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蝿がたかるう◯こからの脱出。〜経営感覚の高所トレーニングのススメ〜

近年、あらゆる業種、業態でビジネスモデルの転換が進んでいるのは筋の良い経営者は皆さん気づいておられると思います。昭和〜平成と令和では圧倒的に時代は変わり、今まで通りの旧態依然のままの組織、収益構造、そもそも利益重視だった企業の目的自体を見直すべきで、その変化についていけない会社や経営者はダサい。の一言で片付けられる様になりました。

う◯こに蝿がたかる原則

近年、爆発的に売れた山口周さんや田坂広志さんの書籍で書かれてあったのを乱暴に要約すると、企業が経済重視の強欲資本主義に囚われてきたから世の中はどんどん悪くなったし、このままでは人の幸福は失われて行くばかり。世の企業はそろそろ金を稼ぐことだけではなく本質的な価値創出、広く関係するステークホルダーとの共有価値の創造を目指すべきとの基本的な指針です。
SDGsが学校の授業に組み込まれている時代、社会課題に興味が無い人は意識が低いと馬鹿にされます。当然、ダサい会社に働きたい勘の良い若者はいないわけで、ダサい会社には筋の悪い人ばかりが集まる負のスパイラルが働きます。規模の大小、社歴の長短にかかわらず、環境の大きな変化に適応できない事業所は適者生存の原則で淘汰されます。全ての経営者、経営に携わる幹部は時代の流れを読み解く力をつけなければならなくなりました。

行き過ぎた資本主義へのアンチテーゼ

近年の流れを最も分かりやすく表しているのが「パーパス経営」という言葉の流行、もしくは認知が広がったことではないかと思います。以前は「理念経営」と呼ばれていたのが、なぜ「パーパス=志」に変わったのか?その答えは明確に定義されているわけではありません。
私が感じているニュアンスとしては、事業所(ほとんどの場合、経営者)の事業目的の明文化である理念経営から、もう少し社会的な意義に事業の目的を広げ、企業は社会の公器であり、世の中の課題解決や多くの人々の幸福の創造の為に企業や組織は存在するべき。との本質への回帰ではないかと思います。それは、格差や分断を広げる行き過ぎた資本主義へのアンチテーゼでもあります。

パーパス経営は不易流行

先行き不透明な混迷の時代には原点に回帰すべき。とよく言われます。しかし、パーパス経営の流行?はプロダクトアウトからマーケットイン、それをさらに深掘りしたUXデザイン思考を突き詰めた結果であり、ビジネスモデルの進化の結果でもあると思っています。その意味では、昨年、山口周さんが大阪で開催されたソーシャル・シンポジュウムの基調講演で「最近、デザイン思考という言葉もめっきり聞かなくなった」と言われた通り、CSV経営(共有価値の創造=社会課題解決型モデル)のフレームを近年では一種の流行の様に耳にするようになりました。
私は基本的に流行りものに弱いミーハーな人間ですが、松尾芭蕉が俳句を吟じるのに不易流行を重んじた様に、本質を守りながら、時代の流れに敏感であることも重要だと思っていて、パーパス経営、CSVモデルが持て囃される様になった背景にあるのは、単なる流行ではなく、事業そのものの本質への回帰だと感じています。まさに不易流行の両面が重要視されている結果だと思っています。

松尾芭蕉

求められるが簡単ではないCSV

私は、本業で社会課題を解決する事業を目指すCSVモデルの経営者の全国コミュニティーである一般社団法人経営実践研究会の世話人を務めています。その関係もあり、最近、若い経営者からCSV経営のビジネスフレームを学びたい。もしくは興味があるとの声をよく掛けられます。
それは特に起業して間もない新進気鋭の若手経営者からのお声がけが多く、筋の良い若者が増えているのだと感じます。もしくは、起業するとかしないとかの以前に、若者の意識がすでに社会の課題解決に向いているのかもしれません。
そういえば、最近の大学新卒生の就職先を決める理由の1位は社会に貢献度の高い会社となっているとのこと。パーパス、CSV志向が今の時代の若者にはマジョリティーになりつつあるのかもしれません。
そんな多くの人が興味を持ち、変容を目指そうとする、CSVモデルと呼ばれる事業そのもので社会の課題を解決する事業形態へのシフトは決して簡単ではありません。そもそも、経済合理性からはみ出しているからこそ、様々な問題が社会課題として取り残されてしまっているからです。

