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新しい街 新しい渋谷

メディアでも多く取り上げられているのでご存知の方も多いかと思いますが、渋谷の街は再開発の真っ只中にあります。
桜丘(さくらがおか)と名付けられたその地域も、あっという間にその姿を変えました。
正しくは姿を変えている途中ですが、私が頻繁にこの場所を訪れるようになってから約一年が経ち、全く別の街になったと言っても過言ではありません。
どうやら東急不動産が本気モードのようです。
 
名前の由来にもなっている(と思っている)桜並木が続く坂の下の横断歩道。
その縞模様は夜になれば全く意味を成さないものと化し、酔い心地で帰路につく人たちは誘導に従ってほんの少しの迂回を余儀なくされています。
カラーコーンで示されたその迂回路。
これが毎晩場所を変えるものですから、そんなことでもまた変わりゆく街のスピードを感じてしまいます。
 
再開発の対象となる区画には今でもたくさんのビルが建っていますが、そこに入っていた店舗は順番に店を閉め、最後まで営業していたいくつかの店舗も昨年の10月31日には全て営業を終了しました。
夜遅くまで開いていて嬉しかった本屋も、二次会で寄った地下のバーも、いつか行こうと思っていたラーメン屋も全部が高く張られた鉄板の向こうにいます。
次々と店舗が閉まり、明かりの減っていく頃は渋谷駅前だと思えないほどの暗がりでしたが、今は工事用のライトが煌々と灯っています。
 
飲食店のビルが次々と店を閉めていく時期にこの再開発地区近辺を歩くことはちょっとした恐怖でした。
既に閉店した多くの店舗の扉にはどこにも
【ネズミ駆除作業中】という内容の貼り紙が貼られ、それを証明するかのようにたくさんのネズミたちがビルを飛び出しあっちでチュー、こっちでチュー。
チュー、チュー、チュー。
同じチューでも帰宅チューの私は
おっとさんがよんでも
おっかさんがよんでも
いきっこなしよ
という訳にも行かないものですから、ドキドキしながらそこを歩きました。
そんな私を嘲笑うかのように目の前を駆け抜ける長いしっぽの彼ら。
一体何匹のネズミたちが横切ったことでしょう。
道端でチューしているカップルの前ではこちらが横切る側になりましたが、そういう例外的な場合も含めて遭遇したくないという気持ちでいっぱいでした。
(困ったことに路チューは大体年齢高めのカップルが行う行為なので)
 
一度なんかは目があった工事現場の作業員の人に
(ちょっとそっち見てみろよ)
というアクションを取られてふと指差した先を見てみたら、大きなネズミの死体が転がっていて思わず
「おおっ!」と声をあげて驚いたこともありました。
「ハハッ!」と文字にすれば同じだけれど、千葉にいるネズミとは違って全くかわいげのないおじさんの笑い声。
真面目に仕事しなさい!と言うこともせず去ったことが今は少しだけ悔やまれマウス。
 
そんなおじさんがおじさんを驚かせて喜ぶ街、渋谷。
桜丘に限らず再開発はあちこちで行われています。
一年後、そのまた一年後にはどんな街になっているのでしょう。
たくさんのネズミたちの行き先と同じくらい気になる渋谷の行く末なのでした。

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