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生きるに値すべき世界を実現する3つの階段① 〜良い社会は良い企業の集積から〜

今の世の中はマジでヤバイと思っています。
実体経済と関係のないところで株価がコントロールされて、日本で億万長者が大量に量産されているにも関わらず、国民の所得は下がり続けている。税収が増えているにもかかわらず、増税の手を緩めない政府、景気回復なきインフレの円安にほくそ笑む大手企業、アメリカの金利上昇で笑いが止まらない投資家。日本最大の政治派閥の領袖が簡単かつ無防備に若者に暗殺される国。格差の拡大と深まる分断、暴力による現状変更は何もアフリカや東南アジアの貧困に喘ぐ発展途上国だけの問題ではなく確実に日本にも広がっています。平成の終わりに令和は不安定、不確実、曖昧、複雑なVUCAな時代になると言われていましたが、コロナ禍を経て世界が大きく変わった今、それが極まった感が否めません。

陰極まれば陽となる

人類が経験したことのない圧倒的な人口減少局面に突入し、経済成長を見込むこと自体に無理が在る今の日本の30代以下の若者の死因の一位が自殺です。多くの若者が未来に希望を無くし、圧倒的な絶望を抱えて生きる事に疑問を持っています。そして、生きるに値しない世界だと判断を下し、自ら命を絶つのです。
「陰極まれば陽となる」とは道教の教え。対極にあるものは融合し止揚する。テーゼとアンチテーゼがぶつかり合うことによってジンテーゼとなり新たな価値や概念が生み出され進化するとはヘーゲルが弁証法で示した人類の発達理論。いったいこの国はどこまでの絶望に落ち込み、混乱を極めるカオスが出現しなければジンテーゼは起こらないのかは分かりませんが、出来るだけ早く、多くの人がこれまでの延長線上に人の幸せはない事に気づくべきです。

今だけ、金だけ、自分だけがスタンダードな世界

日本は戦争に敗れて植民地となってしまってからアメリカの思想、経済システム、社会秩序の傘に入って昭和、平成の時代を経て来ました。焼け野原から立ち上がった人々は自由資本主義の旗の下、頑張って働けば誰にでも資本を手に入れて幸せになるチャンスがあると必死に働き、金を稼ぐ事に執着しました。金が全て、金をつかむのも貧乏に陥るのも全て自己責任。そんな弱肉強食のまるでサバンナで生き抜く強欲資本主義が目指す世界は、一部の強者が奪い、支配し、コントロールする、実は民主主義とは全く逆のディストピアです。そこですっかりスタンダードとして定着した価値観は「今だけ、金だけ、自分だけ」が良ければ良いとの近視眼的で利己的な幼稚な思想です。残念ですが。自分にとって何の得にもならない事に汗を流すなんてバカがやること、そんな綺麗事で世の中渡っていける訳がないと(私も含めて)損得勘定ばかりを行うようになってしまいました。

自分達だけが良ければ良いんじゃない

しかし、その強欲主義が極まっていく現状を目の当たりにすると、流石に心の奥に持っている良心が「そんなことで良いのか?」と疑問を投げ掛けます。人は皆、生まれながらにして良知を持っている。とは陽明学を提唱した王陽明の基礎的な考え方ですが、やはり人は自分だけの幸せではなく、人に幸せを与えた時に幸せを感じるもの。その本質がむくむくと頭をもたげてくるものです。私自身、無一文で起業した際は自分達の生活を守るのが精一杯で、人の事まで構っていられるか、と正直思っていました。しかし、年数を重ねるごとに少しずつ事業が安定してくると、自分だけが良ければ良いんではない。との思いが強くなってきました。創業の志である「職人の地位向上」は、はじめは自分とスタッフの地位向上を指していましたが、やがて日本中の職人が未来に希望と自分達の仕事に誇りを持てる働き方を実現したいと思うようになりました。社会インフラを守る重要な職業である職人、建築業界を「働くに値する業界」にしたいと思うようになったのです。

