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冥利に尽きる 〜幸せと役割の深い関係性〜

人の幸せとは?を追求し、明らかにする試みは人類の歴史が始まってからずっと変わらぬ根源的な問いです。あらゆる人の営みは究極、幸せを求めて行うものであり、それが大きな目的である事は間違いありません。ただ、幸せの形は人それぞれで定まったものがなく、非常にあやふやで曖昧な観念だけに誰もが明確な答えを持たずにいるように思います。最近になって私が感じているのは、人類にとって最大の発明と言われる役割と幸せは深い関係があるのではないかと言うことです。人は人と関わってこそ人、社会性と切り離すことができないからです。

自己実現と他者貢献

マズローが提唱した人間の5段階欲求の最上位にあるのは自己実現だと定義されました。心理学の大家アドラーはその先に他者貢献が存在して、そこに人の幸せがあると言われます。この自己実現も他者貢献も役割に深く関わっており、役割を持っているからこそ認知されるものではないかと思うのです。人は役割を全うした時、冥利に尽きると自己肯定感と達成感、幸福感を同時に表す言葉を使います。誰しもがいくつもの役割を持っており、それを全て果たしたときに至上の幸せを感じるのではないかと思うのです。

幸せは冥利にあり

そして、冥利と言う言葉は仏語
で、「仏菩薩が知らず知らずの間に与える利益」を指しており、転じて、人が知らず知らずの間に、神仏や他人などから与えられる福利・恩恵として使われているように、消して自分1人で手に入れるものではなくて周りの人との関係性によって与えられるものだと考えるべきだと思います。自分に与えられた、もしくは自ら引き受けた役割を全うすることによってその成果が回り回って自分のところに還元されることで人は大きな幸せを感じるのだと思うのです。ここ最近、それをリアルに体感する出来事が私の周りにいくつかありました。

大工経営者冥利

1つ目は、2年前にリブランディングとして20年間親しんだ社名まで変更し、事業ドメインを変えて取り組んだ事業再構築のいくつかのテーマのうちの1つが形になったことです。社会課題解決型モデルへのシフトを明確にしたその試みでは、職人を正規雇用した技術者集団として新たな価値の創造に取り組み、自社大工がものづくりの本質に向き合い、現場での知見を蓄積した者だけができるディティールにこだわった提案を設計前の打ち合わせ段階から関わって住まい手と作り手が同じ目的を共有する住まい作りを行う。との方向性を打ち出しました。大工がデザインまで口を出し、提案するのは決して簡単なことではなかったのですが、プロダクトを担当する大工の大ちゃんが自邸を完成させたことでそれが一気に現実化しました。自分で自分の家を建てる、しかも性能やデザイン、ディティールを熱心に勉強して誰に見られても恥ずかしくないようなかっこいいものづくりをしているのを見て大工経営者冥利に尽きたと感じました。詳しくはこちら、

建築屋冥利

2つ目は、昨日滋賀の瀬田川の川べりに立つ新築物件でお引き渡しのセレモニーを行った際にオーナー様に非常に喜んでいただけたこと、そしてお引き渡しの手続き終了後、瀬田川沿いの料亭で屋形船での宴会を手配頂き、本来私たちが行うべきなのを逆に心づくしのおもてなしをいただけたことです。担当した大工と設計者のスタッフとともに川の上を滑るように船で走りながらおいしい食事と美味しいお酒をいただく時間は正しく至福の時間でした。また、これまで何度も繰り返し建築のご注文をいただけただけではなく、今後の事業展開にも深く関わって一緒に手伝いをしてもらいたい。とのオファーをいただけたのは本当にありがたく、建築屋冥利に尽きました。オーナー様はもちろんの事、丁寧に仕事を進めてくれたスタッフに対してもいくら感謝しても感謝し足りません。

冥利に尽きる

3つ目は、そのオーナー様が新たに立ち上げる事業のロゴが入ったTシャツを制作されていて、それを頂けたことです。それは、単にオリジナルロゴが入ったかっこいいTシャツをもらえただけではなく、バックプリントされた登録商標が私が揮毫をさせてもらった字をデザインして採用頂いておりました。10数年にわたってコツコツと書道のお稽古に勤しんできた私としては、こんなに光栄で嬉しい事は他になく、道を目指す者として正しく冥利に尽きると甚く感じた次第です。10年以上にわたって書道や茶道のお稽古を続けてきたのは自分自身の内面の弱さを克服し、鍛えあげる事が主たる目的でした。誰かのお役立ちに立てるために続けてきたわけでなく、役割を意識しなかったにもかかわらずこのような重要な役目を担わせてもらえた上、その事業に関わらせていただけると言うのは冥利と言う言葉が表す周り回って与えられる恩恵に他なりません。最高に幸せな瞬間でした。

幸せは役割にあり

人類最大の発明と言われる役割は、生まれながらに背負った役割、自分から取りに行く役割、そして、自己研鑽や修身を整える取り組みの中で自然と備わってくる3つがあるといいます。上述のエピソードは何れにしてもその責任を果たし、達成したところに人の幸せは確実に存在すると改めて感じさせる出来事でした。ぼんやりとつかみどころのない幸せは誰しもがいくつも持っている役割を意識してみることで見えてくるのかもしれません。そう考えれば、役割が多ければ多い程、引き受けられる程、また、役割を引き受けられる状態を整える程、人は多くの幸せを手にする可能性が増える事になります。頼まれ事は試され事と言いますが、誰にでも気軽に頼まれる人になるのが幸せを感じる機会を増やす事になるのだと思うのです。やっぱり、役割は人類最大の発明です。

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職人の新たな役割を創出する研修と人事サポートを行なっています。

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