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行けば地球が良くなる旅 in Philippines② パンダノンの離島スラムで井戸を掘る。その意味と意義

フィリピンの島々を巡る6日間の旅から無事帰国。旅の途中でフィリピン諸島でM7.3の巨大地震が起こり、ご心配をおかけしましたが津波や建物倒壊に見舞われる事なく無事に旅を終える事ができました。
旅することで世界の課題を知り、視野を広げ視座を高める。ほんの少しでも社会の解決に取り組む意欲を湧かせる、そして、旅に行った人が何かに気づき、出来れば何かしら課題解決のためのアクションを起こす。
そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。私はその法人の立ち上げ前から相談を受けていたこともあり、もちろん理念に共感して企画されたツアーには基本的に参加することにしています。旅の趣旨はこちら。

主たる目的は井戸堀

今回の旅のメインアクティビティーはセブ島から船で1時間弱離れた離島スラム、水も電気もないパンダノンで水脈調査を行い、人力で掘れる深さの浅井戸を掘ることでした。これが成功して海水ではない真水が得られるようになれば、厳しい貧困の連鎖の中で希望を見失いかけているスラムの人達に一縷の望みが生まれるかもしれないし、ひょっとしたら水が得られない事に起因して行われていない農業が出来たりするかも。
また、珊瑚礁の岩盤になっている高い山のない離島に水脈があるのが確認出来ればフィリピン以外の多くの島にも井戸を作れる可能性が生まれるかもと、過大な期待を持って向かいました。
実は、少し前に滋賀県で井戸を掘ってみたものの思う様に水脈に辿り着けず、意地になって重機を投入するなど結構なコストをかけてもダメで、結局、井戸掘りの専門業者に任せて30m以上の深度の深井戸になってしまった苦い経験を持っており、期待と同時のそんなに簡単に浅い水脈が見つかる訳ではない現実に不安も抱えておりました。

水も電気も薪もない島の現実

給水のインフラが整っていない離島の人々はどのように暮らしているのかを聞いてみると、唯一の収入源であり産業の漁で魚を獲って得たお金でタンクの水を買って持ち込むのですが、水の他にも必需品は数多くあり、全ての飲料水を賄える訳ではありません。次の選択肢は雨水を溜めて飲料水にするとなりますが、煮沸殺菌するにも火を炊く薪が島内に無く、それも島外から購入しないと出来ない。結果、溜めた雨水をそのまま飲む事になってしまっていました。当然、ボウフラや回虫を体内に取り込む事になり、政府が稀に支給する虫下しの薬を飲むと子供達のお腹からバレーボール大の回虫が出てくるとのことでした。食事も満足に得られないのに重ねて、食べた食物の栄養が回虫に吸い取られてしまう現実は衝撃的でした。戦後の日本でも同じような状態だったと聞いた事がありますが、21世紀になった今もそんな暮らしから抜け出せない人たちが多く存在するのがこの世界の真実なのだと改めて体感させられました。

子供達の笑顔の力

そんなパンダノンのスラム出身のJeffと日本人のseikoさんが何とか少しでもこの島の子供達に希望を持たせたいと、島の若者を採用して一緒にNPO法人として活動しているのがゴーシェアです。
漁業以外の産業の無い貧困の島で育った若者は一度島から出ると二度と帰ってこないと言います。ソーシャルビジネスを立ち上げ、島に関わり続けて、パンダノンの若者を採用するJeffは島の唯一の希望だとのことでした。
そんなゴーシェアの方々の熱い気持ちと献身的な活動に触れて、私たちに出来る支援を模索する中で、この度、タビスキツアーでは水脈探しの第一人者と言われる西田稔さんとタッグを組み、パンダノンとボホールの2つの島で井戸堀ボランティアを行うことになり、私も参加する運びとなった次第です。
パンダノンの人たち、特に子供たちには事前に、日本から井戸を掘りに来てくれるよ。と情報が伝わっており、島に船が近づくと大勢の子供達が満面の笑みを讃えて出迎えてくれました。珊瑚礁の島での浅井戸の水脈探しは西田さんでさえ経験が無い中、決して自信満々で上陸した訳ではありませんが、子供達の笑顔を見て絶対に成果を出して帰りたいと全員の想いが一つになったように感じました。