ドロップアウトした若者の受け皿を

私は元大工で建築畑を歩んできた人間です。できることはたかが知れており、世界を変えることなど出来る力はありません。しかし、自分の影響力が及ぶ範囲で出来るだけのことをして、せめて建築業界から若者に希望を与え、生きるに値する世界だと思ってもらえるようにしたいと思うのです。
今の日本社会は学歴がものを言う社会で、その枠組みからはみ出した若者は、安定した暮らしを送ることさえ困難なのが現実です。毎年、10万人にも及ぶ若者が高校を途中退学し、その殆どは一生、正規雇用される事なくアルバイトやフリーターとして生きていくしかないのが現実です。コロナ以降、学校に通わなくなった子供が爆発的に増えていることもあり、その数は増加の一途を辿っています。中卒で学歴社会からドロップアウトした私が生きがいを見出した職人の世界では、学校の成績や学歴は全く関係なく、活躍する場があります。行き場を無くした若者の受け皿として機能する業界になるべきで、消去法ではなく、ポジティブに若者に選ばれる業界への変革が求められていると考えています。

ガバナンス整備と意識変容

しかし、実際は建築業界、特に現場作業を行う職人になりたいと思う若者は皆無です。肉体労働で夏は暑く、冬は寒い中、道具のように現場でこき使われ、体力の衰えと共に生産性が落ちて、所得も無くなっていく、未来のキャリアがない職業として認知されてしまっています。また、よしんば職人になりたい、職人として就職したいと学生が希望したとしても、ブラック、もしくはグレーな業態だと認知されている世界に足を踏み入れるのを学校の先生も親も、やめておけと引き止めます。さらに、一般の企業では当たり前の社会保険や厚生年金などの最低限の福利厚生を整えて正社員として迎え入れる企業も殆どありません。
本来、学歴社会からこぼれ落ちた若者の受け皿となって活躍の場を提供するはずの建築業界は、誰も来たがらないし、まともに受け入れる企業もないのが現実です。まず、行うべきは、憲法に則って職業選択の自由がある若者達に他業種と比較しても遜色ない環境を整える、事業所のガバナンス整備と「職人は便利な道具ではない」との認識に立って人を人としてみる価値観、意識の変容が必要です。ブラックでグレーな建築事業者ではなく、ホワイトで制度が整った、未来を創る「良い企業」が増えなければなりません。

良い社会は良い企業の集合体

私は建築の世界で、若者が未来に希望を持てる、生きるに値する世界を実現出来る様に、まずは自分達が生きがいを持てる「良い企業」になるべく取り組みを進め、志を同じくする周りの事業所にもそれを強く推奨しています。
もちろん、良い企業か否かの判断は経営者の自己判断ではなく、社内メンバーによる評価を集めると共に、第三者によるチェックと認定が必要です。
現在、中小企業向けにいくつかの企業の格付け、認定基準がありますが、その中でも最も厳しいと言われる、日本最大のシンクタンク、日本総合研究所と未来創造研究所が編纂した未来創造企業認定の取得を普及させることで、建築業界に対するブラックなレッテルを引き剥がし、まともな会社が存在するのを世に知らしめたいと思っています。そこには必ず希望が見えると思うのです。
そして、この流れは決して建築業界だけに限ったことではなく、全体の97%を占めると言われる地域企業(中小企業)、日本中のありとあらゆる業種業態に良い会社を広げることで、学歴に縛られることなく若者達が生きがいを持って社会に飛び出し、働ける環境が出来ると思っています。

未来創造企業のコモディティー化

良い会社の定義は非常に難しく、その基準は曖昧になりがちです。そんな中、毎年、全国47都道府県幸福度ランキングを国からの委託で調査、発表している日本総合研究所と未来創造研究所が共同開発した未来創造企業認定は日本古来の良い会社のあり方として知られている三方よし、アメリカ式のビジネスフレームではCSV経営と呼ばれる持続可能な経済的価値と、人の幸せに寄与する社会的価値の両立を数値に置き換えて見える化し、認定する制度になっています。経営者としての在り方はもちろん、社員、取引先、顧客への価値提供だけでなく、地域貢献、社会性、地球環境への寄与が事業計画に組み込まれており、本業そのもので社会課題解決に進む企業であるかを評価します。日本中の経営者の意識が変わり、大多数の企業が世の中の課題を解決していく良い企業となって共に未来を創造する。政治に頼らなくてもそれがスタンダードになれば世界は変わる入り口に立つのではないかと思うし、そう信じています。
生きるに値する社会の実現は、まず、企業経営者が意識を変え、今だけ、金だけ、自分だけの考えを捨て去って、未来を創造する良い会社になることをコミットすることから始めるしかないと思うのです。
つづく。

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全ての建築事業所は教育機関としての役割を明確に担うべきとの理想を掲げ、職人育成のWスクール通信制高校の普及に力を注いでいます。

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