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行けば地球が良くなる旅 in BALI⑤ 現代のマザー•テレサのインパクト

旅することで世界の課題を知り、視野を広げ、視座を高める。ほんの少しでも社会の課題解決に取り組む意欲を湧かせ、出来れば行動する。そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。
私はその立ち上げ前から強く共感して関わっていたこともあり、企画されたツアーには基本的に全参加することにしています。また、このツアーは私が世話人として参画している経営実践研究会プロジェクト1000の一環との位置付けにもなっており今回のツアーも半数近くが研究会のメンバーでした。志を応援し合うインフラって本当に暖かくて素晴らしいと思える多くの仲間の参加でした。
そんな赤道直下の国、インドネシアのバリ島でのツアーに参加してのスタディをコンテンツごとに備忘録がてら綴っています。今回は現代のマザーテレサに会って受け取ったインパクトについて。マジで本気で衝撃でした。

タビスキの想いを綴ったHPはこちら

五人のインパクトヒーロー

以前の記事で紹介したアースカンパニーが行っている3つの柱の事業のうち、エコホテルの運営以外の事業が世界を良くする人材の育成と支援であると書きました。インパクトヒーローと名付けられた、ソーシャルビジネスと言う名称で片付けることができないほど、世界にインパクトを与える取り組みを行う人たちを生み出し、また、既に取り組んでいる人達を支援することで、エコホテルに宿泊する意味が、単なるサスティナビリティに興味がある行動をとっているだけではなく、「泊まるだけで世界が良くなる」社会の課題の解決に対して積極的に関われるとのユーザーエクスペリエンスを生み出す側面を形成しています。それが観光業の事業に深みと重みを持たせ、世界中に圧倒的な認知を広げたり、多くの機関から表彰や認証を受ける原動力となっています。
5人のインパクトヒーローの紹介はこちら、どの方も本当に凄いです。

愛に生きる人

そのインパクトヒーローの代表格が、現在のマザーテレサと呼ばれるロビンリムです。
助産師の世界、もしくは、ソーシャルビジネスに携わる人の間では、世界中で非常に有名なので、さすがに私も事前に彼女の活動について下調べをしてからインドネシアに向かいました。現場の助産院で実際にロビンリムに出会って感じたのは、テキスト上の情報では全く話にならないほどの深い愛情と、愛に生きるとの信念の圧倒的な強さでした。以下に活動内容の紹介文と動画をリンクしますが、これを見ても多分彼女の凄さは10分の1も伝わらないと思います。「愛に生きる。それ以外に何のために生きるのでしょう。」と断言する彼女。まさにインパクトヒーローの名に恥じないあり方を強烈で示されていました。人としてのあるべき姿を感じるために、業種や状態に関係なく、世界中の全ての人に出会ってもらいたいと心の底から感じた次第です。

自由資本主義社会の弊害

昭和生まれの私の世代、子供の頃の憧れは、「成り上がり」と言う言葉で一生を風靡した矢沢永吉です。資本主義社会は誰でも努力して、価値を生み出せば、金と名声を手に入れることができると信じて、若い頃から寝る間も惜しんで馬車馬のように必死で働き続けました。その結果、中学校もろくに通えていないような、学歴社会からドロップアウトした私のようなものでも、何とか人並みの暮らしができるようになり、何とか子供を育てて社会に送り出し、50歳を超えてから漸くやりたい仕事が出来るようになりました。それは、自分の人生を商品としてお金に変え続けてきた活動と言っても過言ではありません。資本を持たない者が資本主義社会で生きると言うのはそういうことで、世の中の課題や問題に目を向ける事なく、ごく自然に今だけ、金だけ、自分だけの思考に陥ってしまう構造になっていると今になって思います。これでは世の中は悪くなるばかりで、良くなるわけがありません。

