となるかと思います。もし、なるほど!と思えなかったら、僕も上司に話してみたいと思うので是非何かコメントください。

サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。