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僕と山根とプロテイン

山根視来が代表に選ばれた。他チームなのに…死ぬほど嬉しかった。今でこそ国内で右に出るものはいないほどのサイドバックだが彼はプロになることすら出来なかったかもしれないし1つでも間違えたらJ3でプレーすら出来ていなかったかもしれない。

その話は山根と出会った2015年まで遡る。

母と山根視来

これは山根がプロになる前。湘南ベルマーレと出会った時の話。天皇杯での対戦だった。桐蔭横浜の7番を背負っていた山根を母は1人スタンドから見ていた。自分はというとボールボーイとして湘南のベンチ脇にいてアリソンのタトゥーや大槻のガタイの良さに目を奪われてしまい対して試合に集中は出来なかった。        だからこそ母親の言葉は鮮明に覚えている。

「7番と10番はプロになるかもね。」

まさか。家族の影響で最近サッカーを見始めた母が何を言い出すかと思えばプロ入りの予想だった。ありえないと僕はバカにしたがその年の12月に山根視来の湘南加入の知らせが届いたのだ。母親が1度見てプロ入りを当てた選手ということもありどこか山根には注目を置いていた

ちなみに当時の桐蔭横浜の10番は石川大地。     現在ガイナーレ鳥取で活躍中。さらにこの試合には  現松本山雅所属で元ベルマーレの鈴木国友も出場。

苦難。抜けないドリブラー。

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今思えば代表選手のユニホームを何も知らない状態で買った母親の目は凄いなと思う。運命的な出会いをしてそこから桐蔭横浜の試合も見に行った母。その年に遠藤航が移籍したことにより山根視来のユニホームを買いファンに丁寧に対応をする山根を応援しようと決めた。が、山根は新加入会見で松葉杖をついた姿で登場し彼の今後のサッカー人生は楽なものではないと暗示していた。

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2016年山根の出場数は4試合。左ウィングバックとして出場した神戸戦は今でも覚えたいる。左で持っても抜けないしスピードもないから裏抜けもできない。毎回山根のところで止まってしまう。やはり天皇杯で活躍しただけのラッキーボーイだったのか、山根はこのまま抜けないドリブラーとしてフェードアウトしてしまうのか。 そんな考えが当時のベルサポにはよぎっていた。   

諦めなければ誰かは見ている

もうベルマーレの山根は見れないと思っていた。それほどまでにプロとの差はあったし活躍する姿は想像できなかった。だがその思いは2017年の開幕戦の水戸戦で裏切られることになる。キーパー秋元、CBは3バックで左からルーキーの杉岡、バイア、そしてなんと山根が入ったのだ。前のポジションをやっていた山根がなんとCBでスタメン起用。この起用に対して当時の曺貴裁監督はこんな言葉を山根にかけている。

「お前は前をやっても無理だから、今年はここをやってみろ。」

「お前、自分ではドリブルが上手いと思っているかもしれないけど、オレから見れば並みだよ。」

この対応が本当に良かったかは分からない。なんだよと思って辞めてしまう選手もいるかもしれない。でも山根には聞く耳があった、そして曺貴裁には見る目があった。一見すれば酷い言葉に聞こえるがサポーターですら山根には諦めていたのだ。それを曺貴裁はまだまだ成長できると見ていたんだと思う。山根はCBで出た2017年チームで1番ヘタクソだった。でも頑張ってた。誰よりも戦うし誰よりも走った。必死に食らいついたからこそ 曺貴裁は山根を使い続けたし僕らも応援していた。

曺貴裁の当時の山根のコンバートの成功の確率は2割と考えていた。ちなみに僕は0だと思ってました笑

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1番いて欲しい時にいてくれる

僕は山根のどんなプレーよりもガッツポーズが好きだ。自分が点を取った時、アシストした時はもちろん。味方のゴールや守備でのクリア、キーパーのセーブにまでガッツポーズをする。多分山根はプロになれるはずじゃなかったから僕たちと1番気持ちが近いんだと思う。   サッカーはあくまでも仕事だ。でも山根からはそれを感じない。必死に戦って勝てば嬉しいし負ければ悔しい。点を取ったりスーパーセーブをすれば腕が千切れるほどのガッツポーズをするしチームのために声を出す。  そんな姿はどこかサポーターに似ている。

