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最適化が極まる世界。への向き合い方と在り方

私は、なんらかの行動を起こす際、よくも悪くもイメージの通りにしか実現しない。との持論を持っています。
「すべてのものは2度作られる。」との名言を残したのは、7つの習慣で有名なスティーブン・コビー博士ですが、長年、建築畑を歩いて設計図書を描いて建物を作ってきたこともあり、その言葉をまさに真実だと思っています。
VUCA化と言われる先行き不透明、不安定で複雑、曖昧な今の世界において、確固たる自信を持って明るい未来を見いだす(イメージする)のは非常に困難です。しかし、わからないと頭を抱え思考停止に陥ってしまっては、まさに緩やかな破滅への道を進むばかりです。未来を想像し、時代に適応すべく新しい行動や計画を想像して創造するしか生き残る術はありません。

SINIC理論

未来の羅針盤

この20年間で全く想像していなかったほど大きく世界は変わりました。この大きな変化を踏まえて、これからの未来を創造するにあたり、まずはこれからとこれまでの流れを俯瞰して分析してみる必要があります。そこで私が着目したのが、50年前にオムロンの創業者、立石一真氏が未来予測として発表され、その精度、的中率が高すぎると5年ほど前から大きく話題になっているSINIC理論です。
そこに書かれてあるのは、2005年から2024年までが最適化社会となり、2025年から自立社会へと変容するとの説。ここに時代を読み解くヒントがあるのではないかと考え、以前から熱心にオムロンのシンクタンクであるヒューマンルネッサンス社の発信する情報を拾っては拝見していました。昨年、出版された書籍『SINIC理論』は発売と同時に早速購入しました。
ちなみに、現在はヒューマンルネッサンスの立石郁雄氏に顧問に入っていただき、私が参画している経営実践研究会でSINIC理論を社会実装するための研究を進めています。やっぱりイメージしたことは現実になるのです。

最適化が極まる時代

SINIC理論の予測では、今年2024年で最適化社会が極まり、来年2025年から自律社会が幕を開けるとされています。2025年に世界は激動の変化を迎える。との説は他の学者等の口からもよく聞かれますが、近年、世界で起こっていることはその予兆だと強いリアリティーを持って感じられます。
新型コロナによるパンデミックは、世界を大きく変えました。非対面のコミニケーションがニューノーマルとなり、時間や空間に縛られずに人が働けるようになりました。現在、ロシアとクライナ、イスラエルとパレスチナ、アメリカとイラン、そして朝鮮半島で起ころうとしている紛争や戦争の頻発は西側のグローバル資本主義に対するアンチテーゼが表面化していることを示しており、米ドルの基軸通貨からの転落など、世界の枠組みが変わろうとしています。また、生成AIの爆発的な普及は、誰もがデータを収集して最適解を導くことができるようになりました。日本の政治の世界では盤石の与党が組織構成の根底から崩れようとしています。すべては最適化が極まりつつあることの証左だと言えるのではないでしょうか。
最適化社会とは、社会システムや人の営みの歪みを修正しようとする力が働くのだと考えれば、まさに今、それが極まりつつあると思うのです。

人間の未来は人間が想像し、創造する

まるで、エントロピーの法則(あらゆるものは、乱雑に拡散し、二度と元に戻らない法則)に従って、世界は混沌に向かっているようにも見えます。そんなカオスを抜け出して、次に来たるべき世界は、どのようなものかを考えるとき、冒頭に上述した通り、想像力(イメージ)を働かしてあるべき社会を創造する強い意志と意図が必要だと思います。
人はイメージした事しか具現化できないし、良いイメージを作ることができたら、良い結果を生み出せる。逆もまた然りだと私は信じています。
世界中が圧倒的な格差の拡大、分断と暴力に覆われてしまった今、この先に出現するのがディストピアの暗黒の世紀になるのか、誰もが取り残されることないウェルビーイングを実現するのかは人間の意思と意図によると思うのです。だからこそ、SINIC理論では、人がコントロールされるのではなく、自律する社会を想像しているのだと理解しています。

