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ROBOTICS;NOTES ELITE(Switch版)の感想

先日のセールで半額だったので買っておいたのをプレイ。ちなみにアニメ版は過去観ており、大まかなストーリーは既知。

以下の感想は内容に関する多少のネタバレを含みますので、その旨ご了承のほどを。

まず全体的な感想を大まかに言うと「ストーリー自体は楽しめたが細かい点に残念な箇所がいくつか」といったところ。

本作のストーリーは、巨大ロボを作って万博出展を目指す種子島の「ロボ部」の高校生が、世界規模の陰謀に巻き込まれ、それと戦うというもの。
テキストはボリュームたっぷりで、読み応えは十分。ストーリー全体としては十分楽しませてくれた。
ラストが「みんなの力で大勝利!」ってのも高校生が主人公であるこのゲームのカラーと合っていたと思う。

また本作は「STEINS;GATE」(以下シュタゲ)と世界観を同じくする科学ADVのシリーズ作品であり、シュタゲからは成長し大人になった天王寺綯や部分的ではあるがスーパーハッカー「DaSH」などの人物も登場。その他ファンならニンマリする設定、演出多々。

SNS「ツイぽ」やARアプリ「居ル夫」などのガジェットも物語の世界観をうまく形作っていたと思う。

ただ、何点か気になる部分も。

○序盤から中盤にかけての展開が若干ダレ気味
 序盤~中盤(分岐に至るまで)の展開が若干ダレ気味。後半第9章以降はテンポよくストーリーが進んで読ませるだけに余計に前半が冗長に感じる。
 科学ADVシリーズの前作であるシュタゲも序盤はやや冗長な展開が続くが、こちらは物語中盤で世界がひっくり返り、そこからは息をもつかせない展開になるため、序盤の冗長さも「日常→非日常」の演出の一環だったのだと思えるけど、今作は主人公が非日常に足を踏み入れながらもストーリーは比較的終盤まで淡々と進む印象であり、実際に世界が大きく変動するのは本当にラスト近くのシーンであるため、全体的にやや冗長な印象はぬぐえなかった。

○主人公のカイトに魅力を感じられなかった
 主人公のカイトはロボ部の活動に積極的でないし、性格がひねてるし、言動も醒めてるしで、正直言って主人公としてあまり魅力のあるキャラではないと思える。アニメ版では物語を第三者的に観ていればよかったのであまり気にならなかったが、ゲームでは大部分のテキストがカイトの視点で書かれており、プレイヤーは擬似的にカイトの立場となりテキストを読まされるのだが、これに感情移入できないのは若干つらい。
 他のロボ部の登場人物、ロボを巡り父親との関係に葛藤するスバル、幼少時の事故のトラウマからロボが好きになれないジュン、母の失踪の謎を追い種子島へやってくるフラウ、といった脇を固めるキャラはそれなりに魅力的で、各キャラごとのエピソードも適度に語られ、これらのキャラにはストーリーを追うごとに愛着が沸いて来るようになっていた。
 また、もう一人の主人公であるあき穂も、姉に追いつきたいという思いやロボ部の挫折や周囲の人とのふれあいの中で、不器用で直情的ではあるが、部長としての成長を見せてくれた。
 しかしカイトは、第5章の綯とのエピソードで自分のミサ姉への気持ちに区切りを付けて一皮向けるのかと思いきや、結局終盤に至るまで性格的に成長があったようには見えなかった(あき穂との関係は若干進展するが、それが唯一の成長か)。
 終盤の、ロボ部が一体となって最終バトルに挑むシーンも主人公らしい覚醒っぷりを見せるでもなく「俺は格闘ゲーマーだから挑戦するんだ」と言って、皆の団結から一人だけ浮いているようにも見えたのだが……
 作者の意図としては「クールを装って表には出さないけど心の底ではロボ部のことを思っているんだぜ」ということなのかもしれない。あるいはやっぱりロボ部にはさほど興味がなくて、大切なのはゲームとあき穂だけなのかもしれない。ただ、どちらにしてももう少しカイト自身のエピソードを積み上げて、カイトの人となりを浮き彫りにするような描写、演出があってもよかったのではないか。長くプレイしながら最後までカイトというキャラクターの「顔」があまり見えてこなかった印象が強い。 尤もこれは単に自分がカイトというキャラのことを好きになれなかったというところから来る部分も大きいので、仮にこれ以上カイトの人となりが緻密に描写されたとしても、評価は変わらないのかもしれないが。

○ストーリー「分岐」の必要性に疑問
 本作は物語中盤で一定条件によって各キャラクターのエピソードを掘り下げるルートへと分岐する。
 しかしこの「分岐」は選択の結果ストーリーが枝分かれして異なる展開になる、というものではなく、時系列で並べたらつながっている1本のストーリーを章ごとにぶつ切りにし、どの章にジャンプするかというものであり、さらにすべての分岐先の章を読まないとその先のメインエピソードは解禁されないので、結局、分岐などという手続きを踏まずとも順番に読ませればよかっただけなのではないかという疑問が沸く。 
 しかもその分岐の条件が「ついポ」への各キャラクターの特定の書き込みに特定の返信(基本的には好感度が上がるようなもの)をする、というもので、内容的に「この選択をしたからこの展開になった」という自分の選択とその結果に関する納得感が全く感じられないものであった。
 シュタゲでは「フォーントリガー」というシナリオ分岐のシステムがあり、そこでの選択の結果はときにはメインストーリーとは全く別の結末を迎えるものもあり、一本道の物語を観るアニメでは味わえない「ゲーム」ならではの趣向であり、これこそがコンピュータゲームとして物語を楽しむ醍醐味の一つなのだと、自分は思っている(だからといって一本道のノベルゲームを否定するものではない。念のため)。
 結局のところこの分岐システムに関する不満は、分岐によって本編とは異なる話が楽しめるのかと一瞬期待したが結局一本道だったのが残念、ということに尽きる。それならば最初から思い切って一本道のデジタルノベルに徹してくれてもよかったのに、と思えてならない。

とまあ、不満点もいくつかあれども、シリーズ前作のシュタゲがあまりに良すぎて自分の中でハードルを上げてしまっていたが故に評価が辛くなってしまった部分も否めず。
ロボノという作品自体は面白くプレイさせてもらいましたし、自分の評価としては良作だと言えます!
少なくとも、この後すぐに続編の「ROBOTICS;NOTES DaSH」をプレイしようと思うくらいには。

さあ、スーパーハッカーの登場に期待!(そっちかよ)

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