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中小企業悪魔のサイクルと知的資産経営報告書のススメ @知的資産Week 2022

先日、全国行政書士会の近畿方面のイベント、知的資産経営week2022に実践事例企業として参加してきました。基調講演に登壇された大学教授の講演は本来の趣旨から少し外れているように感じるお話で、中小企業の事業承継が如何に難しく、上手くいっていないかとのデーターを散々紹介されて暗澹たる気持ちになってしまいました。私にすれば現在、懸命に事業承継に取り組んでいる真っ最中という事もあり、決して光が見えないわけではないと思っています。以下に反論という訳ではありませんが、私たちが実践している事も交えて中小企業の事業承継について書いておきたいと思います。

中小企業の悪魔のサイクル

その講師の教授が紹介された「中小企業の悪魔のサイクル」は確かにデーターに基づいた知見なのかも知れません。しかし、ビックリするくらい厳しい目を覆いたくなる様な現実を如実に表していました。そもそも中小企業には大したリソース(経営資源)が無い、との誰もが認める事実から出発して悪循環が加速すると言い表されました。そんな悪魔のサイクルは以下の通り。


経営資源の不足→営業力不足→弱いブランド力→販路開拓難→売り上げ低迷→再投資不足→経営資源の不足→開発力不足→提案力不足→採用難→後継者問題→経営資源の不足・・・・

まさに悪魔のサイクルです。トマ・ピケティの金融資本主義が格差を拡大させ続けるとの資本論よりもっと残酷で深刻な現実を詳らかにされており、誰しもが薄々は感じているけど、ここまではっきりと研究者の方が中小企業の抱える弱さを口にされたのを聴くのは初めてでした。これでは当然、事業承継がスムーズにできるわけもなく、大半の中小企業では経営者が引退する年齢に差し掛かっているにもかかわらず、全く事業所内の準備ができていないと言うデータも同時に示されました。講演の締めくくりで少しは明るい材料が示されるかと思いきや、結局それも無く、為す術もなく死ねと死刑宣告されたような気分に陥りました。

先進の若手酒造メーカーの挑戦

知的資産経営Weekでの登壇

私が代表を務めている株式会社四方継では2年前に創業20周年を機に社名と共に事業ドメインを大きく変えるリブランディングを行いました。それまでの暮らしづくりに焦点を合わせた建築会社の枠を取っ払い、地域課題の解決に取り組むコミュニティ企業へとシフトして、より深くご縁を頂いた地域の方々との連携を深め、私達に出来る限りのサポートをしていくとのコミットメントを行いました。その取り組みを多くの人にご理解頂ける様にと、現在、2回目となる知的資産経営報告書を作成しています。折しも経産省が音頭を取っている知的資産経営weekに重なったということでこの度、全国行政書士会の近畿方面のイベントで運用事例として登壇の機会を頂いた次第です。第一部の事業承継についての基調講演の後、古くから兵庫県の一大産業である酒蔵の若き経営者2人による事業承継の事例と中小企業が持つ資産を生かすことで成功された第二創業の事例をパネルディスカッション形式で発表されていました。私が登壇したのは第三部で、第一部、第二部の流れを汲んで知的資産と事業承継について、知的資産経営報告書の内容をご紹介しながら話させて貰いました。

株式会社四方継 知的資産経営報告書

小さな会社だからこそ持つリソース

上述の教授が示された悪魔のサイクル通り、中小零細企業には圧倒的にリソース(経営資源)がありません。所有特許もなければ、卓越した技術も設備もありません。少々目新しいデザインやサービスを開発したところで全ての情報をWeb上に晒してしまう今、それらはあっという間に陳腐化して埋もれてしまいます。そんな環境の中、もしリソースとして認められるとしたらそれは「ひと」しかないと思っています。そして、そこに「ひと」がいる効果性を最大限発揮すれば十二分に戦えるとも思うのです。小さい会社の特徴でもあり、特性は小さいが故の柔軟さと細やかさです。顧客に近い存在で寄り添い、顧客接点で担当者が顧客に提供する価値の最大化を考え、顧客の立場に立って物事を考え、その気づきを行動に移すことができれば、圧倒的な信頼関係を構築することができます。事業における最も重要なリソースは「信用と信頼」だと言われますが、それは小さな会社ほど得やすく、それが属人的な単なる特徴ではなく、構造化された仕組みになっていれば、その事業所は高い持続可能性を持つ企業になりますし、悪魔のサイクルから抜け出すことができる、それを見える化するのが知的資産経営報告書であると、強い口調で話させて貰いました。

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事業の構造

知的資産経営報告書作成のススメ

上記の図はこの度の知的資産経営報告書の中で作成してもらった構造資産を建築物に準えて分かりやすくまとめたものです。建物を支える基礎の部分には起業した時からの志の変化と視座の変容を積み重ねており、事業の成長と発展と共に少しずつ解決すべき課題の対象が広がり、それに歩を合わせる様に構造資産を蓄積し、倒れにくい構造を作ってきた様を表しています。まず志があり、その上に人的な資産を積み重ね、組織としての構造資産、収益の元になる関係資産を形成して存在意義であり、私たちが目指す世界観を表した理念でもある事業の目的を支えている図になっています。
普段のひとつ一つの業務がこの全体的な構造の柱を支える活動であり、それぞれをブラッシュアップし続けたことで現在の株式会社四方継が成り立っていることがひと目でわかる非常に素晴らしいモチーフの集合体だと思っています。中小企業でも全体の構造を確かめながら必要なファクターを固める取り組むを行うことで、悪魔のサイクルから脱出できると私は考えています。こんな自分自身の体験から、社内に内包する暗黙知を見える化する取り組みである知的資産経営報告書の作成に取り組んでみられることを全ての事業者に強くお勧めします。

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志を実現するために事業に取り組んでいます。

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