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バリューチェーンを再定義する

昨年の夏ごろから経営実践研究会と言う経営者の団体に加入するようになり、50代も半ばになって若干、今更感もありますが熱心に勉強させてもらっています。そこには、本業を通して社会課題を解決するとの熱い志を持って経済と道徳の両立を実践される方が数多く集まっておられます。また、田坂広志塾長を始めとしてあらゆる分野の日本の最先端を牽引されているトップランナーの方々がアドバイザーとして名を連ねており、研修会やイベント事に足を運ぶたびに、目から鱗を落とす連続で、これまで自分が志してきた事業を根本から見直すきっかけをいただいています。毎週開催される藤岡会長を交えてのミーティングも非常に示唆に富んでおり、素晴らしいご縁をいただけたことに感謝することしきりです。つい昨日もはっと気づかされることがありました。

競争優位の戦略自体が化石

「バリューチェーンって何かわかるか?」オンラインミーティングの最中に突然藤岡会長が質問されました。使い古されたビジネス用語で「価値連鎖」と言うふうに訳されるのは知っていて、多様性多極化の顧客ニーズが細分化された時代に適応して顧客から選ばれる価値を創造するにはサプライチェーンの構成から見直してコストと品質、そして希少性を高める努力が必要だと言う文脈でよく使われています。ウィキペディアを引くと非常に有名なマイケル・ポーターの著書『競争優位の戦略』からの抜粋があったので以下に転載します。


ポーターはバリュー・チェーンの活動を主活動と支援活動に分類した。主活動は購買物流 (inbound logistics)、オペレーション(製造)、出荷物流 (outbound logistics)、マーケティング・販売、サービスからなり、支援活動は企業インフラ、人材資源管理、技術開発、調達から構成される。

バリュー・チェーンという言葉が示すとおり、購買した原材料等に対して、各プロセスにて価値(バリュー)を付加していくことが企業の主活動であるというコンセプトに基づいたものである。(売上)-(主活動および支援活動のコスト)=利益(マージン)であるため、図示した場合にはバリュー・チェーンの最下流にマージンと記載される。

主活動の構成要素の効率を上げるか競合他社との差別化を図ることで企業の競争優位は確立するとした。

なお、バリューチェーンが企業の競争優位性をもたらす理由は、企業内部のさまざまな活動を相互に結びつけることで、市場ニーズに柔軟に対応することが可能になり、結果として顧客に価値がもたらされることに求められる。つまり、コストリーダーシップ戦略をとるにせよ、差別化戦略をとるにせよ単にそれを引き出す為の個々のシステムを独立して構築するのではなく、それらを上手く連結させ「果たして企業全体としてこれらの戦略が実際に達成できるのか?」を考える必要があるのである。
出典:ウィキペディア

競争戦略の陳腐化

このマイケルポーターの書かれたバリューチェーンの定義を見ると、前提条件が今の時代と大きく変わっていることに気がつかされます。コストリーダーシップ戦略とはヒエラルキー構造で強い者が弱い者を押さえつけ、結果コスト圧縮してバリューを生み出す強欲資本主義的思考であり、差別化戦略は顧客体験を省みる事なくプロダクトアウトで価値を押し付ける古い思想に立脚しています。藤岡会長が再定義するべきだと着目されたのも大いに納得した次第です。

SINIC理論

世界が変わったことの認識

今の世界は50年前にオムロンの創業者立石氏が予言したSINIC理論の通り、共感を軸に循環する最適化社会へのうねりの真っ只中だと言われています。コロナで世界の物流は止まり、世界同時リセッションに陥りました。アメリカや中国から波及したインフレは世界中を巻き込みつつあり、海の向こうでは戦争が起こっています。これまで資産だと言われてきたお金は非常に不安定なものになり、これからは目に見えない資産、信用や信頼、知識や経験、関係性などが重要視される時代に移ろうとしています。そんな時代の大きな転換期を迎えた今、前時代的な思想で価値を生み出す本体であるバリューチェーンを捉えていると完全に時代から取り残された事業になってしまいます。

経営実践研究会リーダーミーティング

価値の循環をデザインする

「バリューチェーンって何かわかってるか?」の後に藤岡会長が示されたその新しい定義は、「価値創造の連帯であり、価値を消費する場でもある」と、全く新しい視点で、循環する経済へのシフトを示唆されました。そして、バリューを金銭以外(ありがとう、感謝)で(サプライチェーンに)還元出来るようになると川上から川下まですべてのステークホルダーの思考が損得勘定だけで判断している現状から変わりバリューの循環が起こり始めるとの事でした。生産者の顔が見える農作物をイメージすると分かりやすいですが、私たちが取り組んできた建築事業も作り手の大工が直接顧客の担当として前面に出て行きますし、協力業者の職人さんも着工前に顧客に紹介しています。工事を終えた後のアンケートなど、顧客からのフィードバックも作り手に伝わるようにすることで工事品質は確実に上がったと感じています。顔の見える生産、消費者の喜びが分かる消費がいかに重要であるかを実際に肌で感じているだけに、藤岡会長の再定義の話は非常に納得感のあるものでした。

再定義を習慣化する環境

今回の、バリューチェーンの最低限の学びは随分と大きな気づきがありました。ステークホルダー資本主義と言う名前が取り沙汰されるほど関係資産に着目されている今の時代において、自社単独で生み出す価値に囚われてリソースのブラッシュアップを懸命に行ったところで所詮中小零細企業に大した経営資源は生まれませんし、手に入りません。様々な人や事業所と連携を深め、協働することで一社ではできない価値の創造が叶うのは自明の理。同じ価値観、近い志を持った数多くの仲間と共に学び共に実践を積み重ねるまだこれからは必要だと痛感した次第です。時代の変遷を敏感に感じながら、これまでスタンダードをされてきたあらゆる概念を再定義しなければならないと改めて感じましたし、そんな危機感を持って新しいチャレンジをする方々と共に学びたいと思います。仲間を絶賛募集中です、少しでも気になったらお気軽に私(高橋)までご連絡ください。(^^)

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経営実践研究会の兵庫定例会で新しい職人学校構想についてリリースのプレゼンテーションやります。ゲスト絶賛募集中です。

志を中心にした実務者向け研修を行ってます。

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