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オレ達が20年の歳月をかけてCSV経営にシフトした理由

共有価値の創造(creating shared value、略称:CSV)とは、企業の競争戦略を専門とするアメリカの経済学者マイケル・ポーターが2006年、米ハーバードビジネスレビュー誌の同年12月号に『Strategy and Society』と題する共著の論文の中で初めて提唱した経営戦略のフレームワークで、企業による経済利益活動と社会的価値の創出( = 社会課題の解決)を両立させること、およびそのための経営戦略のフレームワークを指す。
出典:Wikipediaより

CSVのムーブメント

昨今、社会を良くする事業に対する投資を指す投資基準としてのESG (Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス)を組み合わせた言葉で、2006年、当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が発表した「責任投資原則(PRI)」の中で、投資判断の新たな観点)と共にCSV経営と言う単語をよく目にするようになりました。共有価値の創造と訳される事業と社会課題解決を一体にする事業の形態が世界的に求められており、徐々に日本でもその意義が認められる様になってきました。私が世話人との立場で活動している一般社団法人経営実践研究会では本業での社会課題解決を目指す経営者が現在750社を超えて大きなムーブメントになりつつあります。

企業の在り方としてのCSV

その研究会のオンラインイベントで地域活動への取り組みについて話して貰いたいとのオファーを受けて、昨日志学会なるオンラインイベントに登壇する機会を得ました。zoomを立ち上げ、PCでスライドを共有しながら冒頭に私が話したのは「CSV経営が何故求められているのか?」との問いかけです。その答えを私は、企業の持続可能性及び地域社会の継続性を担保するのが第一義だと考えており、自立循環型のシステム構築の為に企業の在り方として地域と企業、そしてそこに住う住民の共通価値の創造、課題解決が欠かせないと定義しています。

自立循環の機運は建築から

私達、株式会社四方継が自立循環型の社会及びビジネスモデルを標榜し始めたのは2006年に遡ります。その当時、国土交通省から「自立循環型住宅の設計指標」が発布され、自然エネルギーを効果的に取り込んでエネルギーコストを抑えた自然環境に負荷をかけない住宅を設計する必要性が喚起されました。それまで、間取りやデザインにばかり目を向けていた住宅会社が自分たちの事業自体が環境に大きな負荷をかけている事に気が付き、環境への意識を持って持続可能な環境を次世代に残さなければならないのだと気がついたきっかけです。これから目指すべき方向性はこれだ!と当時の設計担当者に早速研修に行って貰い、それ以後、省エネ、パッシブデザインに取り組んできました。それは現在のオフグリッド住宅(送電されなくてもエネルギー自給で自立出来る住宅)の提案に引き継がれています。

オフグリッド自立循環型住宅

持続可能性とは人づくり

そして、環境問題に目を向けるようになった私達は、持続可能な環境への取り組みは住宅設計だけでは片手落ちなのに直ぐに気がつきました。その当時、日本中に一気に広がった地産地消運動の影響も受けて地元の山で育った木を使っての建築や地元農家さんとコラボしてスタッフと農業を行うようになったりと様々な取り組みにその概念を広げました。その中でも私が最も重要視したのは事業そのものの持続可能性を高める事です。建築を生業としていた私達が最も大事にすべきはモノづくりの担い手を育て、技術や伝統、文化を次世代に引き継ぐことであり、その人材育成を事業そのものの収益性と一体化させる事だと考えました。職人育成と職人を中心にしたビジネスモデルを確立して自立循環のシステムへと構築する事こそが私達が進むべき道だと確信したのでした。

モノづくりとは人づくり

循環型ビジネスモデルは顧客との共通価値創造

自立循環型住宅の概念に触れてから15年以上が経ちますが、地元の自然素材を使い環境に配慮した設計、自社職人の育成とそのメンバーによる施工にこだわり続けた結果、単なるモノづくりだけではなく、家を建てる前のライフプランの設計から、建てて引き渡した後のメンテナンスまで顧客=地域住民への暮らし全体のきめ細やかな対応が出来るようになりました。現場で直接、社員の大工達が顧客とコミュニケーションを取りながら進める建築は確実に顧客に安心感と満足をお渡し出来る様になりました。気付いた時には紹介やリピートでの依頼が集まるようになり、一切の宣伝広告もプロモーションも必要無く、毎年必要な量の受注を得られるようになっていました。自然に事業が循環する形になり始めたのです。

株式会社四方継のビジョン

事業ドメインのCSV化

2年前の創立20周年にはこれまで地域の人々に支えられて来たご恩を少しでも返せる様に、また、地域の課題解決に役に立てる事業所になると決意して、社名と共に事業ドメインを改めました。それまでの建築請負い業ではなく、地域に埋没し地域住民と共に課題解決に取り組むコミュニティを創造するのを事業の柱に据え、建築事業はそのコミュニティの中で発生する案件の依頼を受けて行うとの位置付けへと変容させました。まさしく、地域の人達と共に共通価値を創造する経営へと名実共にシフトしたのです。現在、4年後の事業承継に向けてのプロジェクトも進めており、これからの20年、更にその後に向けて循環しながら持続出来る事業所になるべく歩みを進めています。

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新しい時代の要請に応える道

2年前の事業再構築(リブランディング)の際に私達が事業の目的、存在価値に据えたのは「四方良しの社会の実現」です。そしてそれは一瞬だけ叶えられれば良い訳ではなく、持続継続してこそ意味があります。自立循環型ビジネスモデルの構築、ひいてはCSV経営は存在意義を具現化するのとほぼ同義と言っても過言ではありません。CSV(共通価値の創造)を地域企業が目指すべき理由がそこにあると思うのです。一般社団法人経営実践研究会では本業での社会課題解決を目指す経営が集い、様々な業界のトップランナー、時代を牽引するゲームチェンジャーと呼ばれる方々が集まっています。CSV経営を目指される方はこのコミュニティで実践の研究をされるのを強くお勧めします。新しい時代の要請に応える道だと思うのです。

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本業で社会課題を解決する研究と実践のコミュニティーです。

建築事業者のCSV経営の根幹、職人育成をトータルサポートします。


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