新宿末廣亭中席〜柳家喬太郎主任興行

7/16に喬太郎師匠の主任興行に行ってきました。雨が降ったり止んだりで天気の悪い中でしたが、一階席はほぼ埋まっていました。

喬太郎師匠は古典落語も新作落語もできるオールラウンダー。自分はどちらかと言うと古典落語が好きなのですが、「残酷なまんじゅうこわい」など古典をアレンジした師匠の作品は、設定の独創性、そこに登場する人物のキャラクターがひとくせも二癖もあっておもしろいです。

膝を悪くされているらしく、この日は前に釈台を置いた珍しい高座姿でした。登場するやいなや、「どうも神田伯山です。」と切り出したのには笑いました。そして、最前列のパイプ椅子席に座っているお子さんとそのお母さんに話しかけると、
「何年生?」「3年生です」「小学校だよね」「はい。」「そりゃそうだよな、大学生なわけないよな」
「お母さんですか」「はい」「若いですねー。いやー、やる気出てきたぞ。お母さんごめんなさい、今日はこれからいかがわしい噺をやります」
このやりとりには会場も爆笑でした。

マクラでは、自分の立ち位置がわからなくなってきていると切り出し、今年59才の自分はおじさんなのか、おじいさんなのかという話から、ATMで警察に呼び止められた小噺を交えつつ、弟弟子の喬之助師匠が、「兄さんは年取るとおばさんになってくね」と言われたというオチへの持って行き方が最高でした。そのあと、演目に入るかと思いきや、急に思いついたように、笑点で、円楽師匠の助っ人で三平師匠を出したらどうか、と言い出したのにも笑いました。釈台を置くとめちゃくちゃ楽でマクラが長くなってしまうという冒頭の話が見事にフリになっていました。

演目は、カマ手本忠臣蔵。忠臣蔵の史実は、実際にはこうだったのではないかという妄想を繰り広げる噺。
冒頭は、忠臣蔵を落語家キャストでやるとしたらという話からはじめます。特に、浅野内匠頭に切り付けられる吉良上野介の案として、談志師匠を挙げ、手をあごに添える仕草、声色を変えてものまねをした後、「な、切り付けたくなるだろ?」の一言に爆笑しました。噺の構成としては、忠臣蔵を浅野内匠頭と吉良上野介のBLとして描くという発想が大胆です。浅野を乙女チックに演じる喬太郎師匠がコミカルで面白かったです。

喬太郎師匠以外に特に印象に残ったのは、以下のお二方です。

三遊亭天どん師匠

現代新作落語の先駆者的存在だった故円丈師匠のお弟子さん。春風亭百栄師匠の代演でした。
演目は新作落語「ハーブをやっているだろ」。池袋演芸場で高座をつとめた落語家が、警察に職務質問で麻薬をやっている疑いをかけられて、押し問答になるという設定の落語。初めて聞きましたが、すごく面白かったです。警察から得意の演目を聞かれた噺の中の落語家が、化け物使い、宮戸川、酢豆腐、家見舞いなど、天どん師匠の前の出番で出た演目について説明するものの、全部パワハラだと一蹴される下りで爆笑してしまいました。クイツキの出番にふさわしく客席も盛り上がっていました。

柳家小ゑん師匠 

新作派の師匠です。天体展望、カメラ、電気工作、鉄道など多趣味なことでも知られていて、今回高座にかけていた「鉄の男〜序」は、それを活かした新作落語。鉄道オタクの父親が子供を鉄道好きにしようと画策するのですが、それを見た母親がうんざりして口喧嘩になります。趣味や価値観の合わない夫婦のやり取りが、おもしろいです。また、電車のパンタグラフが最近はシングルアームになっているという説明をする箇所で、片手を上げてそれを表現する小ゑん師匠の姿もたまらなく好きです。マクラで定番として出てくる「電気屋のせがれですから」「昔の秋葉原はハンダ付ができないと改札を通れなかった」などのフレーズは何度聞いても笑ってしまいます。

喬太郎師匠の主任興行は、毎回何が飛び出すんだろうというワクワク感がたまりません。この日もたいへん楽しい一日でした。

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