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世界は上っ面と損得勘定で成り立っている。のは残念すぎる錯覚 #日本貧困化の最大の理由

私は神戸の西の端っこで建築事業と地域コミュニティーサービスを行う株式会社四方継と、全国で建築実務者向けの研修、職人育成、人事制度などの組織改革のサポートを行う一般社団法人職人起業塾の代表を務めています。その他にも、3つの会社の社外顧問を務めており、それらの全てに共通する私の仕事の中心は人との対話です。今日は毎日、多くの人と話す機会がある中で、以前からずっと感じてきたそこはかとない違和感についてまとめてみたいと思います。

人生の、仕事の目的は何だ?

現在、株式会社四方継では四半期に1度の個人面談週間の真っ最中で、毎日のようにスタッフと腰を据えて話し込む時間を持っています。また、現場改革担当の社外顧問として就任している顧問先の3社のスタッフ10人と毎月1時間程度の1to1セッションを行っており、今月は30名近くの人と、今抱えている課題や問題、目標や未来に対するアプローチについて話す時間を持つ予定です。話す内容は人それぞれではありますし、目の前の課題を解決するための具体的な方法論を探ったり、アドバイスを行ったりもしますが、全体を通して常に一貫して意識しているのは「目的は何か?」と言う根源的な問いです。「何がしたいん?」「なんのために?」等の問いに対する答えが明確にある人ほど抱えている問題は深くなく、容易に解決への道筋が開けます。逆に、そこに向き合っていない人は、シンプルな問題もこねくり回し、まるで迷路に迷い込んだように同じところをぐるぐるとさまよってしまいがちです。
そして、私がずっと感じてきたのは、人生の、またその多くの時間を割く仕事の「目的」に対して向き合う機会がない人があまりにも多いということです。

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志を以って万事の源と為す

昨年話題になった故三浦春馬さんが最後に主演した「てんがらもん」と言う映画の中の主人公の五代友厚さんのセリフで「地位か名誉か金か、重要なのは目的だ」との一節がありました。アメリカ発の世界を良くするアイデアを共有するプレゼンテーションイベントのTEDで非常に人気を博したサイモン・シネックの“Start with why"は、なんのために?から始めようと優れたビジネスモデルを確立した企業は理想の世界を追い求める意図を明確にすることからスタートしたと分析しました。世界で最も読まれたビジネス書の「7つの習慣」では冒頭に「目的を持って始めよう」との言葉が踊っていました。明治維新に無血革命を起こした原動力になったと言われる松下村塾を率いた吉田松陰先生は「志を以って万事の源となす」と全ての根本は理想を掲げる意図にあると若者たちに激しく人生を、命をなんために使うのかを問いかけました。良き意図を持つ人こそ、良き世界を作るし、そこに人も金も集まる。論語にまとめられた孔子の時代から綿々と繰り返し言われ続け、伝えられてきた意図の重要性、原則論は人間の営みの中の一つの真理として受け継がれてきたように思います。にも関わらず、それに正面から向かい合い、自分なりの答えを見出している大人があまりにも少ない事実に愕然とします。

未来から目を逸らす

ここまで、まるで自分は明確な意図を持って人生に向き合っている的に、偉そうに書きましたが、実のところ私が人生の目的について考え始めたのは高々20年ほど前のことで、それまでの30歳くらいまでは、今だけ、金だけ、自分だけ良ければそれで良いという刹那主義と言っても過言でない利己的な人間でしたし、ロクでもない生き方をしていました。たった一度きりしかない人生がなんの意味を持つのかなどしっかりと考えた事もなく、その場が楽しければそれで良いとばかりに未来に目を向けることから逃げていたのは、未来を描く力が無かったのと無関係ではありません。そして、将来に対する責任を背負う勇気を持っていなかったのが大きな理由だったように思います。そんな私でも、守るべき家族が出来て、人生を預けてくれる社員が増え始め、漸くこのままではダメだと責任を全う出来ないことに気づき、まずは安定した暮らしが出来る稼ぎを持続できるようにとどうしたら金儲けできるのかを学び始めました。
さまざまな本を読んだり、研修やセミナーに脚繁く足を運ぶ中で気づいたのは、何を読んでも、誰の話を聞いても、根本的な部分は同じことを言っているという事でした。それこそが原理原則であり、信頼できない人に人も金も集まる訳が無いという当たり前すぎる理屈でした。

