川崎フロンターレ戦レビュー その足は届いたか
魂の90分間。首位だとか関係ない。ただ目の前のボールに執着して勝つことだけを考えた試合。お互いがバチバチにぶつかり合うその姿は観るものを魅了し心を熱くさせた。
これがJリーグだと胸を張って出せる試合だと思う。 今まで見てきた試合の中で最もレベルが高く面白い試合だった。
そんな緑と青の勇者たちの90分間を振り返る。
川崎フロンターレ予想スタメンとスタメン
スタメンはターンオーバーするという予想でしたがかなりいい線をいったのではないでしょうか。前線の3枚を全員変えてきましたね。ですがターンオーバーと言っても普段ベンチの選手は他のチームならばスタメンレベル。全く同じサッカーをしてくるので注意をしなくてはいけません。彼らの積み上げと強さを象徴していますね
湘南ベルマーレ予想スタメンとスタメン
おそらくプレスで相手のインサイドハーフを離さないと思ったので聡を予想したらアンカーでの起用でしたね。さらに池田が大抜擢。プレスをかけつつ１つ繋げる選手たち。川崎と殴り合うことができる選手たちです。 攻撃面では畑のスピードを活かしつつウェリントンと 町野に良い形で預けて追い越していくというのが僕たちの形だったと思います。
ハイプレス
プレビューで言った通り。川崎相手に引けばいつかは崩れてしまう。そして川崎は後ろでの繋ぎはそこまで上手くない。だからプレスをかけなければならないんですよ。そして今回のプレスはいつもと違ったプレスの形になりました。
それは左サイド。普段であればサイドバックにはインサイドハーフが出ていきますが今回はウィングバックである高橋諒が出て行きました。これは攻撃的である高橋諒の守備の時間を減らしたり和成の強さを活かして前で奪う算段だったと思います。対人なら負けない和成を起用したのも前で奪うためかもですね。そして相手の起点となる中盤はシミッチにウェリントンが蓋をして脇坂と 田中碧には山田直輝と池田がマンツーマンでマーク。 打開できなくなった川崎は後ろで回す時間と簡単に蹴って失う場面が多く前半は完全に湘南の時間になりました
スピードと対人とカバー能力に優れたバランスの良い右サイドでは完封。長谷川が落ちれば舘は前を向かせず畑がスピードを活かしてカバーに入ります。左は前から行っていたので右はバランスを取っていましたね。引いてもある程度崩れない自信があったのだと思います。手間取っているならば池田が旗手にプレスをかけ牽制。 中盤のシミッチに展開してもらおうとすると湘南の猟犬田中聡の餌食に。中盤はマンマーク、左は前で奪い右はチャレンジ&カバーで前を向かせず裏を取らせない。 起用の意図もプレスも全てがハマりボールを奪うことに成功した湘南。問題はここからです。
相手の即時奪取を交わせ
数々の挑戦者たちが挑み敗れていった彼らの即時奪取。そのスピードはJリーグのレベルを凌駕し我々に考える時間を与えてくれない。しかしどうだろうか？ 僕たちはただ走るだけのチームだろうか？違う。もがき苦しみ手に入れた2020年の1年を自分たちの壁を破るために積み重ねたではないか。相手を剥がしながら攻めることを。カウンターだけではないことを僕たちはもう知っている。我々は成長したんだ。
川崎のスイッチが入る前に湘南の選手が動き出す。後ろの選手が持つとこれだけフリーの選手が。今までのようにクリア気味に前に蹴ってしまっては相手に回収されるだけだ。それを理解して近くの味方に預ける、動く、貰う。相手を剥がすことで川崎の即時奪取を完封。少し余裕ができればウェリントンと町野に当てて前進することもできる。特に池田は上手く中継地点に入って相手をかいくぐりワイドまでの展開に一役買っていた。川崎は前に圧力をかけたことで後ろの人数が足りず徐々に押し込まれることに。ようやく、ようやく川崎の背中が見えた。即時奪取を繋ぎで剥がしプレスで押し込んだ。後は得点だけだ。
僕らのアイデンティティ
怒涛の45分間が終わりハーフタイム。やれる。川崎相手に互角以上の勝負をしている。不安は自信となり確信へと変わる。彼らと張り合うサッカーをしたのならあとは僕たちの特徴、アイデンティティを出すだけだ。