強い想いは岩をも突き通す

島に乗り込んですぐに船着場から歩いて5分もかからないJeffの家の庭で井戸を掘り始めました。すぐに珊瑚が固まった岩がゴロゴロと出てきて、これが深くまで続くならパイプを打ち込むのは難しいのでは無いか?との声が上がりました。しかし、井戸堀メンバーは絶対に掘り進むのだ!との強い意志を持っており、バールで岩を砕いては取り除く作業を渾身の力を込めてやり続け、表層の岩を取り除いた先の砂の地層まで進むことが出来ました。その後、2mほどパイプを打ち込むと岩盤に突き当たり、ハンマーで叩けども全く進まなくなり、もはやここまでか、と一瞬、誰もが絶望を感じたと思います。しかし、地元の若手スタッフのパワフルな活躍と何が何でも水を出したい!との全員の想いが天に通じたか、その岩盤を貫くことが出来ました。強い一念岩をも通す、をまさに体現した瞬間でした。全員が期待に胸を膨らませ高揚感に包まれながら更に掘り進みましたが、次の岩盤が5mの地中に現れました。もはやここまでか、とパイプの中を覗いて見ると、確かに水が溜まっているのが確認出来たのです。

小さな快挙と大きな可能性

調査用のライトに付いていたパイプの中に溜まった水を舐めて見ると仄かに塩分が含まれていました。やはり、浅井戸では真水の採取は難しいのか、と思いながらホースを入れてポンプで汲み上げてみたら白濁した水が上がって来ました。白い成分は多分、珊瑚礁岩盤を粉砕した際に発生した粉末だろうと推測しつつ、その水を舐めてみると今度はなんと、塩味はせずに確かに真水でした。
その結果にその場にいた全員が歓喜!興奮しながら島民達に次々とパイプの中に水が溜まっている様子を見てもらいました。言葉は通じませんが、確かに達成感と高揚感、同じ興奮を共有出来たと感じました。
今回のパンダノンでの井戸掘りはここまで。大した水量を確保出来ていませんし、これで島の人々の暮らしが変わる訳ではありません。私達が大きな貢献が出来たとは思いませんが、山のない珊瑚礁の島でも人力で掘れる程度の浅い場所に水脈が存在するのが確認出来たのは大きな希望になると思います。西田さんは西田式の人力でパイプを打ち込むパイプハンマー等の道具を一式プレゼントされており、今後、島の若者達がその道具を使って次々に水脈を探し当てることが出来れば、必ず島の生活は変わります。その意味では、私達が行った小さな一歩は大きな可能性と希望を手渡せたのでは無いかと思うのです。

目指すべきはインパクトビジネスの創出

とはいえ、今回、一緒に井戸掘りを行った若者達が単純な道具ではありますが、機材を使いこなして、次々と水脈を探り当て、島民が困らないくらいの水量を確保する井戸を設置出来るかというと、そんなに甘くもありません。
地中の水脈は水が出るまでその存在を確定させられないし、少し大きな岩に当たるとそこで掘削作業は止まってしまいます。何としても水を出したいとの強い意志と根気、そして経験が必要であることを考えれば、いくつかの井戸が実用出来る様に継続して支援する必要があると思いました。
元々、私には縁もゆかりもないフィリピンの離島ですし、その圧倒的な貧困の解決に対して私達が出来ることはあまりにも少ないです。関係無いと知らぬ顔を決め込むことも出来ますが、今回、稀有なご縁を頂いて自分の目で見て感じてきたことは、社会課題解決の取り組みを研究、実践を進めている私としては見過ごしてしまう訳にはいきません。単なるボランティアでは無く、持続可能なビジネススキームをつくって継続的な支援が出来るように智慧を絞ってみようと強く思った次第です。インパクトビジネスの種を頂いたと感じています。
つづく。

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人類の幻想と言われている民主主義を実現してみたいと考えて建築、教育、地域コミュニティでの活動しています。

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