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職人にこそ知ってほしい、スモールビジネスの鉄則

現在、大阪にて第19期職人起業塾の研修講座を開催しています。職人を始めとした建築実務者向けに自律循環型ビジネスモデルを構築するための座学と実践の研修を行う半年間にわたる講座です。先日行った第4講では「スモールビジネスの鉄則」をテーマにして地域ビジネスに取り組む工事会社が業を成り立たせるために外すことができない大事な概念、考え方を伝えました。シンプルですがとても大事な思考を若い方、特に職人に広く知ってもらいたいと思うので、ここでもその要点をまとめておきたいと思います。

弱者には戦略が必要

スモールビジネスとは、一般的には潤沢な資本力を持たないビジネスの意味で、明確な定義は定まっておりませんが、定量的には資本金1億円未満の中小企業がそのカテゴリーに当てはまります。ただ、私が定義しているスモールビジネスとは資本金での線引きではなく地域に根ざした地域ビジネス全般のことを指しています。大企業とスモールビジネス企業との違いはたくさんありますが、資本の他にも知名度や事業者が持っているリソースの違いが大きいと言った方がもっとわかりやすいかも知れません。潤沢な資本力があると言う事は、採用の段階から優秀な人材を集められるし、人材育成や研究開発への費用をかおけられるし、特許等の独自技術を補助することも可能です。このように考えると、マーケットが大手企業に寡占化されていく流れは止めようがなく、スモールビジネス事業所に勝ち目は無いように思います。しかし、日本に存在する企業の97%は中小企業であり、100年以上事業を継続している会社も圧倒的にスモールビジネスの事業所が占めています。小さいが故に変化に敏感に対応して変化を受け入れ生き残りやすい良い面がスモールビジネスにはありますが、持続可能性を高めるには守るべき鉄則があります。

脱、悪魔のサイクル

以前、このnoteで中小企業の悪魔のサイクルという記事を書きました。上述したように資金面に余裕がなく、人材採用や研究開発に投資出来ないと競争力が低下します。それが売り上げ、利益の減少に繋がり、更に未来への投資が出来なくなるとの負の循環です。これを断ち切るには今あるリソースを最大化するしか道はなく、そしてほとんどのスモールビジネス事業者が唯一持っているリソースは「人」だけです。飛び抜けて優秀な人材が集まっている訳ではないのにリソースになりえるか?と疑問に思われるかも知れませんが、逆転の発想をすると、小規模な事業者ほど、多くの役割を持てるし活躍できる場がふんだんにあるとの見方も出来ます。そして、人は誰しもが大きな才能を持っていて、普段顕在して使っている能力はたった3%と言われます。潜在能力を開放することによって、大きなリソースになりえるのです。
悪魔のサイクルについてはこちら、

学びと研鑽が全ての起点

そこにいる人の効果性を最大化する、人の才能を開花させるのに必要なのは教育です。そして、教育は大きな投資を必要とせず、時間の使い方をマネージメントすることでできるようになります。スモールビジネスの鉄則の一つはその時間の使い方を意識することで、今、目の前のタスクではなく、未来に向けて重要な教育、自己研鑽に毎日少しの時間を配分することから始まります。日々の学びで身につく能力はほんの微力でも成長した人が更に成長する複利計算的な成長に繋がれば圧倒的なパフォーマンスを発揮する人物になり得ますす、事業所にとって立派なリソースとして大きな力を発揮します。

在り方が強み

2つ目は、無い無い尽くしのスモールビジネス企業のリソースを最大限に活用する強みの見出し方です。マーケティングの世界ではUSPやコアコンピタンスと言った競合他社と比較して抜きん出る強みを持たねばならないと言われます。しかし、上述の通り、絶対的に必要だと言われるその強みをスモールビジネスでは「人」に求めるしかありません。ではどのようにして顧客にとって卓越した存在になるのか?その問いに対する答えは明確です。人は人との関係性の中で信じられるものを選択します。住宅のような高額商品でも購入を決めた理由をアンケートを取ると、営業マン、設計者、経営者等の担当者が信頼できたから。との回答が一番多い結果になります。目の前の人に真摯に、誠実に、その人の立場に立って物事を考え、常に在り方を正して行動するだけで狭いマーケットの中では卓越した存在になります。

一期一会

スモールビジネスの鉄則として最後に留意すべきは、関係性の中で培ってきた信頼、初めは細い意図のような関係を継続して太い絆に紡いでいくことです。江戸時代の商人は火事になると大福帳を井戸に投げ込んでから避難したと言われます。家財や商品はまた稼いで買い戻せば良いが、顧客との繋がりを詳細に記した大福帳がなければ商売を1から立ち上げなければならなくなる、そこには無限の売り上げが蓄積されているとの意味です。大した商品や技術、ブランドとしての認知がないスモールビジネスはどうしても経営が不安定になりがちです。その課題を解消するのは信頼で結ばれた多くの顧客と長年に渡って繋がりつづけ、繰り返しの注文や紹介による新しい取引を始められる自分独自の市場を構築するしかありません。ご縁を大切に、一度の出会いを一生のお付き合いにする「一期一会」の精神こそ、スモールビジネスの鉄則の最重要な概念と言えると思っています。

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職人が現場で実践できるスモールビジネスの鉄則を伝えています!


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