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2つの課題を解決する新しい職人養成学校の胎動③ 〜ビジネスモデルとタレンティズムとセルフイメージ〜

このnoteでは今や建築業界だけでなく日本のインフラ保証や産業全体の喫緊かつ重大な問題になっている職人不足と、近年社会問題化している学生の不登校、学歴マイノリティーの増加の両方の課題の解決を目指す新しい職人高等教育学校創設のプロジェクトについての構想と進捗を公開すると共に、広くご意見を募る場として設定しています。ご意見、ご感想頂ければ嬉しいです。
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オレの志

私は元大工の経営者で、約20年前に工務店を立ち上げた時から、職人として働くことの不安定さと、身体を使って働くにもかかわらず何の保証も無い地位の低さを自分自身で体感して、このままでは若者がこの業界に入る事はなくなるし、日本のインフラを支えてきた建築系のものづくりの根幹が崩れてしまうと危機感を募らせていました。なので、創業時に私が掲げたミッションは「職人の社会的地位の向上」です。大工3人で小さな大工集団として立ち上げた会社にしては大きすぎる志ではありましたが、まずは自分たちが安心して働ける環境づくりから取り組んで、それを徐々に広げて今では(神戸で小さな工務店を経営をしながら)一般社団法人職人起業塾なる団体を立ち上げて全国で稼げる職人を輩出する現場実務者研修を中心に職人会社の人事制度やキャリアプランの構築など、職人育成のサポートを幅広く行っています。

若手大工育成塾

まず、職人の労働条件改革

私が志に掲げた「職人の社会的地位の向上」を実現するためにまず取り組んだのは、職人の正規雇用です。世間一般では社会保険、厚生年金に加入しているなんてごく当たり前ですが、職人の世界では未だに国民年金、国民保険しか加入してないものがほとんどで、その保証内容は(ここでは省きますが)圧倒的に違います。また、年俸制に近い月給制度を整えて、キャリアプランを提示、職人としての技能とともに役割と責任に応じて昇給する仕組みを見える化しています。これも一般企業ではごく当然ですが、職人は働いた分だけ給料が支払われる日給月給や出来高に応じて支払われる手間請け制度が未だにスタンダードで、当然有給などないし、盆暮れ正月など休みが多く、働く日数が少なければ給料が少ないのが当たり前です。まず、安定した収入と安心できる保障を付加するところから始めました。

自律循環型ビジネスモデル研究の継塾

職人育成とビジネスモデルの関係

その次に着手したのは、職人に外注扱いにして保証を付けず、経費を絞り込んでいる圧倒的大多数の建築会社に負けないコスト構造を作り上げることです。その当時、7人から8人の大工を正規雇用すると、年間一千万円近く経費が上積みされました。建築業界に限らず、世の中には通り値と言うものがあり、大工を正規雇用しているからといって相場より高い見積もりを提示してもマーケットからは受け入れてもらえません。なので一般的な建築会社とは違うビジネスモデルを構築する必要がありました。私が着目したのは、宣伝広告費です。元請け建築会社は売り上げの2%程度を新規集客のためのプロモーションに使うと言われていますが、社員大工による施工で顧客満足を作り上げ、紹介やリピートのみで受注が回るようになれば大きなコスト削減につながり、大工を抱えていない会社と同じ程度のコスト構造を作れると考えたのです。

自律循環型モデルへの移行

理屈では非常に簡単ですが、実際に無広告無販促で売り上げを作り続けるのを仕組み化して事業の構造に組み込んでしまうのは簡単なことではありません。私が「あり方」を見直し、信頼を積み重ねる古典的なマーケティング理論を必死になって学び始めたのはその頃でした。それから紆余曲折ありましたが、私たちはもう10年以上広告費を使っていませんし、今では自分たちの役割と責任を理解した社員の大工達がそれぞれ才能を発揮し、クライアントと固い信頼関係を構築して次々と次の工事の声掛けをいただけるようになっています。自律循環型モデルの工務店を目指して20年、ようやく形になってきたと感じています。そんな経験から、職人育成を行うには、独自のビジネスモデルを構築するマーケティングやブランディングが必要不可欠であり、ものづくりの本質である現場を起点にした経営戦略を練り、人材育成と収益が循環するモデルへの移行を目指すべきだと思っています。