この日何度もプレスをかけ相手を背負い攻撃の起点となっていた町野。FWの縦関係でスクランブルを作りウェリントンと谷口が競り合った裏を狙う。惜しくもゴール前でクオリティをだす力は残っておらず外れてしまったがそれで良い。それはいつもの形ではないか。
身体の強さで何度も相手に競り勝ちプレスでも貢献しているウェリントン。田中聡の縦パスが入ると町野が身体で隠しながら田中聡とワンツー。少しサイドに抜けた ウェリントンがミドル。これも外れてしまったがそれでいい。遅攻から縦パスをつけて味方と入れ替わり追い越しながら崩す我々のサッカーだ。
池田の左足のミドル、和成の大外からのクロス、高橋諒が中に入ってのシュート。どれもあと一歩届かない。 そんな中で均衡を破ったのは畑のスピードだった。 セカンドを回収して池田とサイドを崩す。抜け出した畑のクロスにはウェリントンと和成！これは流れてしまうが大外にいたやーまんが回収。そして中へと侵入していた高橋諒へ。ポジションが目まぐるしく入れ替わりこれでもかというほどセカンドを回収した湘南。ここだ。 決めるならここしかない。高橋諒はドリブルで仕掛けてウェリントンへ。抜群のポストプレーから池田！ 長谷川が魂のブロック。しかしそのボールはゴール前に。高橋諒のシュート！これもソンリョンにブロック。あと少し…あと少しなのに…
ソンリョンが弾き高く上がったボール。そのボールに1番速く反応したのは僕らの10番だった。 山田直輝！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！魂のヘディングシュートを決め湘南が先制！！！！！！全員で押し込んだ。川崎は後半に入ると強度が落ちる。湘南はその強度を落とさず最後まで戦うのがアイデンティティ。だからここだけは絶対に負けられなかった。 何度も特徴を出して、やれることは全てやって、こぼれ球を泥臭く全員でゴールまで繋ぎ、湘南を象徴する男である山田直輝が決めた。無駄じゃなかった。僕たちが今までやってきたのは無駄じゃなかったんだ。
手段を選ばない川崎。耐える湘南。
川崎は失点直後に選手交代。長谷川、遠野、脇坂に変えて三笘、家長、橘田。湘南はもう一度川崎の即時奪取と繋ぎに対応しなければならないことに。大丈夫。組織的に守る5バックでいつも通り対応すればいい。
プレビューでも説明した通り。この線を崩さず対応する。三笘の視界では3人の相手が見えてスペースは縦しかない。縦勝負なら畑は負けないし、ここまで選択肢を消せばどうとでもなる。田中碧が抜け出したら畑がついて行き三笘のマークを舘に渡せばいい。旗手が上がってきたら池田を下げて3人で受け渡しながらサイドに追い込めばいい。押し込まれてはいるが中は割らせない。 相手のスペースをことごとく消して上手く守っている。そして体力の落ちた畑、町野に変わり拓也となおさん。潰し役として最後まで残したかったが聡が怪我により 中村駿と交代。でもこの3人なら大丈夫。上手く試合に入り耐えてくれるはず。交代のタイミングもベスト。 後はこのまま時間経過を待つだけ… 忘れていた。サッカーを決めるのは組織だけではない。圧倒的な個人技は時に試合を覆す。彼らにはまだその個が残っていた。レアンドロダミアンとジェジエウを投入して川崎の反撃が始まった。
あと一歩…
川崎は繋ぎを無視して三笘の裏を狙ったり家長で無理やり収めたりしてきます。ギリギリの対応が続く湘南。 そして中央に入ったレアンドロダミアンにつくのは広教明らかにミスマッチで競り負けるシーンが続きます。 引くことにはなるが仕方ない。湘南は魂のディフェンスで対応。しかしダミアンが谷に競り勝ち失点… いや主審の家本さんはすぐにVARと交信。OFRで谷の手にヘディングをしていたことが判明。今日のジャッジは素晴らしい。この熱い試合を促しかつ冷静にファウルは見極めてくれる。あとは湘南が勝つだけ。
