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Programmable zkOracle "Hyper Oracle"

皆さんこんにちは、Skyland Venturesの松本です。本日、Skyland Venturesは「Hyper Oracle」というブロックチェーン用のミドルウェアに投資を行ったことを発表しました。

今回の投資には、SkylandのTech Adviserであり、JPYCのCTOでもある荒巻さんにもご協力いただきました!PR Timesにもコメントを頂いておりますので、是非御覧ください!

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000146.000008324.html

導入 / Hyper Oracleとはなにか

Hyper Oracleとは、一言で言えば「ゼロ知識証明を使ったプログラマブルなオラクル」です。ただ、オラクルと言っても、ChainlinkやBand Protocolのような一般的に良く知られるオラクルとは挙動が異なります。

オラクルといえば「外部からの情報をオンチェーンに取り込むためのミドルウェア」という理解が多いですよね。以下は「Oracle 意味 web3」とGoogleで検索した際に最初に出てくる記事からの引用です。


この場合、結果を示す『明日は何℃』はオラクルを介して、ブロックチェーンの外側にある現実の出来事、実際の気温情報を参照してブロックチェーン上に結果情報を引っ張ってきます。

Oracle(オラクル)とは?/ Zenism

これは"Input Oracle"と呼ばれるもので、Oracleの種類の一つになります。 (そもそもオラクルという存在自体がそんな明確な定義があるものではありませんが。)

Hyper Oracleは、こうした"Input Oracle" というよりもむしろ、"Output Oracle""I/O Oracle"と呼ばれるオラクルの機能に特化しています。

In the realm of blockchain, the terminology "input" and "output" are used to distinguish between two types of oracles: input oracles and output oracles. In addition, Hyper Oracle is defining the I/O oracle, a specialized type of oracle that integrates both input and output oracles by first following the output oracle's flow and then the input oracle's. Each oracle can be further broken down into three components: data source, computation, and output.

Hyper Oracle: A Programmable zkOracle Protocol

僕個人が注目しているのは、この中の I/O Oracleの仕組みです。彼らのアプリケーションの一つであるzkAutomationは、スマートコントラクトからデータを受け取って、オフチェーンで複雑な計算を行い、その計算結果とZKP (その計算が正しいことの証明) をオンチェーンに返すことができます。これにより例えば機械学習や自動化されたbotのような、スマートコントラクト上では実装が難しいプロダクトが最小限のトラストで実装できるようになるのが面白い部分です。

Comparison of Oracle Types / Hyper Oracle whitepaper より
Hyper Oracle: A Programmable zkOracle Protocol

所謂ZK-RollupのLayer2 Blockchainと非常に似た考えですが、Hyper OracleはEthereum スマートコントラクトの計算力を拡張するという考え方ですので、例えばL2のようにDappのコントラクトをL1からmigrateする必要はありません。Axiomなどが近い概念です。

Input OracleとOutput Oracleの説明は、Chainlinkのエデュケーションコンテンツにもあるので気になった人は見てみてください。

結論 / なぜ投資したのか?

理由は3つあります。

  • コンセプト

    • Ethreum スマートコントラクトの処理能力を、最小限のトラストで拡張するソリューションの一つだから。

    • Layer2 とは異なるアプローチのソリューションで、斬新。

  • チーム

    • Devが精鋭しかいない。ガッツリ回路まで書ける数学か暗号学のPh.Dか、GAFA・Bytedanceのソフトウェアエンジニア

  • プロダクト

    • ZKのインフラストラクチャという難易度の高い領域で1年でMVPまで完成している。既に開発者がその上で開発をし始めている。

コンセプト

Hyper OracleのコンセプトはEthereumを"World Supercomputer"にすることです。Ethereumは良くその思想や性質から"World computer"と呼ばれることが多いですが、そのセキュリティの仕組みから、高度な自動化や計算量が非常に多い計算は得意ではなく、まだまだユーザーが満足できる性能とは言えません。

Hyper Oracleのzk Graphは、そうしたSmart Contractが苦手な計算をOff-chainで行うのに非常に適しています。

私個人として注目している未来は、zkGraphを用いてSmart Contract上でAutomationやMachine Learningができるようになることです。彼らの開発するzkGraphのプロトコルにはzkAutomationzkMLが既に含まれています。これらの特徴はDappsのゲームを一気に大きく変わるきっかけとなるはずです。

チーム

Hyper Oracleのチームは非常に優秀なエンジニアや研究者の集団です。13人のエンジニアの内半分が数学・暗号学などのPh.Dで構成されており、その他のメンバーも元Google、Meta、Bytedanceなどのソフトウェアエンジニアなどから構成されています。
彼らはプロダクトローンチまでは徹底的なリサーチ、エンジニアリングに注力しており、ビズのメンバーはここ数ヶ月でようやく採用を始めました。
しかしながら、MessariのModular Blockchain Landscapeに掲載されたり、MetamaskやAlchemyなどのTier1 Projectと共にHacker Houseを行うなど、既に業界におけるプレゼンスを獲得し始めています。

