すべての教育実践は賞味期限切れである

しょう しょう

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マジカル・ミステリー・ツアー 富士見

 見出しの写真は岡谷蚕糸博物館に掲示されていた生糸の生産量と輸出量の推移グラフ。   川崎市の公立小学校の5年生は1989年から富士見町にある川崎市少年自然の家に2泊3日でいわゆる自然教室に行っている。  本稿は5年の社会科学習で富士見町を取り上げた実践と、川崎在住の映画プロデューサーであるの小倉美恵子(株式会社ささらプロダクション)著「諏訪式。」亜紀書房2020年、および藤森照信・山崎壮一・立川直樹「諏訪マジカルヒストリーツアー 記憶の中の諏訪産業変遷小史」長野日報社200

    • 渡せなかった手紙と渡さなかった手紙のあいだ ~知ることと在ることの分離~

      渡せなかった手紙×渡さなかった手紙 映画「秒速5センチメートル」には、2つの手紙が描かれる。 3月のとある日、種子島に引っ越すことが決まった貴樹は、1年前に引っ越した明里の住む岩舟駅へ向かう。しかし、その日はあいにくの雪もよう。 7時に会う約束が、10時を過ぎてもまだ電車の中。 最後の乗り換え駅である小山駅には着くが、次の電車はなかなか来ない。 ホームで待つ貴樹は、缶コーヒーを飲もうとポケットから財布を出そうとしたとき、突風が吹き、ポケットに一緒に入れておいた明里への手紙が

      • リテラシーが、分かつもの・つなぐもの ~「知ること」と「在ること」~ への備忘録

          リテラシーとは Literacy とは「文字の読み書き能力」「識字能力」あるいは単に「識字」のことである。 近代の初等学校は、大衆にリテラシーを習得させることを目的のひとつにしている(と思われている)。 リテラシーは、「知ること」(対象知識の習得)と「在ること」(自己の存在)を切り離すことによって、知の体系の構築を容易にしたといえる。科学技術の発展の基礎には、リテラシーの獲得がある。   書くこと 手習いの伝統を引き継ぐ19世紀日本の小学校は、書くこと=作文といえば、範例

        • どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるか。桜前線上映「秒速5センチメートル」

          どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるか。  桜前線上映「秒速5センチメートル」    何回か見てるのに今日初めて「速さ」がテーマであることに気づいたかもしれない。題名に「秒速」がついているから当たり前といえば当たり前だが… 今回のリバイバル上映は、通勤途中の大森キネカでの上映最終日だった。   第1話「桜花抄」 豪徳寺駅(小田急)から岩舟駅(両毛線)にたどりつくまでいくつかの電車を乗り継ぐ。 降雪のため電車はどんどん遅れ、電車はのろのろ運転になり、ついに長い時間停車。

          今は漕ぎ出でな

                      にきた津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな                                                                                                            額田王   60年代の高度成長期の成功物語を背景に、それ以降も日本の学校教育はいわゆる<学力信仰>にあぐらをかき、護送船団方式(みんなで渡れば怖くない)でやりすごしてきた。Ja

          「教育分権とそのゆくえ」

          この文の題名は当初、「教育の地方分権とそのゆくえ」とするつもりでしたが、単に「教育分権」としました。旧教育基本法第12条「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」、現行教育基本法16条「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」。これを端的に「教育分権」と表すことに

          漱石の近代 近代の漱石

          慶應3年に生まれた夏目漱石の年齢は、明治〇年と丁度一致します。明治という時代とともに、漱石は年齢を重ね、歩んだのです。   漱石の処女作「吾輩は猫である」は1905(明治37)年に発表、遺作「明暗」の執筆途中でこの世を去ったのは1916(大正5)年(49歳)でした。作家としての活動は、たったの10年ちょっと。 明治の世になり言文一致運動が進み、いろいろな文体が試されました。その中で、漱石の文体がひとつの範となり、今に至る文芸表現へと連なります。漱石の二作目「坊ちゃん」は、リズ

          5年国語「たずねびと」の学びから

          5年国語 「たずねびと」の学びから                              すべきれ  5年生2クラスをお借りして、2020年から光村図書5年国語教科書に掲載されている朽木祥作「たずねびと」を7時間かけて読んでいった。  作者の朽木祥との出会いは、2014年~2019年まで3年国語に掲載されていた「もうすぐ雨に」で、国際教室にやってくる児童用にリライト教材文を作成したのがきっかけで、その後、原爆や被爆を題材にした小説をいくつか読んだことである。「もうすぐ雨に

          5年国語「たずねびと」の学びから