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エッセイを書こう。

不意にそう思い立った。
創作活動をしたいが自分には能力がないと鬱屈としていることと、日々の細々としたことの集積からそういう結論に至ったのだ。

白状すると、僕はかなりの面倒くさがりだ。
自分で言うのも何だが、放っておけばどこまでも堕落してそれが平気な質なのだ。
日記にしても、三日坊主どころか一日目で終わり続いた試しがない。
小学生時代の夏休みの絵日記には大いに苦しめられた。
だから今回はどうにか続けていけそうな仕組みを考え出した。
僕は今、毎週Podcastを収録して配信している。
『Re:creation Port./レクリエーションポート』
というタイトルで、写真家の小宮京さんと二人で、身の回りの些細な出来事や、世の中で起きている様々なことに独自の視点でスポットライトを当てながら、より良く生きていく術を模索する思索生知ポッドキャスト番組というコンセプトだ。

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番組のコンセプトと冒頭で言っていることに乖離があるように感じるかもしれないが、どこまでも堕落してしまう人間が、どうにか良い方向に向かおうと足掻いて始めた番組なのでご心配なく。
プレ配信が一回、本編配信13回+9回の番外編を経て、11月からシーズン2として配信している。
ここまで続けてこられたのは、ひとえに小宮さんの尽力のおかげた。謝辞。

そのレクリエーションポートの配信後に、内容を振り返って話し切れなかったことや、あの場では言わなかったこと、収録を終えて思うことなど、そういったこぼれ話や反省を題材に書く。   そうすればPodcastと互換性を持たせられるし、何よりレクリエーションポートが続いている間は毎週エッセイを書く題材には困らないという仕組みを閃いた。
これはなかなかの発明だ。
ハードルはとにかく下げよう。
自分が出来そうなプランを自分に寄り添って考えるのだ。
そこでふと、そもそもエッセイとは何ぞやと思い調べてみることにした。
気になったことは何でもすぐに調べられて実に便利な世の中だ。

エッセイ。
自由な形式で、気軽に自分の意見などを述べた散文。随筆。随想。
特殊な主題に関する試論。小論。

ふむ。大変結構。
自由な形式で気楽にとは、随分と背中を押してくれる。

11月21日配信のレクリエーションポート#25で、僕はリアル15巻が発売されたことについて話をした。

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読んだことない人はいても、その名を知らない者はいないであろう、あのスラムダンクの作者である井上雄彦先生が車椅子バスケを題材に、現実と向き合い葛藤を抱えながらも前に進もうと足掻く青年達を描いたマンガだ。
僕はこの作品のファンなのだ。
このリアルという作品、単行本14巻が発売された2014年の12月19日からパタリと止まってしまったのだ。
14巻の巻末に15巻は2016年春、発売予定とあるが、雑誌の週間連載が休載となりそのまま6年の月日が経ってしまっていた。
ちなみに僕は井上先生のもう一つの作品、   宮本武蔵を題材に描いたバガボンドの大ファンでもある。

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こちらも現在は休載中であるが、僕は事ある毎にこの2作品を繰り返し読み返してきた。
僕にとってバガボンドは人生の教科書で、
リアルは現実との戦いを応援してくれる参考書という感じで、この二つの作品に幾度となく救われてきた。
だから、単純に嬉しかった。
心のどこかで、もう続きが読めないかもしれないと思っていたリアルの続きが読めるのだ!
6年の歳月を経て、とうとう発売されたのだ!
井上先生は本当に素晴らしい漫画家だ。
この喜びを伝えたい。作品の魅力を共有したい。
そういう思いで、トピックとして選んだ。

しかし、響かなかった。
話せども話せども作品の魅力がまるで伝わっていない。
その場で話している相手に響かないのだから、配信を聴いている人に響くわけもない。
…まぁ、音声媒体だし。
これが映像媒体とかでキャラクターのイラストとか、名シーンを紹介できたりすればまた違ったはず。
そもそも僕がリアルの魅力を布教するまでもない素晴らしく広く知られた作品であることは間違いないから、そこまで気にすることもない。
僕はただ、待望の最新刊が発売された喜びの声明を出したかっただけなのだ。
そんなことをぐるぐると考えた。
Podcast収録後には、いつも色々と考えさせられ勉強になる。
上手くいかなかったものは仕方ない。
次回に活かそう。

…いいや、違う。能力がなかったのだ。
やり様はいくらでもあった。
抑揚や声の調子、テンション。
伝えられることがまだあったはずだ。
自分には、それを伝える能力が足りなかっただけなのだ。

次回に活かそう、今回はそれでは収まられなかった。
何故か。

悔しかったのだ。

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自分が好きな物。
その魅力、素晴らしさ、喜び、僕はそれを伝えるための努力を怠った。

