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原理原則を運用するための4つの力

高い理想や志を掲げて、その実現を目指すことで現実とのギャップが生まれ(認識し)、課題や問題が生み出されます。逆に、目指す高い目標がなければ何の問題も感じないまま目の前のことを流される様に片付けるだけになる訳で、そう考えればたくさんの問題を意識し、抱えて悩んだり苦しんだりされている人は(大変でしょうが)素晴らしいと思います。そして私の周りには、非常に高い問題意識を持っておられる方がたくさんおられ、皆さん様々なチャレンジを繰り広げられています。そんな志高い人たちを見ていて、成果に結びついている方と、残念ながらそうでない方の間に明らかな違いがあると感じています。それは、成果を手にする人は原理原則の力を使っている、逆も然りです。

原理原則が共感経済を生む

新規事業やプロジェクト、組織作りなど何か新しく事を成すには周りの人からの協力が不可欠です。人が1人でできる事はたかが知れており、できるだけ多くの同じ志を持った人と共に進めることで理想が現実になる可能性が高まるのは誰もが知るところだと思います。そして多くの人に共感を得て応援されるには出来るだけ多くの人から同じ価値観や世界観だと感じられるべきなのも自明の理、これが誰もが当たり前だと思う原理原則に則って取り組みを進めれば成果に結びつきやすい所以です。行き過ぎた強欲資本主義が多くの社会課題を生み出し、現在の経済偏重の枠組みの中ではそれらの多くは解決不可能だと言われます。人類は三方よしに表される持続可能な共生の経済に移行すべきフェーズに差し掛かっていると言われますがそこで重要視されるのが『共感』です。人はそれぞれ違うパラダイムを持って生きています。しかし、誰もが口を揃えて賛同する、共感することも沢山あります。人に協力して貰うにはその部分をしっかり押さえるべきだと思うのです。

原理原則の基本

誰もが異を唱えない、皆が賛同してくれる価値観は、多く古来からの諺や格言として現代に受け継がれています。千里の道も一歩から、種子を撒かずして芽は出ない、チリも積もれば山となる、等々、当たり前のことばかりですが、現在では耳に馴染み過ぎて大切にすべき概念として気にも留められなくなっています。そんな中、経営の神様と言われるドラッカー博士は「真摯さこそがリーダーの最も重要な資質である」と言い切られ、洋の東西を問わず世界中のどんな国でも真摯な態度、そんな取り組みは美しいと賞賛され尊敬されるとその著書に書かれています。中国の古典「孟子」にも至誠にしてして動かざるものはあらざるなり。と同じ文脈で書かれているのはつとに有名で、最も分かりやすい原理原則の例だと思います。そして真摯さ、誠実さの一丁目一番地は先ず自分との約束を守る事、自分で決めた計画を実行する事であり、約束を守れる計画を綿密に立てる真面目さがその実行を支えます。これが原理原則の力を使う第一歩であり、誰にでも必ず出来るし皆が生まれつき持っている能力です。

自然の摂理で稲穂が実る

原理原則を運用する4つの力

真摯さと誠実さの原則の力を表出して最大限に活かせる様にするには4つのステップを意識して行動に落とし込むのが効果的だと考えています。もちろんこれも原理原則論に立脚した組み立てであり、取り立てて珍しくも目新しくもありませんが、概念は細分化する事で理解が深まったり、とっつき易くなったり、チャレンジへのハードルを下げる効果がある、そして原理原則は仮説と検証の繰り返しではなく、やればやっただけ当たり前に成果に繋がるもの。そんな原理原則を使うステップの4つの力を以下にご紹介しておきます。

①信じる力

論語、陽明学でこの世の中を良くしていくための根本的価値観として扱われている「致良知」は人は生まれながらにして、学ぶ事も慮る事もなく良き心を持って(知って)おりそれを表出、発現させることによって人から尊敬されたり共感されたり、それが集まることで世の中が理想に近づく、平和な良き世界になるとされています。井戸に落ちようとしている子供を見たら誰もが無条件で助けの手を差し伸べる、孟子はその誰もが持つ良き心を惻隠の情と著しました。人を助ける姿を見て嫌な感情を持つ人はいません。そんな人を応援したい、協力したいと思うのが人の情、誰もが本来持つ良き心を行動に表すことができれば大きな力を発揮することができます。人と交わるのも、自分自身との約束を守るのもまずはこの誰もが持つ大きな可能性、良知を信じるところからではないかと思うのです。

