11月18日は無敵の日

転校先の学校に通ってた頃の話。


私は大切な試験を受けることになった。

何度もその受験要項も確かめて、あとは書類を出すだけという段階になって、手違いで試験項目が増えることになってしまった。

もっと確認しておかなかった私が悪いと今でも思ってるけど、相手側も「明らかに説明が足りてなかった」と言ってくれて、試験に関してもとても励ましてもらってありがたかった。


結構長くその試験に向けての準備はしてたけど、その増えてしまった試験項目が、私にとっては短時間でどうにかなりそうなものではなかったので、どうしようかなと迷ってた時に、当時同じクラスで一番仲が良かった子が相談に乗ってくれた。


「2週間で間に合うと思う?どう考えても、無茶な気がする…」

私はたいがいのことは「なんとかなるよ!」と笑えるタイプだけど、その時ばかりはどうにかなるとはちょっと思えなかった。


一番仲が良かったその子は、帰る方向も途中まで一緒だったし、委員会なども一緒にやってることが多かったから、帰り道にいろいろ話すことも多かった。

「その試験の書類出すのっていつ?」

「11月18日」

「じゃあ通るわ!!書類出そう!試験受けたらいいじゃん」

「そんな簡単に言わないでよ(苦笑)2週間しかないんだよ?2週間はきつい…」

「でも、11月18日なんだよね?その書類出すのは」

「そうだけど、それと合格って関係ある?」

「あるある!大ありだよ!だって誕生日だもん」

その子の誕生日が11月18日だった。

「あー!誕生日か!!」

「だから無敵なんだって、11月18日は。Nikoが書類出すのにめちゃくちゃふさわしい日じゃん。ラッキーだよ!!」


私は11月18日生まれじゃないけど、そこまで言われたらものすごくラッキーな日な気がしてきた。

そこから2週間、できる準備は全てして、かなり不安だったけどその試験を受けることに決めた。

他の友達も、とても励ましてくれた。

「2週間しかないと思うから焦るんだよ。2週間もあると考えれば、その間にできることはたくさんあるよ」

もらったその言葉は、今でも何かに挑戦する時に心に思い出す言葉になってくれてる。

本当に嬉しかったし、私も周りの友達が大変な時は支えになりたいと心から思った。


11月18日、その書類を出しに、試験を受ける先の窓口まで行った。

「今回は手違いがあって、本当に申し訳なかったです。でも全力を尽くしたら大丈夫だから」とそこでもまた励ましてもらって、もう頑張るしかないなと覚悟を決めた。


試験日は風が強い日だった。

「寒くない?もっとこっちであったまっていいよ」と、試験会場の方がストーブがある所に案内してくれたのも覚えてる。


その時の自分ができることは全部頑張った。これでダメならもう仕方ないと思った。


「試験どうだった?」

一番仲が良かった子に聞かれた。

「やるだけのことはやれたよ。たくさん話聞いてくれてありがとう!嬉しかったよ」

「まあ書類出したのが11月18日だから、絶対受かってるに決まってるんだよ」

「それだけ繰り返し言われたら、もうそんな気がしてきたわ(笑)」

「だいたいさー、Nikoはベルマーレから何を学んでるの?あきらめないことでしょ!たとえ始まりは目標に遠くても、努力してあきらめなければ叶うってことでしょ!」

それを言われると、確かにその通りだ。


少しでも時間があれば、その試験の準備をする、もしダメだったら…という不安を必死に打ち消して過ごす、という2週間から解放されたことに、私はまずホッとしてた。


その試験の結果が合格と分かった時、あきららめたらダメだということ、限界を決めてるのは実は自分自身なのかもしれないということを学んだ。


でも、私一人だったら試験自体受けるのをあきらめてたかもしれないし、2週間の間ずっと前だけ見て信じて頑張り続けるエネルギーはなかったかもしれない。


その転校先で大変なこともあったけど、とてもいい友達にも恵まれたと本当に思う。


一番仲が良かった子は、ピアノがうまかった。

私はピアノではないけど楽器をやってたから、音楽の話もよくしたし、その子が好きなバンドの曲をピアノで聴かせてくれることもあった。

「うまいなぁ、ほんとそのバンド好きって伝わってくるよ」

「Nikoは歌作ったりするんでしょ?」

「人に聴かせられるようなもんではないよ」

「なんか歌作って聴かせてよ」

「じゃあタイトルは『11月18日』で(笑)」

「でもほんとに受かったんだから、やっぱり11月18日はNikoにとって無敵な日なんだよ!!」


もちろん意識してそうなったんじゃないけど、どこの町に住んでもなぜか、ターニングポイントで関わる人、良くしてくれる人、特に仲良くなる人は11月生まれが多かった。だけど、その後しばらく18日生まれと出会うことはなかった。

それでも、私にとって11月18日は、合格したという結果だけじゃなく、その試験を受けるということにあたって本当に多くのことを学んだ日。

毎年その日が来ると、あの日のことを思い返して「11月18日は私にとって無敵なんだもんなあ、今年から来年の今日にかけてはこれを目標にしよう!」と小さくても何か目標を立ててみたり、誕生日に近いような位置づけの日になってくれてる。


大人になってから、とてもいい意味で影響を受けてる人がいて、その人の誕生日が11月18日だと知った時は本当に驚いたし、本当に嬉しかった。

その人は私のこの無敵の日伝説を知らないけど(笑)、それでも366日の中で1回しかない日にバッチリ合ってるのはすごいと思う。

いつか無敵の日の話をしてみたい。

最高の日に生まれてくれてありがとう!って。

言えるのかなあ。

それこそ無敵になれるくらいの勇気が必要そうだ。


私は周りの人たちに、元気なり勇気なり、何かをあげられてるだろうかと考える。

あの日、謎な理論でも無敵だから大丈夫と言われて、笑って必要書類を出しに行けたように、私は誰かの背中を押せるような人間になれてるだろうかと考える。


昨日書いたようなコロナ禍の話もそうだけど、予想外や予定外のことがあった時に、人の本性が分かるとよく言われる。

肩書きとか学歴とか容姿とか、そういうのでは測れない人間性を磨いてなければ、いざという時に人の心に届くような言動はできないと思うから、私も微力でも周りの人の支えになれるような人を目指そうと思う、


そんな無敵の日、11月18日の気持ち。

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