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ぶらり、ふらり。

行くあてを決めず、三人で古都トリップ。

「暑い、暑い」と嘆きながら、日陰を探して路地裏を歩く。
「あっつー」「あちー」「溶けるー」と呻きながら、ふらり、ぶらり。

みんな心の中で「なんで今日やろうって言い出したんだ」なんてよぎりつつも、
心がくすぐられるものを探して、ぶらり、ふらり。

素敵なお店があれば入るというのが唯一のルール。

今日だけは、涼しくてなんでも揃っているコンビニには入らない。
だって一回入ってしまったら、もう二度と出れなくなってしまうから。

まず初めに見つけたのは、趣のある本屋さん。
もう雰囲気からして、いい本を置いている感しかない。

涼しさと、お洒落さ、素敵な本を求めて足早にはいる。
「あぁ涼しい」「あー幸せ」「もう出たくない」と砂漠でオアシスを見つけたが如く。

違う違う。これじゃ、コンビニに入ったのと変わらない。
ちゃんとお店を味わうんだ。

本の中身が見れない店主お勧めの本があったり、内装や空気感まで厳選されているような空間。
素敵すぎる。もうここに住みたい。(涼しくて帰りたくないという意味ではない)

そんな魅惑的なお店を抜け出して、歩いていると、狐のマフラーや狐のお面、
いつの時代のものか分からない法被が売られているお店に引き寄せられる。

「このお面欲しかったんよなー」「え?何に使うの?」「うわ!この狐のマフラー本物や!!」
とワイワイ話していると、人が増えてきたので、譲って歩みを進める。

「あかん。ほんまに暑い」「そろそろ何か飲みましょー?」「じゃあ、次は行ったお店で紹介してもらお」ということで、
小説に出てきそうな雰囲気の店員さんに紹介してもらったコーヒースタンドへ向かう。

やっと飲めるー!と思いきや、お店が閉まり始めたので、慌てて駆け寄って、「今日はもう閉店ですか!?」と聞いてみる。
あの時の表情は、悲壮感が漂っていたはず。

優しげな店員さんが「テイクアウトのコーヒーならいいよー」と快く受け入れてくれた。
断りにくい顔でお願いしていたら、本当に申し訳ない限り。

「今日はイベントがあってねー」と言いながら、いい香りをさせながら、ハンドドリップでコーヒーを淹れてくれる。
コーヒーの知識を押し付けるでもなく、こちらが求める範囲で、コーヒーのことについて教えてくれる。素敵な距離感。

閉店間際のラスト一杯に巡り会えたことや冒険の末たどり着いた感もあって、コーヒーがちょっとした宝物の様に感じる。
「なんて美味しいんだ」と一人がこぼす。2人も無言で頷く。

さて。またあの暑い道のりを帰ろう。

「ねぇ。タクシーのらない?」「えぇー」「うーん」
一人がつぶやいた誘惑に負けそうになりながら。