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『圭介』  〜1997年 顔が全然タイプじゃない男〜

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真文、24歳。 4番目に付き合った人は、髪が薄くて顔が全然タイプじゃないけど頭が良くて会話するのが楽しい人でした。
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#小説

『圭介』  〜1997年 顔が全然タイプじゃない男〜 vol.1 (ゲイ小説)

『モテ』は自信から生まれるのかもしれない。 ロンドンでうっかりミステリアス・アジアン・ビューティ枠(目が細いだけ)にすべりこんで、それなりにモテ人生を満喫していたら、日本に帰国後もそこそこモテるようになっていた。 10代のころは、あんなにパッとしなかったのに。 日本で『中田英寿』が流行っていたのも大きかった。 似てる、ともてはやされることもあった。 相手の部屋に行ったらサッカーのユニフォームが用意されていたこともあった。 だけど、どんなにモテても、僕の体には10代のこ

『圭介』  〜1997年 顔が全然タイプじゃない男〜 vol.2 (ゲイ小説)

見た目はまったくタイプではなかった。 だけど、圭介という人は会話をしていてすごく楽しい人だった。 なにより頭の回転が速い。 頭の回転の速さなら僕も自信があったけど、圭介の方が段違いに速い。 しかも、少しでも言葉を濁したり取り繕ったりすると「本当はそうじゃなくて、こう思っているのでしょう?」と見抜かれる。 圭介は本当に頭が良かった。 さらに圭介の視点は、いつも圭介だけの視点だった。 世界中の誰にも見えていなくても、圭介だけには見えていることがこの世にはある、と確信できるよう

『圭介』  〜1997年 顔が全然タイプじゃない男〜 vol.3 (ゲイ小説)

顔が全然タイプでない人とセックスをするなんて思ってもいなかったから、そういう話を圭介としたことがなかった。 だから、ホテルに入り、ベッドの上で両手を広げた圭介の胸の中に飛び込んで初めて、僕たちは確認作業を行なった。 「ネコ…だったよね?」 「そうだよ。圭介さんはタチ…だよね?」 「うん」 「良かった。2人ともネコじゃなくて」 「お尻はできる?」 「できるけど準備してないからシャワー浴びなくちゃ。ローションある?」 「大丈夫」 初めてのキスをした。 絶対臭そうと思っていた