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影響力の再考

現代の日本に溢れかえる社会課題を事業そのもので解決へと導くCSVモデルの経営を学び、実践し、広く伝播する経営者のコミュニティ「経営実践研究会」の全国世話人会議が滋賀の米原で開催され、私も参加してきました。
改めて、組織を牽引する立場の者の在り方を見つめ直す機会となり、私達が目指す地域変革、業界変革、社会変革へのステップと行うべきタスクの整理を行いました。その中で感じたのは、人を感化したり導いたり、協調してもらう影響力を身につける必要性と重要性です。


セールスのバイブル

会議の中ではセールスマンのバイブルとして有名なロバート・チャルディーニの影響力の武器の6つの法則が藤岡会長によって紹介されました。既に古典と言っても大きく違わない、書籍に書かれていた法則を改めて説かれて、人間の心理を経済に置き換える手法は単なるやり方ではなく、在り方の中に存在してその真価を発揮するのだと感じさせられました。
チャルディーニの人を説得する6つの法則とは、
「返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性」
の6項目で、使い方を間違えると詐欺にも活用されるとされています。
やり方のバイブルで私は個人的にあまり好きではありませんでしたが、それでも経済と切っては切れない関係になってしまった現代社会では事業を継続するには売り上げを上げて成果を手にする必要があります。なので、最低限のリテラシーとして私が主宰する建設実務者向けの研修「職人起業塾」でもカリキュラムの中に入れ込んでいます。

在り方とやり方の関係性

先日、とある経営者から、「在り方中心で事業の活動をすると経済性が成り立たない」との相談を受けました。真面目に事業取り組む多くの経営者が同じ悩みを持っているのだと感じました。その時に私が答えたのは、「今までの経済性重視、どの様に収益を上げるかとのやり方中心から、これまで経済合理性の外にあり手をつけられてなかった課題を取り込み解決するCSVモデルへの移行は急に切り替えられるはずもなく、グラデーションの中で方法を見出すしか無いよね。」と、とても曖昧で抽象的で当たり前な返答でした。これまで出来ていなかった事ができる様になるにはそれなりの準備とリソース、そして新しい知見を身につける必要があります。

スキルやリソースの蓄積が前提条件

そして、その前提条件として理解しておくべきはここ30年間のビジネスモデルの変遷とそれぞれのレイヤーで押さえておくべきスキルです。時代の流れは途切れる事なく続いてきており、それぞれのフェーズで生き残った者が次のステージに進む事が出来るのは適者生存の原則です。
昭和時代はまだ、モノやサービスがそこまで溢れていませんでした。良いモノを作れば売れるプロダクトの時代です。平成になる頃から情報社会への移行が始まると売り込みが上手い会社が収益を上げる様になります、セールスの時代です。その後、マーケットの多様化からモノではなくコトを提供すべきとのニーズと意識が高まり、継続した価値提供で自社独自のマーケットを構築するマーケティングの時代になりました。
10年ほど前からはそれをもっと突き詰め、ユーザーがまだ気づいていない課題を抽出してインサイトを商品サービスとして体験をデザイン、開発するUXデザイン、サービスデザインが主流になりました。
現在はUX(ユーザーの体験)を更に突き詰め、ユーザーの潜在的な願望や課題解決を経済合理性の中に引き入れる、社会課題に向き合うCSVモデルへと時代は大きな転換期を迎えています。

社会を変えるのは善なる影響力

この様に整理をすると、プロダクト、セールス、マーケティング、UXデザインのそれぞれのリテラシーはそれぞれ違うスキルを必要としており、時代の流れだけではなく個人的にも段階的に身につけておく必要性がある事に気が付かされます。在り方中心のCSVモデルへの変容を実現するには良いモノを提供出来て、認知を広げる能力を持っており、信頼関係を継続する仕組みを構築するした上で、顧客のニーズを汲み取る知見を身につけている必要があります。そして、それら全てが大事ではありますが、成果を上げるエンジンとなるのはやはり影響力であり、それは在り方とやり方の合一に他なりません。その意味で今回の全国世話人会議でロバート・チャルディーニの理論が改めて示されたのは非常に深い意味があったと感じた次第です。正しい影響力を身に付けられるように精進したいと思います。
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職人育成の高校の運営で日本の教育のスタンダードをアップデートするチャレンジをしています。

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