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対処と根治、その思考の間にあるもの

誰にも必要とされていないモノやコトは商売にならないのは自明の理。だとすればあらゆる事業は必要性を持っているべきで人が抱える課題・問題の解決がその根本にある。営利、非営利の別にかかわらず、また顕在化している、潜在的な認知されていないの別にもかかわらず何かしら人の持つ課題や問題、不満の解消こそが事業の存在意義であり理由であるのは間違いありません。それを行うことによって人の暮らしが良くなったり、満足したり苦しみから解放されるために事業があるし、その繰り返し、積み重ねによって人類は発展してきました。そして、課題、問題解決の対価が支払われることによって事業は商いとして成り立ってきました。

産業革命

課題を見つける課題解決

食料が不足していた時は農業が、住むところに問題があった時は建築が、重労働を解消するために機械産業が、他国からの侵略に備えるために軍事産業が栄えてきました。18世紀の産業革命以降、その課題・問題解決のスピードは急速に早まり、先進国と呼ばれる国々では世の中にモノが溢れるようになり物質的な豊かさを享受する様になりました。モノが行き渡るようになると次はコト、体験としての快適さ便利さを提供するサービス産業が時代の主役となり、あらゆる産業はサービス産業化していると言わ始めて久しいです。
人の営みに欠かせない衣食住といった基本的、表面的な課題や問題が大まか解決された今、人は何を求めているのか?人は何に対して幸せを感じるのか?との命題に対する答えを模索するようになりました。マーケティングやブランディングといった商売の種とも言うべき課題を探すための手法、課題を見つけられない事業者を助ける課題解決が大いに盛り上がったのがこの20年で日本でもすっかり一般化したと感じています。

対処思考の一般化

一般化すると言うのは、同時に陳腐化することでもあります。マーケティングやブランディングと言う言葉を今や誰でもが口にするようになりました。しかし、そもそもの根幹である、人が抱える潜在的な問題解決や、まだ気づいていない幸せを提供するとの目的を見失った、もしくは目的自体が存在していることさえも理解していない人がマーケティングやブランディングの仕事をしていると口にされたりします。そして、その類の人たちの共通点は時間をかけてでも世の中を良くしていく根本的解決の思考を持たず、とにかく目先の利益、楽して金を稼げる効率化、上っ面のコミニケーションで顧客の財布の紐を緩める手法にばかり重点を置いて、その場しのぎの対処を繰り返そうとすることです。そんなことをしていても、持続性の高い事業になるわけがないと思いますが、マーケターやブランド構築のコンサルタントを自称する人はほとんどが集客と目先の収益を成果としてコミットされており、事業者もそれを喜んで受け入れているのが現状です。そして、そんな上っ面の成功事例をみては表面的なマネをしようとする人が溢れ出したのが一般化ではないかと思うのです。人が抱える課題や問題の解決はすっかりおざなりにされてしまっている感が否めないのはとても残念に思います。

知っているけどしない、出来ないのがスタンダード

人が抱える大きな課題の一つに健康があります。身体を健康に保つには適度な運動と適切な質と量を摂る食事だと誰もが知っています。平素から体調を整えることに留意していれば、肥満になることも、生活習慣病と言われる疾患に罹ることもないし、病院に通いお金と時間をかけて副作用を覚悟した投薬を受けることもありません。誰しもが健康状態を整える意識を持ち、知っていることをそのまま実行に移せば快適な生活を送ることが可能です。健康を維持するとの重要な課題解決には根本的解決のアプローチがあり、そして誰もがそれを知っています。この原理原則論の認知と実行の関係はそのまま事業、商売にも当てはまります。集客が出来ないのは平素からの認知が足らないからであり、受注が取れないのは信頼関係が構築出来ないから、クレームが発生するのは殆どヒューマンエラーであり人材育成、教育に注力していない結果です。これらのコトは経営者であれば誰もが気づいているし、知っているはずですが、それぞれの課題に対して根本的解決のアプローチから目を逸らして、表面的な対処に奔走するし、その薄っぺらい課題解決を提供するコンサルタントやマーケターが活躍するのが今の現状です。

