うつのみや寄席〜一之輔、喬太郎、三三、市馬4人会

ずいぶん日が空いてしまいましたが、先月末に私の地元栃木県宇都宮市の文化会館大ホールの落語会へ行ってきたことを書こうと思います。


宇都宮に来るのは高校卒業以来10年ぶりぐらいで、駅周辺もホールへバスで向かうのも懐かしかったです。

大ホールは高校時代に校内の合唱コンクールや文化祭での発表の舞台でした。そうした思い出のある場所で、落語を聴けるとあって楽しみでした。

そしてタイトルにもある通り、市馬師匠を筆頭に落語界を代表する師匠方の4人会とあっては俄然期待も高まります。


ホールは3階席まであるのですが、チケット販売後に緊急事態宣言が出たため、客席は1階席前方に固まるような形になっていました。本来なら2000人ほどが収容でき、今回の顔付なら十分満席にできるような人気の師匠方だけにちょっと残念です。
(一之輔師匠は弁当箱のおかずが隅へ偏ったみたいと表現してましたが...苦笑)


本日の演目は以下の通り。(敬称略)

・柳亭市松(開口一番) 「二人癖」
ホール落語、しかもこの顔ぶれの中でやるのはかなりプレッシャーがあったのではないかと思いますが、堂々とした高座で結構笑いも起きていました。(雰囲気的に今日のお客さんは総じて温かかったです。)

春風亭一之輔 「真田小僧」

先に述べた客席の様子を皮肉った一言で一気に客席が笑いに包まれました。小学校の遠足のお弁当の話から思わぬ方向に展開したのでお客さんは大ウケでした。自分のお子さんが通う小学校で落語をした話も面白かったです。

真田小僧では、小生意気な金坊と父親のやりとりに爆笑しました。初天神などのように子どもと父親が出てくる噺を一之輔師匠がやると師匠の家庭生活も透けてみえるようで可笑しくなります。マクラと噺が実に噛み合った高座でした。

柳家喬太郎 「夜の慣用句」

今日もすごくハッスルしてました笑。今日の自分は古典落語の役割ではないと割り切っていたからでしょうか、すごく自由な感じでした。
餃子の店が多すぎることをちょっとイジったり、客席から拍手が起こるたびに「宇都宮いいなぁ」と言って客席の心を掴んでいました。

マクラでは時事ネタを入れた時代劇の空想に始まり、電車内で起こった出来事への愚痴をただただ発散したりといい意味でやりたい放題でした笑。

夜の慣用句は喬太郎師匠の代表的な新作落語。
課長と部下の飲み会での場面は、「こういう上司がいたら嫌だな」と思いつつも、喬太郎師匠の課長の演じ方が様になりすぎて思わず笑ってしまいました。

時折り「やっぱり古典にしておけば良かったかな」、「もう宇都宮に呼ばれないだろうな」と落語の世界と現実が転換する一言を入れたりして客席の笑いを誘います。落語ファンでない人もぜひ聴いてほしい師匠の一人だと高座を見るたびに思います。


柳家三三 「転宅」

高座を見るのは、昨年11月の小三治一門会以来でした。小三治師匠譲りの古典落語をしっかり演じるイメージがあり、今回も聴けて嬉しかったです。また、マクラでは真面目に話しているように見えて随所にくすぐりを入れる技量がすごいです。

転宅は間抜けな泥棒の噺。演目の名前は知っていますが、実は今まで寄席などで聴いたことがありませんでした。

家に忍び込んだ泥棒が、お酒や料理を盗み食いする場面があるのですが、三三師匠の所作のリアリティに思わずお腹が空いて来ます。

奥さんが言葉巧みに泥棒を欺き、一方それに乗せられて何も取らずに出て行ってしまう泥棒のやりとりが面白かったです。三三師匠は、登場人物の心理描写を描くのがすごく巧みだと思いました。


柳亭市馬 「竹の水仙」

初代横綱が宇都宮出身であることをマクラで話していました。地元のことに少しでも触れてもらえると嬉しいものですね。また、行司による力士の呼び上げや地方巡業恒例?の相撲甚句を披露していて、ホール全体に響き渡る市馬師匠の美声に聞き惚れました。

竹の水仙は初めて聴きました。名工の左甚五郎を題材にした噺で、落語でよく出てくる人物かと思います。(栃木は日光東照宮の眠り猫などの彫刻が有名なのでそれ繋がりで選んだのかなとも思いました)

市馬師匠の落語は、(私が言うのはおこがましいですが)さすがは古典落語の本流と呼ばれる柳派の王道を行っていると感じます。今はなかなか寄席に行きにくいですが、また生で聴きたいです。

本当に豪華な顔ぶれで帰りの電車でも興奮冷めやらぬという感じでした。

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