「悔しくないのか」
少し余談になるが、幼い頃よく母にそうけしかけられた。
母は僕にそうやって発破をかけ、僕が奮起することや僕の反骨精神に期待していた。
だが、それは裏目に出た。
僕は悔しいと認めることが悔しかったのだ。
母の思惑通りになるのが悔しかったのだ。
そして、悔しいと感じることに対しても悔しいと思っていた。
自分は感情過多なところがあると幼いながらに僕はそう自分を分析していた。         自分の中の激しい感情を扱い切れず持て余し、 そしてそのことにとても疲れてしまったのだ。 そうして次第に感情的になるのを避けるようになっていった。                心の水面に波風を耐えぬよう、常に一定の状態に心を保つようにした。            自分の能力不足を自覚し、それを補うために努力し、にも関わらず望む結果を得られない。
悔しいと感じたり、一生懸命やったはずなのに努力が足りないと思い知らされる。       そういうことの繰り返しに自分自身が落胆し、うんざりしていた。
何より、感情は問題解決に何の役にも立たない。実に捻くれた子どもだ。

リアル15巻にて、メインキャラクターの一人である高橋が「あーあ、めんどくせえ。こういうのいらねぇから‼︎ もうたくさんだ。これ以上、感情が揺れるのはー」と涙ながらにモノローグするシーンがある。
これは正しく当時の僕が思っていたことであり、今なお心の根底にあることだ。

僕は好きなものについて語るのが苦手だ。
嫌いなものには理由があるが、好きなものには理由がない。そういう考えを持っている。
それに好きを上手く言語化出来ないのだ。
何か言葉で言い表すことは出来ないこの気持ちこそが好きであることの真実とさえ、どこかで思っている。
しかし、今回その“好き”を音声媒体で言語化し伝えなければならなかった。
自分で伝えることを選んでしまったのだ。
その結果、大失敗してしまった。
その上、アシスタントである小宮さんが次に選んだ話題が、好きを言語化することに長け、好きを原動力に凄まじい活動をする人物と対談するという告知だった。
その人物は僕も以前お世話になったことがあり、とても魅力的な人なのだ。
その人の話をしていて、何だが大きく明暗が分かれたように思えたのだ。
何とも数奇な配信回である。

好きの横好き、好きこそ物の上手なれ、などの ことわざにもあるように、“好き”にはとてつもない力があるのだ。
困ったことに、僕にはそのエンジンがない。
僕は度々、そのことに悩まされていた。
勿論、好きだからと楽な事だけ、楽しい事だけをやるわけではない。
嫌なことや苦しいことも、好きだからこそ耐えて乗り越えていかなければならないのだろう。
だが、同様に好きだからこそ、嫌なことや苦しいことでもやれるとも思う。
その“好き”に帰結できる。
僕にはそれが羨ましく、同時に妬ましいのだ。
好きという言葉にはプラスな意味合いの響きが多い。
というより、純度100%プラスと言っても過言ではない。
そういうものを振りかざされると、僕はなんだか後ろめたいというか、居心地が悪くなってしまうのだ。
なんというか、そのエンジンでズンズン進む人に押しのけられてしまうような。
取り付く島もないような。
過去にそういうモノで前進していた時期が僕にもあったが、それは今はもうない。
枯渇してしまったのだ。
だから代わりになるエンジンを見つけなければならないが、それが何とも厄介なのだ。
どこにも行けず日陰で立ち止まっている人間には、何とも眩しい光なのだ。

そういった様々な要素のややこしいものが、今回水面に投げ込まれて悔しさという波紋が浮かび上がり胸をざわつかせたのだ。

さぁ、どうする?              悔しさとチャレンジは、リアルのテーマの一つ。そして、人生は敗北と挑戦その繰り返しだ。

リアルを読んだ自分よ、さぁどうする?

そうして僕は新たな試みとして、エッセイを描くに至ったというわけである。

これをシリーズ化して続けていくわけだから、 何かタイトルを付けよう。

…そうだな、後悔や反省という意味のRegretと 報告書のReportで
『Regret Report./リグレットレポート』    そう名付けよう。          『Re:creation Port./レクリエーションポート』とどこか通じるところがあるし、Re.Reは返信みたいで洒落が効いている。

そういうわけで、これからは毎週Podcast配信後にそれに付随したエッセイを書いていこうと思う。
自分で言っておいて一体全体、いつまで続けられるか疑問だが、それも一つのお楽しみ。
これを読んでいる人は、是非ともPodcastと合わせて楽しんでもらえれば幸いだ。

『Re:creation Port./レクリエーションポート』
#25話したいこと知らせたいことをそれぞれ
https://anchor.fm/recreation-port/episodes/25-Recreation-Port----emohja

Twitterはこちら。
(@RECREATION_Port)
武藤翔馬
(@shoma674)

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