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記憶に1番残っているのは2つのゴール。2018年鹿島戦だ。アディショナルタイムラストプレーで最後尾の山根はこぼれ球を拾うと裏街道で一気に交わしゴールを叩き込んだ。抜けないドリブラーだった山根がドリブルからJリーグ初ゴールを叩き込んだ。          もう1つのゴールは記憶に新しいと思う。浦和レッズ戦。2点を先行された前半杉岡のゴールが明らかにラインを割っているにも関わらずゴールが認められなかった。湘南は魂の後半戦。2ゴールを追いつきアディショナルタイムラストプレー。最終ラインの山根は何故か 最前線でボールを貰っていた。ドリブル開始。サイドから上がってくる選手には見向きもしない。山根はゴールに向かってひたすら突き進み泥臭くそのボールを叩き込んだ。いて欲しい的にいてくれる、サポーターの気持ちと一体になれるそんな稀有な選手だと思う。

山根の浦和戦のコメント

「判定は自分たちがコントロールできないことなのでしょうがないし、それはサッカーなので、自分たちがしっかり逆転して勝ったら、また大きく成長できる。」

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夢心動力・夢は心のプロテイン

山根のキャッチフレーズとなったこの言葉。山根は早い段階から代表という夢を語っていた。無謀と言われて笑われたかもしれない、でもチャレンジしなくちゃ意味がない。そんなが山根をここまで突き動かした。諦めない気持ちとそれを見ていた人の力で山根はここまで大きくなった。湘南の力では悔しいことに代表には行かせてやれなかったが川崎がその思いを引き継いで山根をさらに成長させてくれた。そして代表に送り出してくれたのだ。これほど嬉しいことはない。山根は苦楽を共にして共に成長して共に戦った大切な仲間だ。それは今後どこに行こうが変わることはない。

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山根の移籍コメント


【山根視来選手 コメント】
湘南ベルマーレに関わる全ての皆さま、来季から川崎フロンターレに移籍することになりました。
大学生の時、天皇杯で対戦したあの日からこのサポーターの応援の中サッカーをしたいと強く思っていました。
無名の僕を拾ってくれ、本当の意味でプロサッカー選手にしてくれたこのクラブには感謝の気持ちしかありません。このクラブで学んだこと全て僕の財産です。
先輩を見て学んで真似して自分のものにしていく。技術だけの話ではないです。湘南スタイルとは、やはり口では簡単に伝わらないんです。背中で見せていかなければならないんです。ひとつの練習でもシュートを決めさせないために体を張る。転んだらすぐ立ち上がる。目の前の相手より走る。ぬるいプレーは許さない。僕も1試合も出場できなかった1年目、先輩の背中を見てこれをやらなければJリーグには出られないんだ、本当に厳しいなと感じていました。
ちょっとやったら真似できるものではないですし、苦手なことにもチャレンジしなければならないです。
みんなその姿勢でサッカーしているから、だからこのチームはみんなのために頑張れるチームなんだと思います。自分がミスをしたらみんなが全力で走って助けてくれる。だから自分もみんなを助けるために全力で走れる。それが湘南ベルマーレです。
僕も先輩たちのように後輩に伝えられていたかはわかりません。でもいつも全力でやりきりました。そこだけは自分の誇れるところです。サポーターの皆さまにはいつもガッカリさせてしまうばかりでした。今日は本当に情けない試合をしたなと思う時でも、いつも『前を向いてやろう。もうやるしかないんだから』とポジティブな言葉をかけてくださいました。
今シーズンあのサポートがなければ残留することはできなかったと本当に思います。湘南のサポーターは最高だと改めて思いました。
ある方から、『どこにいてもいい。あなたのドリブルは特別だった』という言葉をいただきました。
めちゃくちゃ嬉しかったです。その姿、絶対に無くしません!初ゴールを決めた鹿島戦、大逆転をした浦和戦、ルヴァンカップ決勝のスタンド。しっかり目に焼き付いています。全て最高の想い出です!プロになって最初のクラブがベルマーレで本当によかったです。ベルマーレ以外ではもうサッカーをやめていたかもしれません。それくらいベルマーレに成長させてもらいました。
話がまとまっていないし、まだまだ書きたいことはたくさんありますが、もっと長くなりそうなのでこれくらいにしておきます。
4年間本当にありがとうございました。僕はこのクラブが大好きです!!

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代表のピッチでも山根らしく

最後に湘南に残したコメント。なげぇよ笑。でもそんなコメントに山根の人柄が現れている。プレーしてる責任と感謝を忘れず戦える選手。サポーターと共に戦える選手。代表がゴールじゃない。夢は心のプロテイン。夢を持てばきっとこの先だって活躍できる。

ミスも多かったし失敗も沢山したけどどこか憎めなかった。次の週には修正してて一生懸命に戦ってたから。 どんな時も突き進め。山根視来らしく。       ずっと応援してるぞ。

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