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マーケティングの陳腐化は時流で考える

梅雨の合間の晴れを狙って、今日は神戸の事業所から車で30分の身近な海外、淡路島に足を運びました。これから動き出すプロジェクトの開発・造成の実地計画の現地打ち合わせでしたが、なんと3件ハシゴ。都市部から程よい距離で自然豊かな絶好のワーケーションのスポットとして注目されている淡路島ですが、(まだ)神戸に事業所がある私たちに次々に大型の淡路案件のオファーを頂けるのは本当に不思議というか、ありがたいことで、念願だった淡路移住の計画を早々に進めなければと改めて思いました。ご縁に感謝です。その淡路への行き帰りで私が主宰する継塾にも通ってくれている不動産営業の鶴ちゃんとあれこれ話す中で、ここを丁寧に説明する必要があったのか!と気づきがあり、マーケティングを手放すべき理由を改めて書いてみたいと思います。

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陳腐化した「卓越の戦略」

私は大工あがりの工務店経営者で、全く経営の知識がないまま勢いだけで事業を立ち上げました。今から20年前のことです。当初は3人の大工だけでスタートしましたが、徐々にスタッフが増えるにつれ、経営者としての責任を感じ始めて、まずは継続的に売り上げが作れるようにならなければならんとマーケティング理論を熱心に学び始めました。私が学び、実践したのはスティーブンコヴィー博士が提唱した原理原則論を土台にした、当時世界ナンバーワンマーケターと呼ばれていたジェイエイブラハムが体系化した「卓越の戦略」です。それは、クライアントから絶対的な信頼を得て、卓越した存在になれるよう自分自身のあり方を見つめ、自社独自の強みを磨き、目先の損得にとらわれずクライアントを恋人を愛するが如く優先に考える、非常に日本的な商売感に基づいた本質的な戦略でした。その理論を学び、実践してきたおかげで20年間事業を続けることができたし、今があると言っても過言ではありません。しかし、20年前と今とでは全く違う状況で、時代の変化に適応する必要があります。

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失われたUSPの重要性

ジェイエイブラハムが幻の名著と言われた「ハイパワーマーケティング」の中で強く提唱したのはUSP(ユニークセリングプロポジション=自社独自のユニークな売り)をまず見いだす事でした。20年前、何の罪も持っていなかった私たちは、同業他社が行っていなかった社員大工をその強みに見出し、それを磨くべく社員研修に熱心に取り組んで現場接点を強化したり、大工による積極的なアフターメンテナンスを行うなどしてクライアントから厚い信頼を得ることに注力しました。当時は大工が毎年率先してアフターメンテナンスに顧客先を巡回する会社などなく、非常に喜ばれ紹介やリピートでの受注で授業が回るようになりました。もちろん今もそれは継続しておりますが、残念ながら同じような取り組みをされている会社が多くあり、特筆すべき強みではなくなっていると感じています。

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情報革命で世界が変わった

そもそも、中小零細企業が他社に真似ができないような独自の強みを持つ事は非常に難しく、何とかひねり出して新しい商品やサービスを開発し、人気を博したところで情報化社会の今ではすぐに同業他社にコピーされ陳腐化してしまいます。その後は結局、血みどろの価格競争に追い込まれ、お互いすり減らしながらどちらが先に倒れるかの我慢比べ的な消耗戦になってしまいます。また、世界を席巻するグローバルIT企業はインターネット内に構築したプラットフォームの力を拡大し、あらゆるローカルビジネスを飲み込んでしまいつつあります。日本の書店が次々に消え去ったように、それは私たち建築業界でも同じリスクを抱えています。今はもう表面的な売りが効くUSPを見出して磨いたところで、生き残っていける世の中ではなくなってしまったのです。

弱肉強食の資本主義の終焉

世界中から卓越したリーダーや最先端の頭脳が集まり開催されるダボス会議での昨年のテーマはグレートリセットだったそうで、貧富の格差が広がり続け、解決困難な問題を多く抱える競争原理に基づいた新自由主義的な資本主義の終焉と、新しい価値観、枠組みに沿ったその後の世界について話し合われだそうです。トップ数%の富裕層が世界の大半の富を掌握するヒエラルキー型社会では人々は幸せになれない事は明白で、多くの人がもっと自由と平和と幸せを享受できるフラットな世界に移行すべきだと言うとかその基本的な方向性です。また、近年は日本の義務教育でも教えられているSDGsに代表される持続可能な循環型社会を国連が採択し、世界中の国が批准して取り組みの気温が高まっていることも強欲的だ資本主義経済に対する閉塞感と風大が一致します。世界は大きく変わったのです。

マーケティングを手放す理由

ヨーロッパではamazonの不買活動が活発化しているとのニュースがありましたし、私も数年前から脱amazon活動として書籍をインターネットではなく近所の実店舗で購入するようにしています。ECサイトでの商品購入は確かに便利ですし、それ自体が悪いとは思いません。しかし、地域で経済が回らずに全てアメリカ本社に収益が集約されるようになると地域経済は空洞化の一途をたどります。単純にコストを比較する損得勘定や弱肉強食の世界での選択を繰り返すと結局、自分たちが住む街が成り立たなくなることに人々はようやく気づき始め、先日このノートでソーシャルバンクに預金が集まっている事例を紹介したように、金銭だけではない意図を重視するように世界中のマーケットのパラダイムが変わりつつあると様々な事象が示しています。そんな世界に競合他社に勝つための薄っぺらい売りが効く強みなど意味をなさなくなるのは当然です。以上がジェイエイブラハムが提唱したマーケティング理論をそろそろ手放す時期に来ていると私が判断した理由です。これからの社会に必要になるのは、競争ではなく共創で、いかにマーケットに共感を得られるかが重要で、そのためには確固たる軸を持つ必要があると思います。次回の継塾では参加者の皆さんとその辺を一緒に考えてみたいと思っています。

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