経営企画から見た“組織アイデンティティ“の定義と活用のススメ
こんにちは。
「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに、医療プラットフォームを提供しているUbie株式会社で経営企画を担当しているhossoです。コンサル2社でのキャリアを経て3年半前にUbieに入社し、2年半ほど前から経営企画の仕事をしています。
今回はこれまでの振り返りも兼ねて、またこれからに向けて考えを改めてまとめるためにも、経営企画としてどのようなことを押さえて仕事をすべきなのか、Ubieの事例に触れながら整理・言語化してみたいと思います。
特に、意思決定の軸となる組織のIdentityの有用性について、経営企画の観点からまとめてみます。
*この記事は #Ubie ACC Advent Calendar 19日目にエントリーしています。
経営企画の役割は会社毎にそれぞれ異なりつつも、何でも屋としての側面は多少なりともどこの会社にもあると思います。それゆえに経営企画として物事を進めたり判断の軸を持つことは非常に重要だと感じています。
基本に立ち返って、Vision / Missionを目指す上での意思決定の軸となるIdentityを定義しそれに寄り添うことが、全体の設計や仕事の進め方、事業のやり方といった自由度の高いものを扱うにあたり非常に重要だし有益という思いが強くなってきている今日この頃です。
スタートアップで経営企画を担当されている/チャレンジしようとしている方を中心に、事業サイドから経営企画がどのようなことを考えているのか興味がある方の参考になれば幸いです。
なお、まだ取組み中のものや構想中のもの含めて青臭い理想を掲げている部分もありますが、その点はご容赦ください。
前提:会社の状況
まず、話の前提となる今のUbieの状況について記載します。
・将来の大きな成長に向けた一つの過程として上場を目指しています
・時期は未定ですが、近年中に上場可能な状況を目指すべく準備も進めています
・toC(生活者様向け)、toB(医療機関様向け)のプロダクトを展開しつつ、それをプラットフォームとして製薬企業様向けの事業を展開しています
・プラットフォームを築くピュアなR&Dフェーズを終え、PLの数字をしっかり追うフェーズに入っています
以降、上記を前提に論を進めていきます。
*会社のフェーズなどによって経営企画に求められることの幅や深さ・成熟度合は異なると思うのでその点はご留意ください。
組織アイデンティティとは
昨今のスタートアップではカルチャーガイドを作ることは珍しくないと感じます。弊社も御多分に洩れず、というか手前味噌ながらかなりのこだわりを持ってカルチャーの作り込み・社内浸透をし続けています。社外向けのカルチャーガイドは刷新中なので、会社紹介資料から一部を抜粋しますとVision/Missionを起点に、組織のIdentity、Value、Ubieness / U-map(人材要件)を定義しています。
VMVという枠組みは世の中に広く浸透しているところかと思いますし、Ubieでも長らくそのような形で運用してきたのですが、今年改めてValueを見直す活動をしたとともに、その際にIdentityも新しく定義しています。 Identityとは、上図に記載の通り“組織の軸となる意思決定のコンセプト“であり、Vision / Mission*を実現する上で非常に重要なものです。 UbieではIdentityを"Giant Leap"と定義しています。このあたりの話の詳細は他の誰かが書いてくれることを期待してここでは長くなるので触れませんが、Ubieの掲げる大きな未来を実現する上で非連続な成長が何度も必要であるという前提のもと、これまでValueとして定めていたものをある種昇格させて改めてIdentityとして据えたものになります。
*UbieのVisionは”Hello, healthy world”(≒世界中の人が健康を当たり前のように享受できる世界)、Missionは”テクノロジーで人々を適切な医療に案内する”
前置きが長くなりましたが、このIdentityが定められたことで経営企画としての仕事が考えやすくなった実感があります。
経営企画が特に関心を持つべき範囲とアイデンティティの適用
さて、組織Identityが経営企画としての仕事にどう有用かという話の前に、一度本noteで扱う経営企画の関心領域に触れておきます。
”the 経営企画の仕事”として事業計画の策定や予実管理が挙げられますが、少し幅を広げて経営企画の主な関心範囲を示すとおおよそ以下の図のようになるかと思います。
事業計画自体は企業の成長戦略たるエクイティストーリーに基づくものであるべきですし、予実管理は単に進捗を管理するだけでなく確実な達成を目指して会議体など諸々の仕組みを整えることも必要です。
状況に応じてより細かい実務レベルの課題解決に取り組むことも多くありますし、この範囲のこと全てを一存で決められる訳ではない(他に管掌の役職がある)ですが、このnoteにおいてはこの範囲を経営企画の主な関心領域として定めます。
当たり前ですがこれらは全て関連しており、いかに齟齬なく一貫させてそれぞれを機能させられるかが経営企画としての腕の見せ所です。
組織アイデンティティを拠り所とする
ここからが本題ですが、経営企画の関心領域と、組織を構成する要素とを紐づけて捉えて考えると、ものごとの優先順位が決まりやすく、出力を最大化しやすいと思っています。