原理原理原則を学ぶ職人起業塾

本質から目を逸らす理由

私が長年、生業として住み続けている建築の世界では、あらゆる問題の根本解決は人にあります。技術力、提案力、コミュニケーション、運営能力等々、事業を継続するのに必要な実務は作ること(product)売ること(marketing)回すこと(management)が殆どであり、そこに携わる人材の育成、教育、成長が事業の全てを支えます。人材を育てるには、長年に渡って従事してもらえるように人事制度の整備や意思疎通を行う場が必要で、結局、人に向き合うことが事業が抱える課題の根本的解決に繋がります。誰でも分かりそうな簡単な理論ですが、建築業界ではモノづくりを担う職人を正規雇用して育てる事業者は皆無なのが現実です。その解消を目指して私は5年前に一般社団法人職人起業塾を立ち上げ、全国で人材育成と制度設計の見直しを訴え続けてきましたが、この当たり前の事に取り組まれる事業者は未だ全体から見れば極少数で、私の話を聴くと皆さん納得された顔をされますが、なんらアクションを起こさない経営者が殆どです。そんな活動を続ける中、多くの人は課題・問題に対して表面的な対処に終始して、(そもそも知っているはずの)根本的な解決の方法を選択しないのはどうしてなのか?との問いが私の中でずっとあり、なんとも言えない違和感が胸の奥に溜まっています。

原理原則と乖離した世界

最近になって、私が気づいたのは、事業とは人が抱える課題、問題を解決するための営みである。その認識が世の中一般的に欠落していると言う事実です。かく言う私も、大工から起業して商売を始めた時に必死で考えたのは、どんな仕事をしたら誰かのためになれるか?ではなく、どうすれば仕事を受注できるか、どうすればスタッフに安心して働いてもらえる環境を作れるかと言うことが中心でした。それから20数年経った今、当時考えていた事、やっていたことを振り返ると赤面するほど恥ずかしいですが、私の場合はご縁に恵まれ、先達から様々な学びの場を与えてもらう事が出来ました。そして、商売を持続させるのに必要なのはやり方ではなく在り方だと、本質に目を向ける様に説かれました。私の場合、たまたま、ひょんなご縁を貰ってその様な環境に身を置くことが出来たので根本的解決に根差す思考へと意識を変容させる事が出来ましたが、それが無ければ自ら問いを立て、学び続けることを繰り返す事もなく今も起業当初と同じ思考だったかもしれません。

知るから出来るへのプロセスの存在

知っている、やってみる、分かる、出来る、出来ている状態を保てる。それぞれの間には目に見えない高い壁があり、意識も努力もする事なくその壁を越える事などありません。「思考は現実化する」とのナポレオンヒルの有名な至言は壁を越える思考を持つことで必ずひとつずつ課題を解決出来る、その蓄積の上で現実を変える事が出来るとの意味だと思っています。そして、誰もが薄々は知っている、でも信じきれない事業や商売の原理原則を実装するには深く、繰り返し学び、実践と検証を繰り返す場が必要です。このプロセスの存在をまず知ること無くして、多くの人(マーケット)からの信頼や支持を得て持続可能な生き甲斐を持って働ける事業の組み立ては出来ないと思うのです。つい先日も私が主宰する継塾に通われる様になった起業してまも無い経営者が「自分の志が何かが分からない、目先の利益のことばかりに囚われて志なんか持てる状態にない。」と苦しそうに心境を吐露されていました。「はじめは誰もがそんなもの、そこに意識を向けて自問自答を繰り返す事が原理原則に則った根本解決思考の入り口です。粘り強く頑張って!」とエールを送っておきました。

誰もが知っているマイノリティこそチャンス

「当たり前のことを当たり前に行うのこそ最も難しい。」と楽天の三木谷社長が昔、記者会見で話していましたが、その言葉の真意とは、当たり前のこととは原理原則を指しており、現代社会は原理原則と反した構造になっているから難しいという意味だったのだと思います。今の世の中では根本的解決の思考はマイノリティであり、対処的思考がスタンダードになってしまっている事を示唆されているのだと感じました。しかし、時代の変化が大きな時ほど、ブレない軸を固めるべき、本質的な価値提供=人が抱える課題・問題の根本的解決に根差す思考こそが今の混迷を極める世界に向き合い、生き残るヒントではないかと思っています。毎月無料でオンラインとオフラインのハイブリッドで開催している継塾、またコロナも落ち着き精力的な活動を再開した一般社団法人職人起業塾で当たり前の事に気づく、考える場を提供して行きたいと思っています。対処から根本へと思考を変容させる気付きと学び、そして実践の世界に足を踏み入れてみませんか?

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