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マネタイズだけじゃ満足できない若者たち

職親プロジェクトなる犯罪を犯してしまった就職困難な人たちに対して仕事を提供し、親のように親身になって寄り添う事業者が集まってのプロジェクトがあります。そのフラッグシップモデルとして有名なのが大阪の野田にある良心塾です。代表の黒川塾長はご本人も裏社会に足を突っ込みかけた経験の持ち主で、受刑者の再犯防止の環境づくりに人生をかけて取り組んでおられます。学歴社会からこぼれ落ちた若者たちにモノづくりを通して安心して未来を見据えて生き甲斐を持って働ける職場環境を提供したいと職人育成の学校プロジェクトを進めている私とは目指す方向がほぼ同じということで全力で協力、協働していきたいと思っています。

ソーシャルイノベーションの夜

そんな黒川塾長が率いる良心塾では現在怒涛のイベント月間真っ最中で、先週開催された人の生と死を見つめるドキュメンタリー映画「いきたひ」の上映会イベントでの長谷川監督の講演に続いて、昨日行われた、日本のESG投資の先駆けと言われる鎌倉投信の創業者であり、デジタル地域通貨eumoの代表取締役である新井氏とその新井氏をして「日本の経済・未来を変える逸材」と言わしめた24歳のソーシャルイノベーター田村氏との対談イベントに参加してきました。eumoのCJOの武井さんには現在つない堂で行っている地域通貨流通の実証実験の開始に際して、色々とアドバイスを頂いていたこともあり、私が世話人を務めている経営実践研究会でアドバイザーとして頻繁かつ多大なご協力頂いている新井社長に改めてしっかりとご挨拶できたこと、そして日本の未来を変えると言われる若き社会起業家の思考や思想に触れられたのは稀有な体験であり、非常に有意義な時間となりました。

24歳の若者の志

株式会社COOONの田村社長は若干24歳にして6つの会社を経営しているだけでなく、社会課題の解決を事業そのもので行い、若者だけではなく大手企業や財団法人、ベンチャーキャピタルから多くの共感を集めて多くの事業をスケールされています。その圧倒的なスピード感と、いとも簡単に事業をマネタイズして収益化する力は私たち昭和世代のおっさんとは明らかに違う思考回路を持っているように感じました。そして、お金を稼ぐこと自体には学生時代の起業で早々に飽きてしまい、ただ単に稼げるだけの事業には魅力を感じなくなり、世の中を良くするソーシャルなビジネスに向き合いたい、世の中を変えたいと明確な意思を表明されていました。24歳の青年のその溢れる才能と高い志には心から脱帽した次第です。

障害者がスポットライトを浴びる世界

その田村社長が現在新規店舗の全国展開に注力されているのは、ダウン症の方々がバリスタとなって活躍、集中力がある才能を生かして新たな価値を共創するコーヒーブランド『HICARU COFFEE ROASTER』です。このお店では比較的簡単な工程で高品質なものを作れるレシピを開発し、チーズケーキやガトーショコラなどもダウン症の人たちが中心となって製造しており、大いに人気を博しているらしく、谷町6丁目の1号店では毎日売り切れ御免、週末は行列を作るくらいに繁盛してるとのことです。今までなかなか社会の表舞台で活躍出来なかったダウン症の人が人前に立ち、スポットライトを浴びて活躍出来る場を作った、そして持続可能なビジネスモデルに収益化して多店舗展開を初めているのは凄いことで、確かに社会を変えるほどのインパクトがあると感じました。

デジタルネイティブの圧倒的な能力

新井社長がインタビューする形式で田村社長のこれまでとこれからを質問する中で、それを聴いていて私が感じたのは田村社長のIT、ICTのリテラシーの高さです。デジタルネイティブと呼ばれる子供の頃からデジタル機器に慣れ親しんで来た若者達は思考自体がデジタルと親和性が高く、状況や環境に対する分析、技術やコンテンツの応用や転用する基礎能力が高いとの事実です。田村社長が「2回目の起業で教育コンテンツを作ってサービスをローンチしてすぐにマネタイズ出来た。」と軽く口にされていましたが、私達の常識ではサービス、コンテンツの作り込みに多くの時間と費用をかけてしまうのが、全く違うアプローチでサービスコンテンツをデザインしたのだろうと想像しました。情報革命が人に大きな影響を及ぼすのは当然ですが、これからデジタルネイティブが中心の世界に変わるのはまさに産業革命を凌駕する大変革になるのだと改めて実感した次第です。

金だけ稼いでも面白くねーよ

もう一つは価値観の変容です。私が二十代半ばの頃は一生懸命働いてはいましたが、(恥ずかしながら)とにかく金だけ、今だけ、自分だけ良ければ良いと目先の快楽と刹那に生きていました。世の中や世界の動向やそこに生み出される課題など気にも留めなかったし、興味もなく、ただひたすら自由に生きられることを夢見て自分のことばかりに執心してしまっていました。それに比して24歳の田村社長が「単なる金が儲かるビジネスに興味はなく、社会課題解決型モデルの事業でなければ魅力も感じないし、やる意味もない。」とキッパリと口にされたのは天と地ほどの違いがありますが、特筆すべきはその志向を持っているのは田村社長だけではなく、彼の周りに集まってくる多くの優秀な若者達が全員、ソーシャルビジネスにこそ価値があると思っていることです。新卒の大学生が就職先の企業を選定する際に留意する項目のトップに「社会に対する貢献度」が挙げられるとの記事は以前から知っていましたが、まさに現実としてCSV(共通価値の創造=企業の本業による社会課題の解決)経営が社会の要請になりつつあるのをひしひしと感じました。

イノベーション・日本

この度、田村社長への一問一答形式のイベントに参加して、チラシに書いてあった、新しいお金の価値を創ろうとされているeumoの新井社長がこれからの日本を変える若者を見つけた、と興奮されておられたのが良く分かりました。そして、私が強く感じたのは、確かに田村社長は才能も運も持っていると思うが、同じようにこれまで誰も解決出来なかった課題、課題として認知されて来なかった社会の歪みに対して新しい感覚を持ってパズルを解くかのように最も簡単にビジネスモデルとして成立させる若者がどんどん出てくるようになるのではないかとの期待です。天動説から地動説へと世代が変わったのに同調して常識がひっくり返った様に若者達の社会やビジネスへの認知が変わり今までの延長線上に無いイノベーションが次々と起こるそんな予感がしています。日本の未来は暗くないね。

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現場を起点にしてCSVのビジネスモデルを作る研修を行っています。


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