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再定義しまくる習慣のススメ #知的資産経営と螺旋的成長

私が代表を務める株式会社四方継では社名と事業ドメインを変更して3年目を迎える第22期目の来年に向けて、現在、兵庫県行政書士会の知的資産経営推進チームの支援を受けながら知的資産経営報告書※の作成を行っています。昨日は事業承継の取り組みの対象者であるリーダーシップチームに対するヒアリングを行って貰いました。(写真はその時の模様です。)社内にある暗黙知を見える化する取り組みを進める中で、そこはかとない違和感を感じたのは、前回、事業承継の取り組みをスタートするキッカケにすべく知的資産経営報告書を作成した2015年時と現在では私にとって知的資産を始め、それを構成するファクターの言葉の定義が大きく変わっていることです。そこで気づいたのは、私は常日頃から言葉の定義を考え直すのがすっかり癖になっていると言うことでした。

※知的資産・知的資産経営とは
「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。
これは、特許やノウハウなどの「知的財産」だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です。さらに、このような企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。
出典:経産省HP https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/teigi.html

再定義から始めよう

私に言葉の再定義は繰り返し行ったほうがいいよとアドバイスしてくれたのは古くからの友人であり、尊敬している茶人、小早川宗護先生です。20年近く前によくマーケティング理論の勉強会でご一緒していた際に、茶の湯の概念から紡ぎ出した彼独自の接客(おもてなし)の理論を聞かせてもらう機会があり、まず初めに「お客さんとはどういう存在か?」を再定義するところから始めるべきだと聞いたのを今でも覚えています。当時私は熱心にピーター・ドラッカーやジェイ・エイブラハムの本を読んで古典的マーケティング論に傾倒しており、「顧客は誰か?」からマーケティングはスタートするんだとの理論と共になるほどと、深く納得した覚えがあります。

卓越の戦略の本質は再定義

今思い返せば、私はその当時から耳になじみきった言葉を改めて見直し、再定義することが癖のようになってしまった気がします。ジェイ・エイブラハムは顧客を「恋人のように扱え」と繰り返し言っておりましたし、彼がマーケティングの世界で圧倒的な存在感を示すことになった、多くの企業を世界規模の成功に導き金字塔を打ち立てた「卓越の戦略」では顧客は守るべき存在だと定義し直しました。実は私達が全顧客に対して毎年無料のメンテナンスサービスを積極的に行い始めたのも卓越の戦略に影響を受けての取り組みでした。顧客を「工事を依頼してくれる人」から、安心と安全を届ける対象だと再定義した結果です。

卓越の戦略
•あなたから何か買う人は、単なる「顧客」ではなく、あなたの保護下にある「クライアント」と考えるべきである。
•クライアントの生活をより良いものにする、という高次の目的のためだけに、ビジネスに取り組む。
•惚れ込むべき対象は、自分の商品ではなく、クライアント。
•クライアントが言葉に出来ない想い、ニーズ、課題を明確に表現し、それを満たすリーダーとなる。
•あなたやあなたの会社、商品、サービスがなかったとすれば、クライアントにとって損になる程のレベルで商売をする。
•あなたとクライアントの双方が、信頼、誠実、尊敬の対象となるような精神的な「きずな」を構築する。

再定義がもたらしたモノ

そんな原理原則に則ったマーケティング理論を愚直に実践して来た取り組みは私達に大きなアドバンテージをもたらせました。私達の顧客に対する姿勢(在り方)に共感くださった方々から紹介やリピートの注文が相次ぐ様になり、元請け工務店では珍しく10年以上前から一切の宣伝広告を排して、まるで京都の老舗漬物屋さんの様に持続可能性が高く、外部環境に影響を受けにくい無販促営業を続けられる状態になったのです。顧客に対する再定義が私達、株式会社四方継のビジネスモデルの根幹を作り上げて来たと言っても過言ではありません。

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資本主義も再定義

前回、2015年に知的資産経営報告書を作成した際は「卓越の戦略」をフラッグシップにした古典的マーケティング理論の実践が私達の強みであり、在り方であるとジェイ理論の影響が色濃く反映されていました。現在も基本的にはその延長線上にあるのですが、今回の知的資産経営報告書作成ではマーケティング的な思考から完全に抜け出して、企業ドメイン自体を再定義した私達の方向性を明らかにしたいと思っています。顧客は守るべき存在から共生、協働するパートナーであり、私達は自社独自のマーケットを作る事を目標に据えるのではなく、マイクロな地域経済のハブ的存在となって地域経済自体を押し上げ、活性化する役割を担おうとしています。その再定義した在り方を示したのが、最近、私が研修講座でも熱心に伝えている「新・卓越の戦略」であり、時代の急激な変化を鑑みて再定義をしまくった結果です。そこにあるのは強みを振り回して自社独自のマーケットを作り上げる弱肉強食の資本主義的思考ではなく、共感や信頼、評判、関係等、これまで企業の評価において価値として認められなかった、目に見えない資本を蓄積するべく、事業所、ビジネス自体を社会課題解決の機構や仕組みであるべきだとの在り方であり、「目に見えない資本主義」を提唱された田坂広志塾長がその著書で提唱された新たな資本主義への再定義です。

新・卓越の戦略
•あなたから何か買う人は、単なる「顧客」ではなく、あなたと継続的な共生関係にある「クライアントであり、コミュニティーメンバー」と考えるべきである。
•クライアントの生活をより良いものにする、という高次の目的と同時に関係するステークホルダー、地域、環境にも寄与するべくビジネスに取り組む。
•愛し大切にすべき対象は、自分の商品ではなく、クライアントを含む地域社会であり地球環境
•クライアントが気付かない潜在的な想い、ニーズ、課題を共に探求し、それを満たし、解決するパートナーとなる。
•あなたやあなたの会社、商品、サービスがクライアントにとっても地域社会にとっても不可欠なレベルで商売をする。
•あなたとクライアント、関係するステークホルダー、そして地域社会が、信頼、誠実、尊敬しあう精神的な「きずな」で結びつく

再定義しまくる習慣のススメ

この度の知的資産経営報告書作成で改めて感じたのは、普段から身の回りのあらゆるモノやコトに対して定義を見直す習慣を持つことの大切さです。
顧客とは?仕事とは?大工とは?家とは?会社とは?デザインとは?社会とは?人生とは?世界とは?愛とは?優しさとは?正義とは?人間とは?
誰もが分かっているはずの言葉に対する定義は実は千差万別で人それぞれです。そしてどのような定義であってもその人にとっての正解であり、何人たりとも他人の定義を強制することは出来ません。そして、世に蔓延る多くの問題や課題を乗り越えて人が幸せになるには、(経済だけではない)成長と成熟が必要であり、定義を見直す、以前の自分の思考を否定して刷新を繰り返らすことがヘーゲルが弁証法として提言した螺旋的成長に繋がるのではないかと思っています。考えれば考えるほど良くなるのが原理原則に基づいた自明の理だとすれば、考えない、思考を停止するのは陳腐化を招き、衰退と破綻、滅亡への道であり、怠惰へと誘う悪魔の誘惑だと思います。再定義を習慣化することこそ、事業所にとっても、人にとっても成長への扉を開くと思うのです。なんでもかんでも再定義しまくること、強くお勧めします。

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地域と共生する共感資本モデルを目指してます。

現場実務者の再定義を行う研修事業行ってます。

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