逆転のパラダイムを認知する

最適化社会が極まる最終年度の今、私たちはどのようにこの時代の変化に向き合うべきなのか、その1つの答えが、SINIC理論に予測された最適化の次にやってくるのが自律社会であるべきだとの強い願望を含めた意思ではないでしょうか。その想像こそが、あるべき未来、人が生きるのに値する社会を創造することにつながるのではないかと思っています。
この大きな変化への適応を具体的に最もわかりやすく示す事例は、人が自ら律す世の中になることを受け入れて、コントロールを手放す組織マネジメントの変容だと思っています。
最近、私の周りでは、パワハラやモラハラ、セクハラによって上位者が部下から糾弾される事例が驚くほど多く発生しています。これは、糾弾される側が変わったのではなく、今まで通りにコントロール思考を持ってマネージメントしていただけだと思います。部下や社員から突き上げられるようになったのは世の中の意識の変化であり、弱き者が力を持ち、権力者は叩かれる逆転現象がその原因です。最適化社会では、エントロピーの法則によって、力の強いものから弱いものに力が移行するのです。
大転換に時代への適応は、まず初めにこの逆転のパラダイムを受け入れること。これができなければ、この時代の荒波を乗り越える事はできないのがあからさまに分かる事例です。

タレンティズムがリソースを創造する

経営者や管理者にとって、非常に悩ましく、やり辛い時代になったように見えますが、逆の視点で見ると、力の弱いものに力が流れて強くなると言う事は、組織全体のリソースが大幅に増大することになります。権限委譲を推し進め、一人一人が持つ才能や資質を開花させ、最高のパフォーマンスを発揮するようになれば、事業所や組織は大きな飛躍、発展を遂げる可能性が高まります。もちろん、無条件に誰もが突然、大きな活躍をできるわけではなく、知識や技術、経験など、必要なリテラシーを身に付けてもらう必要もあります。しかし、そこは人材開発の教育体制を整えることで確実にクリアできます。誰もが持つ才能の開花(タレンティズム)を信じることで、企業や組織は時代に適応するリソースを手に入れることができると考えています。自律社会への移行に合わせて、事業所が自律分散型組織へのシフトを進めるのは時代の要請であり、誰もが、生きがいを持てる社会への成熟につながると思うのです。

well-beingを想像し、創造する

私が代表を務める株式会社四方継は、社員数20名以下の小さな組織で運営しています。こんなちっぽけな会社がコントロールを手放した自律分散型の組織に変容したところで世界に影響を与える事はありません。ただ、これまでの20数年間、職人育成で培ってきた人材育成の仕組みや人事制度、キャリアパスや評価制度などを検証し、現在マイスター育成協会で提供するコンテンツとして全国の職人育成を志す事業所に公開しています。建築業界を中心に少しずつタレンティズム(才能主義)をベースにした自律分散型組織への移行が進み始めています。
地域企業の1社ずつの力は非常に微力です。しかし、地域の経済や社会は、地域の企業で構成されています。また、国は地域の集合体であり、世界は国の集まりであると考えると、地域の小さな企業が共同体となって結束し、自律社会への適応と変容への挑戦を行うの取り組みが広がると、決して無力ではないと思うのです。多くの地域企業が手を取り合って、最適化を誘う逆転のパラダイムを受け入れ、誰もが持つ才能を開花させる教育機関としての役割を果たす様になれば、世界が求める誰1人取り残すことのないウェルビーイングな世の中、世界平和の実現に一縷の希望を持つことができるのではないかと思うのです。
最適化が極まる今こそ、「今だけ、金だけ、自分だけ」の強欲資本主義に染められた考え方を捨て、人が自らを律して、少しでも良い世界を次の世代に継げる時代を想像し、創造する意志を固めるべきだと思うのです。

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自律分散型の人材育成、組織運営を担う人材開発の研修事業、高等学校の運営を行っています。

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