学ぼう、花のスペシャリストに。水揚げ&花のケア vol.1|水揚げの基本「水切り」
花を長持ちさせるには、花それぞれの特性を知った水揚げや花のケアが必要です。
でも、どうやっていいかわからない。
プロになりたい人、いまさら聞けない人、もっともっと花を楽しみたい人まで、
基本から学んじゃいましょう。
花を長持ちさせるためのテクニックや知識を、実際のお花屋さんの業務の中で研究し、検証してきた
フルーロン花佳の薄木健友さんに学びます。
vol.1 水揚げの基本その1 「水切り」
水の深いところで切る
第一回目の今回は、まずは基本中の基本からご紹介します。これから短期連載でいくつか紹介していきたいと思います。
水切りをお勧めしている品目は、実際は空切りでも水が上がる花がほとんどです。
プロの水揚げ作業はスピードを要するので、現実には空切りが多いと思われますが、より確実な水揚げ方法を解説したいため、あえて水切りを推奨します。
水の中で切る理由は、切り口を空気にさらさないため、と思っていませんか?
ダンボールなどで運ばれた切り花はすでに茎の中に空気が入っていますから、ただ水の中で切っただけでは中の空気は抜けません。
1. 根元の茎を水の中に入れる。
2. 先端から2-3cmのところを、水中で斜めに切る。
「正しい水切り」は、水圧を利用するのがポイントです。
水道の水を出しっぱなしにして濡らしながら切ったり、浅く水を張ったところで水切りするよりも、バケツの深いところで切るほうが効果的に水が上がります。
切れるものならハサミでももちろんOKですが、切り口を鋭角にして断面積を広くするには、ナイフのほうが適しているでしょう。
茎の先端にはバクテリアがいるので、2-3cmのところで切ります。
水切りは、切り口を新しくすると同時にバクテリアを取り除く作業でもあります。
水温にも注意を
また、水の温度も重要です。
どの水揚げ作業でも、水温が低すぎると水は上がりにくくなります。
特にカスミソウのように細かい花がたくさん着いていて枝の細いもの。
人間が冷えすぎた飲み物を飲むとお腹を壊すように、植物にとっても冷えすぎた水は良くありません。
ですから、水揚げ時は水道の蛇口から出てきた温度で水揚げし、その後ストッカーに入れるなどした方が良いでしょう。
ストッカーの中で冷えた水を使って水揚げするのは、お勧めできません。
寒い地方では、冬場の水道水は非常に冷たくなっています。
ナンテンなど、いきなり冷たい水で水揚げをすると葉が落ちやすい植物もあります。
その場合は、水を一晩バケツにためておき、常温になってから水揚げするのが良いでしょう。
適する花材
全ての植物
POINT
・なるべく深いところで、斜めに切ること(水圧を利用する)
・新鮮な花材なら、水揚げはこの作業のみでOK!
次回は
>>「正しい水揚げの基本2 / 湯揚げ」をご紹介します。
教えてくれたお花屋さん
薄木健友 Taketomo Usuki
札幌の生花店株式会社花佳代表取締役。NPO 法人日本切花装飾普及協会認定カットフラワーアドバイザー。 第1回花のMVP大賞受賞。1988 年札幌市内の生花店に勤務したのち、1993年にフルーロン花佳を開いて独立。JFTD学園講師、切り花の水揚げと鮮度管理に関する講演や雑誌連載など、活動は多岐に渡る。
フルーロン花佳
北海道札幌市西区西野6条3丁目 1 - 1
http://www.hanaka.tv
E-mail:hana@hanaka.tv
もっと詳しく知りたい!「花の扱いのプロになりたい」という人は薄木さんの著書『水揚げ&花のケア 切り花の鮮度保持マニュアル』をご覧ください。
薄木さんの言葉:
家電販売業界から花屋に転向した私は、バラとカーネーションの違 いすらわからない、まったくの素人でした。
先輩たちから花の名前を 教わり、アレンジや花束、葬儀スタンド、祭壇、ブライダルブーケな どひととおりの技術を教わったのですが、ひとつどうしても納得のい かない技術がありました。
それが水揚げです。
キクは湯揚げして!ススキは酢に浸けて!アジサイはミョウバンをすり込んで!どの作業にも驚きましたが、それ以上に「なぜ?」という疑問を持ちました。
先輩たちに質問しても、「水が上がるから」と言われるだけ。
納得できる解答は得られませんでした。
独立後、ほかの花屋さんと交流するようになり、お店によって水揚げ方法が違うことを知り、私の疑問はさらにふくらみました。
いったいどの方法が正解なのか?
そこから 私の水揚げと管理についての模索が始まったのです。
その模索から得たことを、2008年から2年間、雑誌『フローリスト』にて連載させていただきました。
本書はその内容をさらにわかりやすくまとめたものです。
花によって、適する温度や湿度、そして水も違います。
エチレンガスの影響を受けやすい花、バクテリアの影響を受けやすい花など、性質はさまざまです。
それらの管理方法についても具体的に説明しています。
水揚げにはいくつもの方法があり、しっかりと水が上がればその方法は正しかったと言えます。
本書でご紹介するやり方が必ずしもすべ てとは言えません。
あくまでも数ある方法のひとつとして参考にして いただければ幸いです。
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