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ギラギラではなくキラキラに Social Company Forum2022in宮城

先日宮城で行われたソーシャルカンパニーフォーラムに参加しての気づきと学びについてアウトプットを続けていきたいと思います。イベントタイトルになっている文字の通り、ソーシャルシフト(社会課題解決に本業で取り組むビジネスモデルへの転換)した企業が集まり、その志や実践の中で得た経験や知見を共有し、その場に集まった150社以上の事業所の経営者と新たなチャレンジを進めていこうとのイベントは心の芯で感じることが非常に多い深い学びの場でした。そして、登壇者も参加者も全員が抱えてるのは理想と現実の乖離であり、それが解決すべき課題や問題として提起され、人と出会い感じ、考えることで解決する糸口を模索します。先日のnoteでも紹介した宮田運輸の宮田社長もその例に漏れず、運送業界と言う肉体労働系の事業所で社員との意識の乖離に随分と悩んでおられたとの事でした。

理想と現実の乖離

宮田社長はもともとご自身もトラック運転手を現場で行っておられましたが、若くして先代社長から事業を引継ぎ社長に就任することになります、大工だった私もそうですが、現場を深く知っている者が経営を行うようになると、最悪は自分で片付けることができる。との思考が頭のどこかにこびりつき、社員に対してコンセンサスを取ることなくトップダウンで指示命令を行ってしまいがちです。そのような関係では社員は納得も得心もしないまま言われるがままモチベーション低く働く環境となり、最低限をこなす、口を開くと不平不満ばかり言うようになったとの事でした。昔の私と全く同じです。もっと良い会社にしたい、世の中に貢献して社会的な存在意義を示せる会社にしたいと社長が考えても、全く社員からの同意を得られずにどんどん理想と現実が乖離していくのを感じて悩んでいたとの事でした。

阪神淡路大震災での気づき

そんな宮田運輸が大きく変わるようになったきっかけは奇しくも阪神大震災で道路が分断され大きく遠回りするルートを一昼夜かけて飲料水を被災地に運び込むと言う誰もが嫌がるような厳しい仕事の依頼を受けた時だったとのことです。きつい仕事を勝手に受けてきた社長に対して社員は当然反発、とにかく行ってくれと無理矢理送り出したと言われます。しかし、被災地への配送を超えて戻ってきたドライバーたちは口を揃えて次の荷物(飲料水)を積んですぐに被災地に出発すると言われたそうです。「被災者たちに次の配送もすぐに手配するようにするからと言ってしまったので、ぜひとも直ぐに行かしてくれ」と睡眠不足をモノともせず口にするドライバーたちを見て、誰もが良い心を持っており、人の役に立ちたいと思っているのだと改めて気付かされたと宮田社長は語っておられました。そして、それを機に宮田運輸の大改革と快進撃が始まったとの事でした。

子供ミュージアムプロジェクト

絶望の事件

そんな宮田運輸に存続の危機とも言える大事件が起こります。運送の事業を行う会社につきものの交通事故、しかも重大な死亡事故が起きてしまいます。業務上過失致死で逮捕される社員、一家の大黒柱を失う遺族、どちらも地獄の悲しみに襲われます。その絶対に起こしてはならない事故の責任を経営者は一身に背負わなければなりません。取り返しがつかない出来事に生涯向き合い続けなければならない厳しい心の痛みと重過ぎる重荷は如何程か、同じ経営者として考えるだけでも胸が苦しくなります。特に私は大工になる前に運送会社で働いており、自分自身も事故を起こしてしまった経験もあるし、同僚が死亡事故を起こしてしまったのを間近でみていた事もあり、30年以上前の出来事を思い返してしまいました。死亡事故は事業の存続にも関わるほどあってはならない事件です。

無くすのではなく生かす

宮田社長は自身のことをトラックが大好きな運送会社の社長だと自己紹介をされておられましたが、絶対にあってはならない死亡事故の発生を機に、人の命を奪う可能性がある運輸事業自体が社会に問題を生み出す存在ではないかとの疑念を持つようになられました。この世からトラック配送の仕事がなくなった方が良いのではないか?との自問自答を繰り返されたと言います。しかし、物流のインフラは経済や人の営み、世の中を支えるとても大事な仕事です。物が運べなくなると人の暮らしはエリアごとに分断され、自給自足の縄文時代に逆戻りしてしまいます。無くすことができないなら、生かすことを考えようと、発想を転換して絞り出したのが運送事業を通して世の中の課題を解決するとの存在意義です。それが今や日本だけでなく世界中に広がりを見せ始めているトラックの箱に子供達の絵をラッピングする子供ミュージアムプロジェクトでした。

課題を解決することの価値

子供ミュージアムプロジェクトは悲惨な交通事故を起こしてしまった経験から、2度と同じ過ちを繰り返すまいと心に刻み、どうすれば出来るかを考え抜いた結果生まれました。トラックドライバーが助手席に子供や家族の写真を飾っているのにヒントを得たとのことですが、小さな子供を同乗させて乱暴な運転をする運転士はいないし、上述の阪神淡路大震災の際にドライバーが見せた善なる心を誰しも持っていることを踏まえて発案されたとのことです。宮田社長は言われました、自社の事故を撲滅して利益を還元すると言っても社員は何も感じない、しかし、大阪の事故を無くそうと言うと社員は喜んで取り組もうとする、日本中、世界中の交通事故を撲滅しようと声を掛ければ自分から主体的に動いてくれる。世の中を良くしたい、そんな純粋な想いを事業にすることが大事ではないのか、魂が震える様な真摯に誠実に世の中の課題や問題に向き合い、解決への道を探り、実践することこそ、社員の持つ大きな力を発揮させることになり、それに付随して収益が上がり、事業が発展するのだと気付かれたとのことでした。「愛でいけるやん」とのドキュメンタリー映画のタイトルにもなった宮田社長の言葉、そしてギラギラした大人では無くキラキラした大人になりたいし、そんな人が増えて欲しいと最後に結ばれたのが強く印象に残った、勇気を頂ける素晴らしい講演でした。

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人が誰しも生まれながらに持っている良知を開く研修を行っています。


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