街の散髪屋が起こす社会課題解決と理念
散髪が好きです。椅子にゆっくりと座って髪の毛を切ってもらったり、ヒゲを剃ってもらうのはとてもリラックスできる良い時間で、近所にあるお気に入りの散髪屋さんに月に3回は通う大の散髪好きです。また、散髪は個人的に良い時間を過ごせるだけではなく、身だしなみを整えるのはコミニケーションの入り口であり、社会生活にとって非常に重要な事でもあると思っています。
散髪はコミュニケーションの基本
私が主催する建築実務者を主な対象としたビジネススクール、職人起業塾では、コミニケーションの講座が組み込まれています。関西の接遇業界の大御所、JALアカデミーの立ち上げから関わられている横山桂子先生に講師をお願いしており、CAと同じ高いレベルの接遇のスキルを職人たちに伝授してもらっています。
横山先生によるコミュニケーションの基本とは、非常にシンプルで、相手の立場に立って物事を考える、相手が心地よい時間を過ごせるように気配りをすることに尽きます。言葉遣いや態度、姿勢も重要ですが、その心を持っていることが何よりも重要だと説かれます。そしてメラビアンの法則から、汚れた作業服を着ることが多い職人たちに対して、初見で見た目の不快さを相手に与えない事が最も留意すべきことであり、とにかくマメに散髪に行きなさいと塾生たちに愛を持って厳しく指導されます。散髪、整髪はコミニケーションの非常に重要なファクターなのです。
散髪屋が持つ絶大な影響力
私が通い続けている散髪屋さんは、非常に技術的に優れたお店で、全国の技術コンクールで入賞を繰り返したマスターだけでなく、若いスタッフ達も熱心に技術を磨きコンテストにエントリーし続けています。街中の散髪屋さんでは珍しい全国レベルの確かな技術を全面に打ち出したお店です。
また、頻繁に散髪に通い続ける中で、様々な話をする様になり、マスターとは同い歳と言うこともあって、ゴルフやマラソンなどの趣味の話や、集客をどうするか?などのビジネス的な話も良くする様になりました。挙句、マスターに引き摺り込まれる様にロードバイクを買って、一緒にツーリングに行くほどの深い関係になりました。既に私の生活から切り離せない存在です。(笑)
在り方を見直し表出する必要性
今日も散髪に行くと、そんなマスターから、いつになく神妙な顔で相談を受けました。それは「経営理念を作ろうと思うのですが、よく分からず困っている」との事でした。その理由は理容学校を卒業する若者のリクルートにパンフレットやWebサイトを見直していて、経営理念を明確に示せていないことに気づかれたからで、新卒スタッフを採用するには単にお金が稼げるとか、技術的なサポートをして立派な理容師に育てるとかの、今まで通りの昭和の価値観ではマズイと言うか、理容師になる若者が圧倒的に減ってしまった今、若者に魅力を感じてもらう打ち出しが必要不可欠になったとの切羽詰まった事情がある様でした。技術を磨き、マーケティングを学び、予約でいっぱいの人気店になっても悩みの種は尽きないと言うか、持続性に目を向ければ人の問題に向き合わ無ければならない、それはやり方ではなく在り方を突き詰めることなのはどんな業種も同じだと改めて感じました。
なぜなぜを深く繰り返す
そんな相談を受けて、私がマスターにアドバイスしたのは、何のために散髪屋をやるのか?その問いに対して、生活の為とか、お客様に喜んでもらいたいとか、当たり前過ぎる表面的な答えではなく、もっとなぜ?を繰り返して、地域に存在する地域に生かされる事業所としての存在意義を考えて見るのをオススメしました。
マメに散髪に通うと誰もがいつもこざっぱりしてその人なりにカッコよくなります。それは本人にとって気持ちの良いものですが、そこから生み出す価値をしっかりと認識してお客様に接する事で、単に見た目がさっぱりするだけでなく、付加価値を渡せる可能性があります。
散髪屋の地域課題解決
例えば、と私が例に挙げたのは、散髪の時間で客と様々な話をする中で、見た目がカッコよくなった若者に中身のカッコ良さを伝える事も出来るはずで、多趣味のマスターの経験や知識を提供して、若者にライフスタイルでのカッコ良さを気づいて貰う事が出来るのでは?との提案です。
見た目も中身もカッコ良くなった若者がモテモテになって、彼女が出来たり、結婚するキッカケを生み出す事が出来る可能性もあります。所帯を持つからとモチベーションを高めて仕事に打ち込む人もいるでしょうし、結婚して子供を作る家庭が増えるかも知れません。そもそも散髪はコミュニケーションの入り口ですし、地域社会に大きな貢献が出来る、地域の解決困難な難しい課題を解決する可能性を十二分に秘めています。
理念とは存在意義の実現
なぜ散髪屋をやるのか?との問いの答えとして、地域に住まう若者の幸せな暮らしや若者の婚姻比率を高めたり、少子化問題の解決まで掘り下げて存在意義を見直してみれば自ずと経営理念も生まれてくると思います。そんな大きな志と社会課題解決の可能性を持つ散髪屋に若者はこぞって集まってくるのではないかと思うのです。知らんけど。(^^)
私としては卓越した技術とセンスを持った散髪屋さんがずっと地域にあって欲しいと思いますし、そのお手伝いができるなら出来る限りの協力を惜しまないと思います。それだけで十分、存在意義も価値もありますが、ご本人は中々気付かないのかも知れません。マスターの健闘を祈ります!
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地域の課題、社会の課題に取り組む事業所の人材育成のサポートを行なっています。