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安定したクソ仕事を辞めて理想の世界に足を踏み込んだ若者の泣けるプレゼンテーション。

私はいわゆる「朝活」と呼ばれる毎週1回、早朝に様々な専門分野の異業種のメンバーとのビジネスミーティングを行うBNIと言う組織に所属しています。参加した当初は、新しいチャプターを立ち上げるにあたり頭数を揃えたいからと頼まれて、お付き合い程度で参加したのが正直なところですが、今ではいろんな人とご縁をいただくのはもとより、信頼できる仲間と一緒になってお互いに貢献し合う「安心安全の場」にとても魅力を感じています。今朝もそのミーティングに参加して改めて「場の力」を再認識しました。

大企業を辞めた若者のプレゼンテーション

この朝活では、30名ほどのメンバーの中から毎週1名をピックアップして、自分のビジネスや提供する価値、どのような思いで事業に取り組んでいるかを10分間にわたり熱く語るメインプレゼンテーションの機会が与えられます。今日は今年になってから大企業を退社して、空き家活用という超ニッチというより、マーケットさえ存在しないジャンルで起業したばかりの20代の若いメンバーの大輔がその席に座りました。

大輔は製造系の一部上場企業を退職してフリーランスのDIYerというか、空き家リ活用事業をおこなっているフリーランスとして、個人事業主で起業しました。空き家リ活用とは、借り手がつかないボロアパートを大家さんから借り受けて、自分でDIYをして棲みやすくして股貸しするとか、使われそうもない店舗や施設を低価格で修繕してサブリースする事業で、借り手がつかず空き家を放置している大家さんも喜ぶし、圧倒的な低価格で小綺麗な貸家に住める店子も嬉しいし、大輔本人も生業を立てれるし、放置されて廃墟になりそうな空き家のメンテナンスが出来て地域も良くなる四方良しのスキームです。この様な仕組みがこれまで無かったのは収益性が低いとか、外壁や屋根等の共有部分のメンテナンス費用をどう賄うかなど難しい問題に誰もが尻込みしていたからですが、彼は持ち前の人の良さとポジティブシンキングで不動産業界の未踏の地に果敢に立ちむかっています。


絶望の世界からの脱出

超大手企業を辞めて、収益性も低く、問題が山積みの業態で起業したと聞くと、多くの人がなんてバカなことをしたんだと思うかも知れません。しかし、大輔は目の前の人にも世の中のためにもなる事業を行なっていると胸を張り、とても充実した、そして自由な毎日を送っている様で、傍目から見ても幸せそうに見えます。

今日の彼のプレゼンテーションは、安定した生活を投げ捨てて、自分が正しいと思う事を仕事にした経緯について詳しく語っておられました。彼曰く、大企業に務めていた10年間はずっと違和感を覚えていたとのことで、それは、会社自体も上司も本来行うべき仕事に向き合うのではなく、仕事をやってる風なアピールをして出世する、面倒な実務はできるだけ部下に押し付ける、自分だけが良ければ良い人ばかりの集まりだったからとのことで、そんな世界に絶望にも似た感情を覚えていたとのことです。

だんだん仕事に対する熱意が失われ、逃避したのが古い家を買ってDIYで再生することだったらしく、はじめは週末だけで気持ちの赴くままにやってみる程度の趣味の一環で始めたのが、思いのほかきれいに家が変わっていくのを見て、ちょっとした自信をつけたようです。彼はそんなタイミングでひょんなご縁で私が主宰する私塾、継塾に参加されました。そこで、真の顧客満足を追求し、本来行うべき仕事で出来る人への貢献を熱心に考え、実践することで未来の売り上げを作り上げるとの原理原則に則ったマーケティング理論とその場に集まった熱い志を持ったメンバーに触れて、自分が追い求めていた理想の世界があったのだと目から鱗が落ちたというか、今まで諦めかけていた世界に対する認識がガラッと変わったらしく、自分が正しいと思う事を実行してもいいのだと気づいたと言います。

営利こそが目的の世界

考えても見れば、私が起業した当初、安定した売り上げを見込める大手ハウスメーカーの一次特約店を辞めて、元請け工務店に変わったのも同じ様な理由でした。現場作業をしていると、大工目線で造作の収まり等でこうした方が良いと思いながらも現場監督に具申すると、曖昧な理由で却下される事が多く、たまに現場に立ち寄る施主と直接話すことさえ阻まれる状況に違和感を感じていました。

ある時、現場に立ち寄った施主から台所の片隅に神棚を作ってほしいと頼まれて、お安い御用ですと引き受けました。その後、ハウスメーカーの監督さんにその旨を伝えると、数日後に神棚を作るのをやめてくれと連絡が入り、次回施主と顔を合わせた時はろくに私と口を聞くことさえしてくれませんでした。よくよくその理由を聞いてみると、私がサービスのつもりで取り付けるつもりだった神棚の費用を現場監督は50,000円ほどの見積もりとして施主に提示していたようで、数千万円もかかる家を建て、神棚1つサービスで付けてもらえないのかと憤慨されていたようです。ピラミッド型のヒエラルキー構造の代表格とも言える建設業界ではごく普通のことだし、その大手ハウスメーカーの監督も着工してから出来るだけ多くの追加受注をもらうとの会社の方針に従っただけで悪気はなかったと思いますが、家を建てる施主の気持ちを考えるとやるせない気持ちになりました。そして、自分自身もその歯車を回す一員なのが事実であり、なんのために汗をかいて働くのか?との疑問が湧いて悶々とした日々を送ったのが今も記憶に残っています。

クソ仕事をやめて理想の世界に踏み出そう。

安定を人は好みます。しかし、安定を手にするために、自分が正しいと思えることができなかったり、あからさま納得できないことに手を貸したり、世の為、人のためにならないのを承知の上で与えられた仕事を淡々と行う様になれば、それはクソ仕事だと思うのです。一度きりしかない人生を、ただ家畜のように飯が食えて、暖かな寝床を得られる為だけに費やしてしまうことに疑問を感じて、大きなリスクを背負ってでも大手ハウスメーカーの下請け工事をキッパリとやめて、元請けの会社としてお客様に寄り添って、本当に納得してもらいながら喜ばれる仕事をしたいと思いましたし、そのために熱心に経営の勉強をして、職人から経営者へと思考を変えた様に思います。

正しいことがしたい。と私が口にして、事業、業態の転換を図ったのはかれこれ20年近く前のことです。それは、元請け工務店として適正な価格で建築工事を行うのと同時に、一緒に働くスタッフにも働きがいを持ってもらえるような、誇れる仕事をしながら豊かで安心できる暮らしを叶えてほしい。また、関係する職人さんや協力業者の方々にも喜んで取引してもらえる状態を整えるビジネスモデルの構築であり、自分だけが良ければそれでいいのではないという人が誰しも持つ良心に向き合って生きることのコミットメントでした。そんな理想の世界の実現に20年間取り組み続けて、未だ道半ばではありますが、少しずつは近づけてきていると思っていて、未だに熱く、青っぽく理想を語る私の姿に若者が未来への希望を持って、自分の信じる道に一歩足を踏み込んでくれたことは、私にとって非常に嬉しいことで、こんな小さな変化の積み重ねが世界を変えて行くのだと勇気をもらえました。弱肉強食で多くの人が金に振り回されているこの世界は思っているほど悪いもんじゃない。若者に、子供達にそう思ってもらえるように我々大人は理想を追い続けなければならないと思うのです。

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ひと、まち、暮らし、文化を継げる、四方良しの世界の実現を目指しています。




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