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平和の祭典で感じる平和 〜Jeju Forum for Peace and Prosperity〜

韓国の済州島にきています。Peace and Prosperityと題された、アジアで行われる平和の祭典で、協力し、分かち合い、より良い世界へのアイデアを共有する。そんな稀な機会にお誘い頂き若干強引に予定を調整して乗り込んでいます。
ユ・ミョンファン元韓国外務大臣、パン・キムン前国連事務総長、日本からは福田康夫元総理、カウ・クム・フウン ASEAN 事務総長、レベッカ・スタ・マリア APEC 事務総長、等、アジアを代表する著名なリーダー達が揃い踏みする豪華で珍しいセッションはなかなかの見応えで、アジアが世界の中でどのような位置にあり、その中で日本の役割は何か?を考える機会になりました。そんな平和の祭典で感じたのは、今、ここが平和を実現している場であるということです。

我らの勝利

この平和と繁栄を願い、より良い世界の在り方を模索する祭典にはアジアだけではなく、戦時下のNATOからも事務総長が参加されていました。スピーチでは「我々が今の戦争に勝利することに大きな意義がある。」とストレートにロシアによるウクライナ侵攻の批判と、自分たちの正当性を主張して、勝ちと負け以外の第三の選択肢について興味が無いような態度を取られていました。私たちから見れば、NATOに加盟している国は戦時中と言っても過言ではないと感じていましたが、まだ戦火にまみれていない時点では当事者意識はそんなに高く無いのかもしれません。もしくは、NATOは兵器や兵士をいくらウクライナに送ったとしても本気でロシアと事を構えるつもりはないのだな、と感じました。我々の勝利、との言い回しをしつつも、殺し合いは対岸でしているものというのは、古くから戦争の歴史を繰り返し続けてきたヨーロッパの伝統なのかも知れません。

トップリーダーによるセッション

世界的に名を知られるトップリーダー、国連、ASEAN、APEC、そしてNATOと、世界に大きな影響力を持つ組織を現役で仕切っている人たちがオープニング・セッションで話された内容は大体同じでした。平和は何よりも重要であり、目指すべき理想である。そんなことは世界中の人は誰しもが分かっているわい、と突っ込んでしまうような型にハマった言葉の積み重ねでした。国際フォーラムというのは、こんな基礎の基礎から始めなければならいないのかと少し驚きましたが、多国間での協力、協働、分かち合いの上にたった平和と繁栄がいかに難しいかとも同時に感じました。
もう一つ、共通して喫緊かつ、重大な課題として挙げられていたのは、気候変動の問題です。しかし、CO2の排出の削減のみに焦点を合わしており、再生可能エネルギーの新たな技術革新や、そのインフラ整備についての具体的な言及がなかったのは少し期待はずれも否めませんでした。課題を認識するステージはとっくの昔に終わっており、その先に議論を進める段階に入ったのに、世界は解決策をまだ見出せていないようです。

世界平和を実現するための第一歩

絶妙なバランスの上に成り立っているそれぞれの世界を形成する組織のマネージメントが極端な見解を示したり、意見を述べるのはとても難しいことなのは理解します。しかし、誰もが分かっている事を改めて話すだけでは、大した意味が無いことになってしまいます。
そんな中、印象に残ったのは、福田康夫元総理大臣のスピーチで、日本と韓国の両国民が基本的な価値観として持っており、両国に底通する倫理感でもある儒学の一節を紹介されました。それは、自分がされて嫌なことを人にしない。との、人として、ごく当たり前の感覚です。しかし、今の世界ではこんな基本が守られていない、残念な状況があちこちで見られる状況で、その波及は世界中を巻き込んでいつ世界大戦になってもおかしくない様相を呈してしまっています。福田元総理は名指しで特定の国や人物を非難することもなく、激しく遺憾の意を表明するでもなく、平和フォーラムに相応しい穏やかな口調で、当たり前の理、人の道を説かれました。

〈論語・顔淵〉
原文:仲弓問レ仁。子曰、出レ門如レ見二大賓一、使レ民如レ承二大祭一。己所レ不レ欲、勿レ施二於人一。在レ邦無レ怨、在レ家無レ怨。

読み下し文:〔仲弓(ちゅうきゅう)仁を問う。子(し)曰(いわ)く、門を出(い)でては大賓(たいひん)を見るが如(ごと)くし、民を使うには大祭に承(つか)えるが如くす。己(おのれ)の欲(ほっ)せざる所は人に施すこと勿(なか)れ。邦(くに)に在りては怨(うら)み無く、家に在りても怨み無し、と。〕

世界平和実現へのアプローチ

世界的に見ても大きな影響力を持つ組織のリーダー達、アジアのトップ企業を引っ張ってきたトップマネジメントが集まった場で、改めて示されたのがアジア的な思想の源流になっている孔子の言葉であり、論語からの引用だったのは私にとっては非常に力強く、自分達が取り組んでいる教育理論への背中を押して頂けたように感じました。
高校生に現場での技術とイントラプレナーシップ(起業家精神)、そして人としての在り方の探究を行うマイスター高等学院。私たちが企業と教育の融合を目指して立ち上げたプロジェクトは、究極的な目的である世界平和の実現へのアプローチにしっかりと繋がっているのを確認できた気がしました。
経済中心の今の世界において、単に人道的な思想を訴えても誰も耳を貸してくれません。しかし、世の中から求められる課題解決に力を注いだり、困っている人や苦しんでいる人を助けたりする人や企業がその存在を求められるのもまた事実。この経済と道徳の融合はそのまま、企業と学校の合一に監査なります。済州島に足を運んだ最も大きな収穫は、人の道の探求こそ、私たちが進む方向であるとのインサイトです。大きな勇気をもらって帰りたいと思います。

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人の道の探究とイントレプレナーシップを中心に置いて職業訓練の高校を運営していますし、同志を募っています。

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