プロダクト

彼らは現在、zkAutomation, zkIndexingが実行できる、zkGraphのMVPをEthereum上に構築しています。(現在MVPの一般公開は終了していますが、デモ動画はこちらから見ることができます) 既に一部の開発者はHyperOracle上での開発を始めており、複数のユースケースが既に生まれています。Hyper Oracle上でzkDappsを開発する際の基礎的な考え方やHow toは、Youtube上にも公開されています

zkを使ったインフラストラクチャは非常に構築が難しいですが、そんな中で既にプロダクトをローンチしているというのは大きな強みで、更にその上で構築をしたいという開発者コミュニティが韓国やアメリカ、ヨーロッパに現れ始めているのもポジティブに感じています。

Hyper Oracleの構造

本当は「ホワイトペーパーを見ておいてください!」の一言で終わらせたかったのですが、やや複雑なので簡単な説明を記しておきます。
一応ホワイトペーパーも置いておきます。
https://mirror.xyz/hyperoracleblog.eth/qbefsToFgFxBZBocwlkX-HXbpeUzZiv2UB5CmxcaFTM

zkGraph

Hyper Oracleは、ブロックチェーン用に設計されたzkOracleのネットワークです。zkPoSというプロトコルがEthereumからBlock Headerの情報を取得し、プログラム可能なオフチェーンコンピュータである"zkGraph"によってその取得したデータを処理します。zkGraphはHyper Oracleのnodeがどのようにデータを扱うかを定義している箇所でもあるので、Ethereumでいうsmartcontract、The Graphでいうsubgraphのようなものとの理解が正しいみたいです。


zkWASM


zkGraphはzkWASMという実行環境で動作します。WASM (WebAssembly) に関しての説明はこちらがわかりやすいでしょう。ポルカドットエコシステムがWASM推しで、Astar NetworkのVMがWASMに対応していたはずです。既にWeb2で多くの人に受け入れられたフォーマットであり、ツールなども豊富なことから、より多くの開発者にとって参入障壁が低いVMであることは確かです。

Hyper OracleのチームはzkWASMの可能性を強く信じており、Mediumで記事も執筆しています。

Meta Apps

これまでに紹介したのはHyper Oracleの構造的な部分で、これらの構造を利用したプロダクトは3つ存在します。このアプリケーションはすべてプログラマブルで、あらゆるDappsの開発者が利用する事ができます。

  • zkAutomation

    • Smart contractで実装の難しい、自動化が必要なアプリケーション (例 : アービトラージボット、liquidation keepers、on-chain ETFs or on-chain stable coins) を実装する。

    • オンチェーン上のデータをトリガーにして、オフチェーンで計算をし、その結果とzkpを返す。

  • zkIndexing

    • the Graphのzkp Version

    • インデキシングとクエリの作成

      • データ分析PF・Dappsで利用できるように。


  • zkML

    • 機械学習の推論プロセスをオンチェーン化することで、分散型の機械学習計算を可能にするというコンセプト

    • ETH Denverのあたりでできた。

    • プロセスはオンチェーンにあるが、計算はzkGraphで行える。

      • feasibilityに関しては議論の余地あり。zkMLに関してはtraining partまで進んでいるプロジェクトがほとんど無い。

Middlewareにおけるzkの優位性

分散性 / トラストレス

Hyper Oracleは分散化したnodeの集合体としてのネットワークですが、全てのnodeは計算の実行とzkpの生成を行うために存在します。zkOracleの場合、1-of-N (ネットワーク参加者の内、1人が正直であれば足りる) と呼ばれるトラストモデルの上に成り立ちます。というのも、zkpの生成によって、その計算の実行が過去のethereumのblock headerの情報と照らし合わせて整合性があるかどうかがsmart contractによって検証できるからです。

ファイナリティの速さ

よく言われることですが、zkを利用したプロトコルがデータをオンチェーンに格納するのにかかる時間は、基本zkpの生成時間に依存します。Chainlink のようなネットワークの場合はスラッシングの時間に、optimistic rollupの場合はChallenge Periodにそれぞれ依存するため、数日から一週間程度かかることがありますが、zkの場合は数秒から数十秒で完了します。
また、zkGraphの性質上データを並列に処理することが可能なため、nodeが追加された際に線形に性能が向上することも重要な視点です。

コスト

上記の速さの議論と近いですが、構造上PoWのようにほとんどのコンピュータが必要のない計算をしていたり、PoSのように計算していないコンピュータがほとんどだったりするわけではなく、nodeは常に効率的に計算とzkpの生成を行い続けます。そのため、一般的なネットワークと比較してコストが抑えやすい傾向にあります。これはインフラストラクチャが非常にシンプルなことにも依存します。

最後に

今回はSkyland Venturesが投資を行った Hyper Oracleについての紹介を行いました。実は個別に行っているアプリケーションというのは、既に存在するものがほとんどなのですが、 (zkAutomation → Axiom / Gelato network ・zkIndexing → The Graphなど) それをよりトラストがいらないzk Oracleのネットワークで実現することで、より低コストでパフォーマンスの高く、十分なセキュリティをもったアプリケーションを提供できるようになります。また、zkGraphの汎用性の高さも他のプロジェクトに対する優位性になるでしょう。

Hyper Oracleの強みは間違いなくチームの技術力で、特にまだ誰も明確な解を得られていないzkMLの領域ではトップを行く可能性が十分にあると感じています。

この投資がHyper Oracleチーム、Skyland Ventures、そしてBlockchain ecosystem全体にとって素晴らしいOpportunityやResultを生み出してくれることを願って、今回の文章を閉めさせていただきます。

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