職人の効果性を最大化する小ロット多品目生産方式 @株式会社西川紙業
昨日は京都へ。
廃れゆく業界、業態だと思っていた私の思い込みを大きく覆された紙業界で独自の進化変容を遂げながら半世紀以上の長年にわたり事業を継続されている株式会社西川紙業社に工場見学と御朱印帳制作のワークショップに参加させてもらってきました。(アイキャッチ画像は西川紙業社のHPより拝借)
ペーパーレスが正義になった世界
テクノロジーの進化とともに世界中でDXと共にペーパーレス化が進み、また、茶道や書道等の日本の伝統文化に親しむ人口が圧倒的に減り続ける中、紙製品の加工製造はどんどんマーケットが縮小しているのは(私の想像と大きく違わず)紛れもない事実のようです。そのような厳しい状況の中、もともと色紙の製造を中心に紙製品の加工製造を手がけていた西川紙業社では職人の技術を強みに、様々な関係先とコラボする形で新たな商品開発を積み重ねられ、厳しい時代の荒波をものともせず、安定した事業を実現されています。業種業態は違えども、ものづくりに勤しむ者として今回、工場見学の機会を頂けて、非常に良い勉強をさせていただくことができました。
元を正して末を広げる
ご案内いただいた西川社長曰く、「もともとうちは色紙屋ですから、色紙製造で培った技術を生かせる道を探って次々と新しい商品を開発してきました。」とのことで、色紙の需要が下がり続ける中、お寺さんとコラボして御朱印帳の製造に乗り出し、デザイナーと組んでお寺さん独自のオリジナル商品を開発するなどトータルの提案までしておられるとの事でした。その他にも、アニメキャラクターをモチーフにしたミニ屏風や、写経専用の用紙、和紙を使った和綴の冊子の装丁、厚紙を使った化粧箱の製作など、基本となる根幹の生産ラインを活かしつつ、枝葉の部分のデザインや仕様に工夫を凝らしてこれでもか、と言う位の小ロット多品目化を実現されておられました。まさに元を正して末を広げる経営で多品目化にかけるバイタリティーとアイデア、そしてコラボ先の幅の広さには舌を巻きました。
古きを活かし新しきを生む
大量生産、大量消費の時代は既に終わり、製造業は自分たちの強みを活かしながらユーザの細やかなニーズに適応した商品開発や供給が必要になったと言われて久しいですが、設備投資に多額の資金を必要とする製造業はいろんな商品を少しずつ生産するのが非効率で、生産性を落としてしまいがちだと言われます。西川紙業社は、もちろん、最先端のハイテク機器の導入もされていますが、50年前に導入した大きな古い設備機器をそのまま活かし、紙製品のデリケートな手仕事による仕上げ工程を女性スタッフに託すことで、その丁寧な仕事、職人の技術力を最大限に生かして生産性を落とすことなく新たな価値を生み出すことに成功されておられました。これが職人を抱える企業の強みだと改めて見せつけられたように感じましたし、モノづくり企業のこれからの進む道を示唆されているようにも感じた次第です。
効率ではなく効果性を高めるしかない。
産業革命以降の資本主義社会では効率を上げることが人々を幸せにすると信じられ、機械化によって圧倒的な生産スピードの向上を実現し続けてきました。しかし、今になって効率を高める事は決して人を幸せにするとは限らないと多くの人が気づき始めています。電動丸ノコを使うようになった大工が豊かになれなかったように、圧倒的な効率化はやがて市場に浸透し物の価値を低くして定着させます。西川紙業社が取り組まれたおおまかな工程の機械化と繊細な仕上げ工程の手仕事を掛け合わせることでしか成し得ない商品の開発はものづくり企業の持続可能性を高める素晴らしい仕組みであり、我々も大いに見習う必要があると感じた次第です。私たち株式会社四方継の建築部門、つむぎ建築舎でも世界に一つの愛着が湧く家づくりを目指してできる限り既製品を使わずに大工による手仕事によるモノづくりを進めています。その方向性が決して間違っていないと思える、背中を押してもらったような気持ちになった、非常に良い工場見学になりました。ご案内頂きました西川社長、イベントの企画運営をしてくださったメンバーの皆様には心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。
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次世代に引き継がれる価値のある丁寧なモノづくりを目指しています。
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