インパクトビジネスの奇跡

現在、隣国では戦争が続いています。格差の拡大と分断は争いを引き起こす種であり、それを増長させる自由資本主義社会の歪みが世界中で露見し始めています。Give & Takeや等価交換ではない、Give & Givenやギフトの精神など、新しい価値観やパラダイムで経済を成り立たせようと言う動きが世界中で起こり始めています。その代表例の1つがロビンリムが立ち上げたブミセハット助産院で、24時間365日、誰が行っても完全無料で診療を受けられるクリニックが複数の拠点で継続して事業を続けている事実は、旧来の資本主義社会ではありえないことです。貧困が命を絶やす原因になってはならない。との当たり前すぎる理屈がそのまま現実社会で罷り通るようになってるのは私たちからするとまさに奇跡としか言いようがありません。
彼女はファンドレイジングを受けるために世界中を飛び回って、対話や講演を繰り返されており、ブミセハット助産院には世界中から多くの支援が集まり成り立っています。しかし、ロビンリムは未だに、その支援が底をつき、資金が枯渇してしまわないかと気を揉んで夜も眠れないと口にしていました。しかし、世界にインパクトを与える彼女の事業は絶対に無くなってはならないし、存続すべきだと思わされました。それはきっと、世界中の人が感じると思うのです。

奇跡を起こし続ける助産院

そして、ロビンリムの事業がありえないと思えるほど素晴らしいのは、単に貧困に喘ぐ人が金銭的な心配をせずに医療を受けられるというだけではありません。出産という人類にとって存続を叶える重大な行為を本来あるべき姿での幸せな状態を保つことを実践されています。ブミセハットでは20年間で1万人の赤ちゃんを自然分娩で迎え、病院搬送率5%、帝王切開率2%、授乳成功率100%、会陰切開率0.05%と奇跡を起こし続けています。女性の身体のことや出産に関して私はあまり詳しくありませんし、その内容を聞いてもあまりピンときませんでしたが、日本では当たり前に行われている会陰の切開や帝王切開をほとんどしない、生まれた子供をすぐに母親が抱きしめ、子供達に本能的な喜びを与える、胎盤をすぐに切り離さない、また、全ての子供が母乳で育てられるように、出産前の食事や運動まで丁寧なケアをしているとのことでした。ツアーで一緒だった助産師のミサトさんはこんなことは日本では到底考えられない。と、出産の現場で行われていると熱っぽく私に教えてくれました。
この世に生を受けた瞬間は人間は誰しも平等に尊命を授かります。その尊厳を守る出産を行うのはそこ赤ちゃんの未来にとっても、世界の未来にとっても非常に重要なことなのだと改めて知らされました。そして、仕事に追われて娘の出産に立ち会えなかった時の悔しく、やるせない苦い気持ちを思い出し、人としての優先順序をもう一度よく考えるべきだとも感じた次第です。

ソーシャルからインパクトへ

愛に生きる。にコミットメントしたロビンリム。彼女の強い信念と意志は多くの人を救い、幸せを生み出しています。しかもその対価は顧客からもらうのではなく、余剰を持っている人から支援やギフト、応援という形で届きます。経済的合理性とかけ離れている、他人頼みの事業のように見えるかもしれませんが、人が一人でできることは高が知れているとの事実に立てば、世の中にインパクトを与えたいと考えた時点で、人生をかけてそこに振り切り、ありえないと感嘆される程、一つのことに対し信念に従って打ち込む必要があるのかもしれません。また、世の中のありとあらゆるビジネスは多少なりとも価値の等価交換だけではなく、思いやりやサービス、おまけ、手伝い等の不等価交換の要素が含まれていると考えれば、根本的な構造の問題ではなく程度の差であるとの見方も出来なくはありません。ただ、何をやるかよりもどのようにやるか。ディティールに対する精度やオールインで全てを賭ける覚悟が必要なのも自明。人生を全て投げ打ち、賭けることを見つけたいと思いました。なんとか、命あるうちに日本でブミセハット助産院のようなインパクトを与えられるビジネスモデルを生み出してみたいものです。本当に素晴らしい人生を変えるスタディーツアーでした。

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モノづくり人材への最先端の教育システムで日本を良くして行きたいと奮闘しています。


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