②計画する力

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」とは孫子の兵法の有名な一文です。事業をシンプルにまとめると計画と実行に集約されますが、計画の質が高い事、無理なく実施可能で持続性があり、その計画を遂行する事で人の幸せに寄与できる詳細で綿密な計画が立てられれば、事業は成功したも同然です。そんな計画を立てる入り口はやっぱり先ずは自分を知る事からです。もちろん、対象に対しての目標達成のアプローチ方法を考える事は重要ですが、その前に自分の持つ影響力やポテンシャル、計画を目標通りに達成し成功させられる状態にあるかどうかを冷静に見極める力こそが重要です。これがすべてを計画の元になるからです。要するに、計画はまず自分自身の状態を整えるところから組み立てなければならないと言うことになります。この整える思考こそが計画を実行可能にする、原理原則に則ることになるのです。

③行動する力

いくら詳細な計画を立ててみたところで、行動に移せなければ一切の意味は無いのは当たり前のこと。そして人生は予測不可能なことがたくさん起こるものです。少し残念ではありますが、計画は必ずと言っていいほど狂いが生じるもので、そのたびに修正が必要です。行動と言うのは当初の計画の際に立てた目標を達成し、目的を叶えるためのもので、その軸をしっかり持って必ず起こるイレギュラーに臨機応変に対応しながら目的に向かって突き進む方向性が必要です。計画は狂いが生じるもの、それが目標達成を阻むとの前提を考えれば、できるだけイレギュラーが起こらないように普段から状態を整えることこそが結局、重要になります。原理原則に照らせば行動する力とは単発のものではなく、状態を整える習慣に落とし込んでこそ効果を表すものと言うことになります。

④継続する力

行動する力とは結局、目的を見据えて状態を整えられるように習慣に落とし込むことだと書きましたが、大きな目標を立てれば立てるほど、一朝一夕で達成することがないのは当たり前。3年、5年、10年単位で長期間取り組んでこそ漸くそこにたどり着くのが現実であり、そこまで行動(習慣)を積み重ねることができれば、当然、地力が備わり様々な状態が整います。あらゆる成果は状態に由来するとの原理原則に正面から向き合うと言う事は、決めたことを何年にも渡って継続する力を身に付けると言う事でもあります。状態管理の鬼と言われるイチロー選手は「習慣を継続するにはモチベーションの根源が必要だ。」と言われました。その根源は人によって様々ですが、私は自分の為だけに向けた目的ではそんなに長く継続することは難しいと思っています。世のため、人の為と書くと陳腐ですが、少しでも世の中を良くして次の世代に引き継ぎたいとの志こそがモチベーションの根源になると思っています。吉田松陰先生が言った通り、志をもって万事の源となると思うのです。

オレの実践哲学

以上の原理原則の運用法は大工上がりの全く経営の知識などもっていなかった私がこの20年間、なんとか頼るべき軸というか、拠り所を探して学びと実践を繰り返してきた結果、辿り着いた現時点での答えです。何ら目新しくも斬新でもない当たり前のことの積み重ね、組み立てではありますが、世の中は意外にシンプルに出来ていて、原理原則、自然の摂理から外れるものは長続きすることはなく、短期間での大きな成長は見込めないにしても、持続、継続することに価値を置くならば、志を高く掲げて、地道に自分との約束を守り、状態を整える計画を推し進めることが目的に近づいていく唯一の道だと考えて実践してきましたし、今も道半ばでそれらの取り組みを続けています。私の周りにおられる良き心、大きな志をもって熱心に事業に取り組まれておられる方々に少しでも参考になればと思い、まとめて見ました。何かのお役に立てれば幸甚です。

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実践哲学を建築実務者に伝える研修を行っています。


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