13年目の定点観測とその効果性
毎年、年末のクリスマス前後に親しくしている同業者の仲間と集まってゴルフ&山奥の温泉で猪鍋を囲んで語り合う忘年会的な集まりを続けています。今年で13回目、13年間も継続するとこれが終わらないと年が越せない的な恒例行事になっており、1年間の振り返りと、新しい年に向けての決意表明的なコミットメントを参加メンバーが順番に発表するのを聞くのがすっかり年の瀬の恒例行事になっています。当初から意識していたわけではありませんが、毎年続けているうちにいつの間にか仲間の行っている事業や人生の定点観測の場になっており、また自分自身の人生も俯瞰できるとても良い機会になっています。
適性生存の法則
10年以上の年月が経つと、30代の若手経営者も中堅どころのいい年になり、40歳そこそこで元気いっぱいイケイケの若手経営者だった私はもう50代半ば。社内外に引退を明言している60歳まであと5年となり、本格的に事業承継を考える歳になりました。参加メンバーの発表を聞きながら、それぞれが時代の移り変わりに合わせて事業を変化変容させながら適応し生き残って来たのだと強く感じました。生物学で種の存続は適応力に由来すると言われますが、事業もまさにそうなのだと思うと共に、その変化も一様ではなく、皆がそれぞれバラバラで自分の個性や特性に合わせながら新たなチャレンジに取り組んで来られたのを聴くと時流を読むための外向きの情報収集やインプットもとても大切ではありますが、そればかりでなく、足元を見る内向きの取り組みや分析が非常に重要なのだと感じました。
リアル・シミュレーション
13年目の定点観測で強く感じたのは、事業規模や業態も様々なメンバーが集まっていても、それぞれが事業の再構築に取り組んでこられたし、今も取り組んでいると言うことです。時代やマーケットの変化に合わせて適応するためには数多くの事例を知っているに越した事はありません。その意味においては、毎年同業種の同じメンバーで集まって1年の取り組みを総括する情報交換の場は非常に効果的で有意義な時間だと感じました。特に、コロナ以前と現在とでは収益モデルが逆転する現象が少なからずあり、以前からの流れを知っている者だけが時代の変遷を俯瞰して見れると思いました。良いことも悪いこともまとめて自社の事業内容を赤裸々に語ってくれる仲間に感謝することしきりです。
リテラシー格差の顕在化
最近、私がとみに感じているのは、経営者のビジネスリテラシーに大きな格差が広がっているということです。リテラシーとはそもそも読解力と直訳されますが、情報社会の現代では溢れかえる情報を正しく理解して応用する力として使われています。世界が大きく変わり、これまでの常識、既存のビジネスモデル通用しなくなった今、根本的な価値観や世界観の転換を余儀なくされたと強く感じている経営者とその大きな変化に気付かない、もしくは変化そのものに目を伏せる人が明確に分かれている様に感じます。例えば組織の在り方一つにしても、建築業界は圧倒的にトップダウンの事業所が多い業態でしたが、従業員の主体性や個性を生かしたボトムアップ式への転換を図る経営者は少なくありません。と言うよりも、仲良くさせてもらっている経営者は殆どがそうで、ヒエラルキー型の社会構造の終焉を皆さん予感されています。しかし、その一方で私がリーダーシップチームの複数のスタッフに対して事業承継の取り組みをしていると話すと信じられない!という反応をされる経営者も少なからずおられます。完全に情報、もしくはリテラシーの格差が広がっていると思うのです。
定点観測出来る環境
もしくは、行き過ぎた資本主義が多くの深刻な社会課題を生み出してそれを解決出来ないばかりか、トマ・ピケティが研究成果を発表した様にそれらの問題は加速して大きくなっているのは日本に限らず世界中で認知されつつあり、だからこそ国連で持続可能な社会への目標を定めようとSDGsが採択されています。しかし、スクラップ&ビルドではなく、過剰な需要を生み出すマーケティングでもなく、持続可能性を指針としたビジネスモデルを構築するべきとの認識を持つ建築事業の経営者は全体的に見れば未だに極々少数派です。原理原則に基づいた古典的マーケティング理論では定石である「事業は社会課題解決の為にある」との認識さえ理解していない経営者が圧倒的多数派の建築業界の実態は非常にマズイと感じますし、結局、それは同業他社と自社の定点観測をする機会を持っていないのがその一因では無いかと思うのです。そんな観点から見れば、私は(偶然ですが、)とても恵まれた環境にあると思うし、いい仲間に恵まれたと心から思っています。長年、心やすく付き合ってくれる仲間達に感謝していますし、(いつまで続くかは分かりませんが)お互いに刺激を与えながら切磋琢磨出来る関係を続けて行きたいと思うのです。
___________________________
四方良しの持続可能な世界の実現に取り組んでいます!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?