信じられる者が儲かるべし

「儲」という字は信じられる者と書きます。文字通り、信頼こそがビジネスのスピードと質を高め、持続可能な仕組みを構築する根本にあり、豊かな暮らしを手に入れるのも、世の中を良くするのも、諍いを無くすのも、全て信頼を軸にすることで叶うし、その軸(信頼性を高めること)であらゆる解決の方法が見えてくるとの単純明快な理論は多分、世界中の人が知っていると思います。そして信頼はあやふやなものではなく明確な4つの核から構成されます。その4つの核とは「誠実さ」「意図」「力量」「結果」であり、いくら実力を持っており結果を出し続けてきた人でも人から共感されない悪い意図を持っていれば信頼されることはありません。逆に、真面目で嘘をつかない、熱く理想を語る人でもなんの技術も知識もなく、失敗ばかりを繰り返していたら信頼されることはなく、誰も寄り付かなくなります。4つの核の全てを一定以上のレベルでクリアできて初めて信頼できる人だと認知されるわけで、勉強や鍛錬を繰り返し力量を高めたり、そこから導き出される結果は時間と共に身に付きますが、誠実さと意図は外向きの努力ではなく、自分の内面を内観することでしか得ることは出来ません。当然のことですが、儲けるには人から共感され、応援されるような良き意図を持つことが不可欠で、これがマーケティングは在り方を見つめるところからと言われる所以です。

働く意図を考えない人達

とにかく、誰もが知っているし、その通りだと言う簡単な理論を実践するにはまず初めに自分自身の意図について正面から向き合う必要があります。発注する側の立場から「なんのために働くのか?」と問われて、「金のため」とか「贅沢するため」「老後の安心のため」「家族を養うため」と答えられると価値観は金になり、注文先に対する印象というか期待値は「安けりゃいいや。」となります。何社も相見積もりをとってビジネスライクにドライに安いところを選択する世界観になります。しかし、「誰もがハッピーになれる様に」とか「四方良しの世界の実現のために」とか「持続可能な地域社会、地域経済を作るために」などと言った良き意図を持って、それが行動で伝われば、ユーザーは少々コストが高くても高い志を持った人と組みたいと思うのは人の常です。先日のnoteでもソーシャルバンクの例を紹介しましたが、現代社会でそれは加速度的に認知が進んでいます。

とにかく、良き意図を持つ事は社会人、職業人として初めに取り組むべき最重要事項だと思うのです。
しかし、殆どの人が自分が働く意図について深く掘り下げて考えた事もなく、その機会を与えられていないのが現状で、原理原則で世界は回っているという事実に気づきもしないまま年齢を重ねてしまいます。非常に由々しき事態というか、私にすれば不思議でしょうがありません。

日本の貧困化の最大の理由

人生の意図、仕事の意図に向き合わないまま、仕事を続けて年齢を重ねていると、世の中はそんなものかとの固定観念に縛られるようになります。しかし、古来から世の中は上っ面の取り繕いや誤魔化し、損得勘定だけで回っている訳ではなく、今だけ、金だけ、自分だけ良ければそれで良い人の所には誰も寄り付かなくなり必ず廃れてしまいます。そして情報革命が起こった現代では、今まで誤魔化せていた事も全て白日の元に暴かれてしまいます。善なる意図を持った人に仕事も金も集まるのは歴史が繰り返し証明し続けているのです。この20年間の統計で日本人の所得はマイナスになったと言われます、そこにはさまざまな理由はあると思いますが、私は、戦後の植民地から這い上がり、高度成長からバブル期を経て世界ナンバー2の経済大国になるまで、奇跡とまで言われた世界でも類を見ない圧倒的なスピードで急成長を果たした日本人は物質的、金銭的な価値観にあまりにも囚われすぎて目先で金儲けする「やり方」に血道を上げて、道徳だとか、人の道と言われる倫理観、宗教観などを軽視しすぎたのではないかと思うのです。社会全体の人心も教育も一番重要な社会は人と人との信頼で成り立っているという原理原則を大事にして来なかったツケが根強く残ってしまったのではないかと思っていて、このままでは日本はどんどん稼げない、貧乏な国になってしまうのではないかと危惧しています。せめて、私の身の回りにの若者には、善き意図を持たずして豊かな暮らしは手に入らないことを丁寧に、しつこく、そして熱く語り続けたいと思っている次第です。目を覚ませ、世界は上っ面の誤魔化しで作られているのではないんだよ。と。

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熱く、真理を伝え意図を考える研修やってます。



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