圧倒的パタンランゲージ不足

例えば、建設業界の職人不足の問題を取り上げると、他の業種に比して職人の労働環境は非常に悪く、有休を使えないどころか社会保険、厚生年金さえ付与されない、非正規雇用が業界のスタンダードとしてまかり通ってきたことが職人がいなくなった根本的な原因です。
職人の社会的地位が低過ぎて、若者に見向きもされなくなったし、子供が職人になりたいと言えば親は泣いて止める様になりました。これは、建設業界の事業者が人材をコストと捉え、正規雇用でかかる福利厚生の費用を削って収益を求めたからに他なりません。そんな職人不足の問題を解決するには収益構造(=ビジネスモデル)から見直す必要があるのです。職人育成に取り組む必要性は感じてても、非常に難しくそこに踏み込めない事業所が圧倒的に多く存在するのは、ビジネスモデルの刷新の方向性が掴めておらず、スキームを以っていない、そして圧倒的にCSVモデルのパターンを学ぶ機会が無いからに他なりません。

高地トレのススメ

CSVモデルに興味がある、社会課題解決型ビジネスモデルへの転換を図りたい。時代に適した経営感覚を身に付けたいと相談される方に私がお勧めしているのは、高地トレーニングへの参加。マラソンランナーが大会出場の前に標高の高い空気が薄い台地にトレーニングに行くことで強靭な心肺機能を得られる様になるアレです。
その昔、私がまだ駆け出しの経営者で経営の勉強を始めた頃、まず経営理念の策定を行わなければと学び考えました。しかし、その当時、使い慣れなかった「理念」という言葉はとても崇高な響きで、口にするのも気恥ずかしい感さえありました。大工をしてても使ったことなかったし。しかし、「理念と経営」なる勉強会に毎月通う様になり、しょっちゅうその言葉を口にする様になると、いつの間にか社内でスタッフが気軽に使う様になりました。そこで初めてスタッフと理念経営への呼吸が合ったと感じたのです。
同じように、CSVモデルの実装に取り組んでいる経営者が集まるコミュニティーに入ってみれば、そこでは常に「あなたは何のために経営をしていますか?」との根源的な問いを投げられ、圧倒的な量の社会課題解決のパタンを知ることができます。筋の良い経営者は、大学院にでも行って研究しなければ、そんな場はなかなか無いと気付かれて、コミュニティーに入られます。

高地で歩く事勿れ

大転換の時代に適した経営感覚とビジネスモデルのパタンを身に付けられるコミュニティーで多くのメンバーと行動を共にすれば、必ず筋の良い、若者に憧れられるカッコイイ経営者になれることは私が請け負います。(笑)
しかし、高地トレをするにあたり、もう一つ重要な注意点があります。それは、せっかく空気の薄いトレーニングに最適な場所に行っても、苦しく走ることなく、無理せず歩いていては全く能力は改善されないという事実です。世界のトップアスリートが集う米ボルダー(約1、650メートル)や中国・昆明(約1、900メートル)に行って、よもや散歩し続ける人はいないと思いますが、トレーニングマシンを購入しただけでトレーニングした気分になってしまうのが人の常。その場所に行っただけ、スケジュールを組んだだけで安心してしまうのには注意が必要です。
海賊と呼ばれた男、出光佐三翁は「概念を実践で裏打ちしてこそ知恵や哲学が生まれる」と言われました。高地に行って、実践あるのみ、これを乗り越えてこそ、簡単には実現できない困難なビジネスモデルを形にする能力を手にすることができるのです。

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CSVモデル(三方よし経営)の研究と実践を行うコミュニティー「一般社団法人経営実践研究」の世話人を務めています。ご興味ある方はお世話致しますのでお気軽にお声がけください。

鹿児島にてWヘッダーで登壇します。是非ご参加ください。

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