後光の秘密

私は、後光が見える。 仏像や聖人だけでなく、普通の人にも。 でも、誰にでも見えるわけではない。 私だけが持つ特別な能力だと思っていた。

後光は、人の心の状態を表す。 善良で優しい人は、明るく美しい後光を放つ。 悪意や妬みに満ちた人は、暗く醜い後光を放つ。 私は、後光で人の性格や感情を読み取ることができた。

私は、この能力を使って人生を楽しんでいた。 好きな人や友達は、後光の美しい人を選んだ。 嫌いな人や敵は、後光の醜い人を避けた。 後光で判断すると、間違いがなかった。

しかし、ある日、私は衝撃的な事実を知った。 私が見ている後光は、本当の後光ではなかったのだ。 それは、私自身の心の映し出しだったのだ。

私は、自分が好きな人には美しい後光を見せていた。 自分が嫌いな人には醜い後光を見せていた。 自分の都合で人を判断していたのだ。

それを教えてくれたのは、ある老人だった。 彼は、私と同じ能力を持っていた。 彼は言った。

「後光は、自分の心に正直になれば見えるようになる。 でも、それは自分の心の反映にすぎない。 本当の人間を見るには、後光ではなく目と耳と心で見聞き感じることだ」

彼は言って笑った。

「私も若いころは君と同じだったよ。 後光で人を判断してばかりいた。 でも、それでは本当の幸せは得られなかった。 後光に惑わされずに、自分の目で見てごらん」

私は彼の言葉に納得した。 私はこれまで自分勝手に生きてきたことに気づいた。 私はこれから変わろうと思った。

私は彼に感謝した。

「ありがとう。 あなたは本当に素晴らしい人ですね」

彼は首を振った。

「そんなことないよ。 私もまだまだ修行中だから」

彼はそう言って立ち去った。

私は彼の背中を見送った。

彼の背中から差す後光が、私にはとても美しく見えた。