川崎の選手の中で1人だけ強度の落ちていない選手が。 山根視来。前半からこちらのカウンターを潰しスライドの追いつかない絶妙な位置で存在感を発揮していた。 そういえばこの終盤は彼の得意な時間だと僕たちは知っていた。山根が内側に侵入。ヘロヘロのやーまんはなんとか追いつくことで精一杯。中の選手とワンツーでさらに侵入。中村駿は出足が遅れカバーに入れず。この試合で初めて突破された中央。しかしレアンドロダミアンには舘がついてる。相手は後ろ向きだ。絶対に大丈夫…
衝撃のゴール。自分でボールを上げてオーバーヘッドで叩き込んだダミアン。コースは無かったはず。それを自分で作り出し身体能力で押し込んだ。出来ることはやった。あと少しなのに届かないのか…！
最後まで戦う
谷が何かを叫んでいた。広教はすぐに修正の声をかけていた。山田直輝は悔しさをあらわにしていた。ウェリントンと石原直樹はゴールを見ていた。誰も下を向いていないじゃないか。そうだ。まだこの試合は終わっていない。俺が諦めてどうする。再び手を叩き始める。その日の手はもう真っ赤になっていた。ウェリントンは競り合いではジェジエウに弾かれてしまう。ならばと石原直樹が駆け引きのうまさでボールを引き出す。取られればすぐに池田と山田直輝がプレスをかける。大外に展開。 拓也のクロスにウェリントン！これはソンリョンに弾かれる。そのコーナー。グラウンダーのボールを山田直輝が合わせる。これは惜しくも右に外れる。舘のパスが弱くなったところを取られてカウンター。ファウル覚悟の館のタックルも交わされ家長に。しかし和成が魂のディフェンス！コースが限定され谷がしっかりと外に弾く。相手のコーナーを谷が押しつぶされながらクリア。 クロスをジェジエウが合わせるが谷がキャッチ。 まだだ、まだ勝機は…
試合終了。スペクタクルでアグレッシブで愚直に戦った90分間が終わった。ピッチには倒れ込む選手たち。 まるで負けたかのような川崎の選手の表情。鬼木監督の見せた焦り。手応えはありつつも悔しそうな敏さんのコメント。僕は気がつけばこぶしを握っていた。
どんな時も愚直に進んでく
いつまであれば上位相手によく頑張った。と言っていたかもしれない。でも首位とかそんなもの関係なく川崎に、この試合に勝ちたかった。それだけ勝てるチャンスはあったし素晴らしい戦いを見せていた。何ふり構わずダミアンに当ててくるなんて川崎らしくない。そんなとこまで追い込めた。でも個にやられた。 悔しい。僕たちがもっと強くなるためには川崎に離されちゃいけない。追い越さなければいけない。まだまだこれから。僕たちの夢はこんなところじゃない。もっと先を目指して愚直に進んでいこう。この充実感と悔しさの入り混じった感情が僕たちをさらに強くすると思う。
まとめ
Jリーグはこんなに面白いんだと言って出しても全く 問題ない試合だと思います。スピード感や守備のスライドや攻撃の厚み。そしてお互いが譲らない球際と魂のこもったプレー。少なくとも僕はこの2チームの試合に 勇気と元気をもらった。面白いものを面白いと感じる目がこの国にはできている。チーム一体となって戦う僕たち湘南ベルマーレは今シーズン番狂わせを起こせるかもしれない。
川崎の失点シーン。最後残っていたのは山根だった。 恐らく池田のシュートコースに入ることでクリアしようとゴールギリギリにいたんだと思う。よく湘南の時にやっていたプレーだ。しかし川崎に行ってからはなかなか見なくなったプレーだ。そこまで追い込めたんだと思う。山根にも離されちゃいけない。必ず追いつく。 次は勝つからな。代表でも頑張れよ！
引用リンク
https://www.bellmare.co.jp/wp-content/uploads/2021/05/210526_sb220.jpg
https://www.bellmare.co.jp/wp-content/uploads/2021/05/210526_sb280.jpg
公式サイト
何か問題があればこちらまで
shonankaneshu@gmail.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？