具体的には以下の図のような形です。
例えば、事業計画や各種の目標を策定する際に、なぜこのタイミングでこの項目でこの水準を目指すのか、を決定・説明することに難しさがあることも少なくないと思います。他にもやり方があったり、もっと時間をかけたりとか選択肢がある中でなぜこうなっているのかと。
Vision / Missionだけではそこに向かうまでの成長の道筋(Ubie社内ではこれを“登り方“と表現します)が無数にも考えられるように思われますが、Vision / Missionは方向性として参照しつつ、具体的な登り方はIdentityを念頭に置いて戦略を選択を考えるとシンプルになります。
もちろんVision / Mission実現するためのものとしてIdentityは導き出され定義されているのですが、言語化しておくと物事がより単純に考えやすく、また伝わりやすいのではないかということです。
Identityにより事業計画や目標(UbieではKGI / OKR)設定の根拠=どのようにして意思決定をしたかが説明しやすくなることで、社内での理解・浸透にも良い効果をもたらせるはずです。
Identityを軸に個別要素を考えてみる
いくつか、Ubieの例をとって具体的に説明したいと思います。
エクイティストーリー
事業計画について、その数字の作り方や求める成長スピードがIdentityから説明できるのと同様に、Equity Storyも当然ながらIdentityに紐づけて説明することが出来ます。方向性としてVision / Missionの実現に向かっていくのは当たり前として、その登り方にはIdentity = 意思決定の軸となるコンセプトが多分に反映されているからです。
例えば、Ubieの例だと
Vision / Missionの実現は現状からはかなり遠いところにある。そのため非連続な成長(Giant Leap = UbieのIdentity)をいくつもすることが前提になる。xxの領域で非連続な成長をするためにはxxという状態になっていることが求められて、それには一定の投資が必要であるためFinance戦略としてはxx、それを実行していくためには・・・、
といった形です。
KGI&OKR(短期目標)
Ubieでは現在、Q単位の全社・各事業の目標としてKGIとOKRの2つを定める運用としています。
PL数値とそれに直接的につながるものを追うのがKGI、少し先(翌Q以降の)事業計画の蓋然性を高めるもの、あるいはさらに上振れさせるものをOKRとして扱っています。
Ubieではしばらく全社の目標としてはOKRのみを運用して来ました*が、フェーズの移り変わりとともにKGIも導入し、現在は併用する運営をしています。
短期ではPLを達成し続けることを目指しつつ、中長期に対して成長の種を蒔くことにもバランスよくリソースを張りアセットを積むことが狙いです。
この辺りはIdentityたるGiant Leapを体現していくためにR&D活動に一定のリソースを割き続けるという意思決定を大事にしているところで、非連続な成長をそこまで大事にしないのであればOKRへの注力はより弱める、あるいは目標としては採用しないという選択肢もあると思います。
もちろん、OKRの中身もGiant Leapにいかにつながるか、を意識して設定されます。
*なお、事業単位ではKGIを目標として扱う事業はこれまでもありました
組織・会議体・制度設計
予実管理の仕組みの話として会議体設計についてはよく話題にあがると思いますが、組織や制度設計にも関心を持ち、Identityに沿った状態になっているか、を担保し続けることも非常に重要です。
組織や制度(評価・報酬制度など)はどうしても変更するコストが大きく感じてしまったり、また実際に会社の成長に伴い大きくなるものですが(IPO準備などをしていると尚更)、事業の状況が変わりやすいスタートアップにおいては、本当に今の形のままで目指す世界を実現できるのかを問い、必要に応じて時にはゼロベースで組織や制度を見直すことも大事だと感じます。(なお、変更するに際しては本当にそれでうまくいくのか、小さく検証するなどの進め方も気を配る必要があります)
Ubieでは、例えば人材獲得力の強化などを目的としたストックオプション制度のアップデートもその一つと言えますし、直近でも事業が多面的になる中で中長期に向けた開発と足元の事業推進を両立可能な組織体制への変更を行っているところです。
組織や制度の話になると経営企画の管掌領域から外れることも多そうですし、実際に上記の例も経企主導のものではありませんが、組織として大きな目的達成の一つのhowとして、関心を払いながら重要なタイミングでは各所と連携して見直していく動きが取れるとベストと思います。
改めて大事だと思うこと
日々様々な意思決定あるいは経営の意思決定をサポートする場面があり、その結果で多くの人が影響を受けるのが経営企画の仕事であるが故に、意思決定の軸がVision / Missionに則り定義・言語化されていることはやはり大事だなと長々と書いてみて改めて感じます。
実際にその軸に沿って意思決定する上では、それまで積み重ねてきたことの慣性に捉われない柔軟さと、とはいえ変化を推進する上での胆力なども求められるとは思いますが、考え方の一つとしてこちらの記事が参考になれば幸いです。
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