毎月の工務部勉強会

根本にあるのはタレンティズム

職人の育成と持続性の高い自律循環型ビジネスモデル構築はとても深い親和性があります。そして、その根底に流れているのはタレンティズム(才能主義)で、人は誰しも顕在化していない大きな才能を持っており、それを開花させることができれば大きな価値を生み出せる。との人の可能性を信じる思想です。私自身もそうでしたし、私が育ててきた職人たちは殆ど全員、勉強が苦手で、人とのコミュニケーションが得意でなく、でも体力には自信があるといった理由で職人の世界に入ってきます。いわゆるブルーカラーで自分が知的労働者になれるとは思わずにこの道に進みます。しかし、技術と現場での知見を身に付けた職人は完全に知的労働者であり、言われるがまま、決められた通りに作業する作業員とは一線を画します。そのレベルに達すると、営業でも設計でも施工管理でも大きな活躍ができる人材になり得ます、人は誰でも変わることができるのです。

人は変われることを知らない

私は、人とのコミニケーションが苦手だから大工になった、と言っていた職人が現場でお客様からの信頼を勝ち取って、次々に仕事の依頼をもらうようになった例を数多く見てきました。なので、人は変われることを知っています。しかし、これから職人を目指そうかと考えている若者は自分にその様な才能があることを知りません。セルフイメージの低さは目標設定も低くなり、同時に成長のスピードも遅くなりがちです。そんな無駄な時間を過ごさないように職人を目指すなら1番初めから自分の中にある才能に気づき、伸ばせる環境を整えてから職人への道を歩み始めるべきだと思っています。

職人起業塾

可能思考とセルフイメージアップのアプローチ

現在私が構想を進めている新しい職人高等教育学校では、その部分を2つのアプローチから解消しようと考えています。
その1つは個性診断です。データ分析に基づいて自分自身が持つ特性や指向性、その先にある可能性を自覚しながら、良い部分を伸ばせるようなカリキュラムを組むことで将来への明るい希望を持ちながら1人前の職人になるための学校に通ってもらいたいと考えています。
もう一つは、アクティブブレインセミナーの導入で、記憶術を学ぶことで絶対に自分ではできないと思う事(1日で100個以上の単語を暗記するなど、)を、正しいやり方を知るのと、ほんの少しの努力で実際にできてしまう体験を通して自分の中にある可能性に気づいてもらいます。この2つのカリキュラムを通してセルフイメージを高くしてから学生生活に進んでもらえばおのずと大きな成果が生まれると思っています。

職人の地位向上こそ職人不足の根本的解決。

入学と同時に自分の特性と潜在的な無限の可能性を知り、才能を伸ばす方向を見据えて3年間の学生生活で職人としての技術と現場での経験を積み重ねると必ず大きな成長が見込めると思いますし、その下地を整えた上で卒業後、華々しく職人としてデビューすればその先には様々な選択肢を持つことができるし、洋々たる未来が広がります。大きな価値を生み出す人材になるのは間違いないと思うのです。この新しい形の職人高等教育学校こそ、職人の地位向上をボトムから支え、業界全体のスタンダードを変革させることができると考えています。この新しいスキームを日本全国で展開しようと思っていて、同じような志を持つ経営者を募っています。少しでも興味のある方はお気軽に私(高橋)までご連絡をいただければ幸いです。職人不足の根本的解決を共に取り組んでみませんか?

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新しいキャリア学校の構想を経営実践研究会兵庫定例会で発表します。ゲスト参加大歓迎なのでご興味がある方は是非ご参加ください。
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