ネパールの教育現場を見てきた話③
うちのNGOの現場を視察に行ってきました。普段から活動報告はNGOのFBページでしているのですが、少し専門的な見解も交えて視察報告を簡単にしようと思います。前回は学習教材の話をしました。今回は子どもたちの栄養支援の必要性についての話です。
人的資本論の肝は、教育を受けて健康な人間は生産性が高く、それが高賃金という形で表れ、所得上昇を通じた貧困削減、個々人の所得上昇がまとまることで国として経済成長が起こる、という点にあります。ここでの肝は、「健康な」という点です。前回説明したように、学習センターでは子どもたちの衛生チェックをしています。しかし、今回の視察をしてみて、子どもたちの栄養状況に関して大きな懸念が生じました。
上の写真は学習センターの様子です。写真を見てもらうと分かるのですが、痩せている子どもが多いです。さらに年齢を調査してみると、年齢の割にかなり身長が低いことも分かりました。Demographic and Health Survey (DHS)という家計調査によるとネパールの子どもの30%は栄養不良の状態にありますが、この学習センターに来ている子どもは基本的に貧困層の子どもなので、大半の子どもが栄養不良の状態にあると感じました。
実際に学習センターをずっと観察していると、学校に飲料水の蛇口があるので(ネパールの水道水は基本的に汚染されているので、飲料水専用の蛇口がある所以外では水道水は飲まないようにしてください。)、ちょくちょくセンターを抜け出して水を飲みに行く子が何人もいました。
私が中学生の時の読んだ「ゾマホンの本」にも出てくる話なのですが、貧しい子どもは空腹を紛らわせるために水を大量に飲む、というのは途上国ではよく聞く話です。もちろん水を飲みに外に出てしまう分学習も阻害されますが、さらに空腹状況で学習に集中するというのも難しい話です。
さらに深刻な問題は、栄養不良を幼いうちに経験すると脳の発達に影響が出て、生涯に渡って学習が阻害されるという点です。学習センターに来ている幼い子どもを見ていると、この状況に陥っていることが疑われる子が多数おり、特に就学前の子どもを対象とした栄養補助の必要性があります。
そこで、現地での理事会で就学前の子どもを対象とした学習センターのクラスで、栄養補助の実施を提案したのですが、これを実施するとより多くの子どもがクラスに殺到し、資金的にも人員的にもさばけなくなるということで現時点での実施はあきらめることになりました。。。もう少し資金があれば脳の発達が阻害されることも、空腹で集中できないこともなく、子どもたちが学習に集中できるようになるので、この記事を読まれた方のご支援を頂ければ幸いです。(続く)
10月10日にサルタック活動報告会兼セミナー「震災後ネパールの教育のために日本の市民社会ができること」を開催します。教育政策や国際協力の国際的な潮流を踏まえたお話をさせて頂くのでぜひご参加ください!お子様連れも大歓迎です!
FB: https://www.facebook.com/events/469122606625663/
サルタック・シクシャは、ネパールの不利な環境にある子供達にエビデンスに基づいた良質な教育を届けるために活動していて、現在は学校閉鎖中の子供達の学びを止めないよう支援を行っています。100円のサポートで1冊の本を子供達に届ける事ができます。どうぞよろしくお願いします。