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【日常のマチが好き】

あの日のやりとりが、喉に刺さった魚の骨のように、いまもまだ抜け無いままでいる。

当時、僕は大学生だった。
友人と四条でひとしきり遊んだ後、三条大橋の近くのコーヒーショップで買ったラテを飲みながら、等間隔に並ぶカップルを眺めていると、友人がこう言った。

「やっぱ遊ぶなら四条やな。これ以上あっちにはなんもないわー」

そのフレーズになにかモヤっとしたけれど、それを言葉にすることもなく

「あーね。ほんまそれな」

と、その話題自体に興味がないような返事をした。

実際、僕は三条の駅前にあるお寺さんや沖縄料理屋、商店街にあるラーメン屋や近くに流れる河川が好きで、僕にとって何もない場所ではなかった。

でも「いや僕は好きやけどな」という言葉を飲み込んでしまった。

僕が元々何かの魅力を熱く語れるタイプでない所もあるけれど、四条の賑わいや面白さが好きな友人に、東山の魅力を語っても響かないと勝手に思ってしまったのかもしれない。

観光地に足を運ぼうと思う大学生ではなかったが、僕は僕なりに東山が好きだ。
商店街や細い路地、裏通りなど、歩けば歩くほど新しい発見があって、新しい出会いがある。

いまならはっきり言えるはず。
僕は素敵な路地や河川敷がある、観光地でも、賑やかでもない、日常の東山が好きって。