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行列商法VSロケーション商法 〜六厘舎と入鹿Tokyo〜

東京に来ています。この度、私たち株式会社四方継でも認定に向けてチャレンジする事になった未来創造企業:SSC(サステナブル・ソーシャル・カンパニー)の第三期認定式典が目黒の雅叙園で行われ、未来の自分達の姿をみておいた方が良いと勧められてやって来ました。認定された企業の経営者や社員さんの話を聴かせてもらい、大いに刺激を受けると共に、本業で社会課題を解決したいとの志の高く掲げる事業所が目に見えて増えていく様は本当に素晴らしいと感じました。日本の事業所のほとんどを占める中小企業が変われば、日本が変わる可能性がある。その胎動がすでに始まっているのを感じられる空気に触れたのは非常にいい経験になりました。

未来創造企業とは

SSC(サステナブル・ソーシャル・カンパニー)未来創造企業とは

「本業を通じた継続的な社会課題の解決」を事業目的の第一に掲げ、その実践により社会の価値や人々の幸福度を向上させ、よりよい社会を創り出すだけでなく、実践の結果生まれる利益を適切に分配(従業員等へ)・再投資することで企業の持続的な発展に努める企業」です。未来創造企業の推進を図ろうとする意欲のある中小企業を、一般社団法人日本未来企業研究所が「SSC(サステナブル・ソーシャル・カンパニー)未来創造企業」として認定する制度です。」

六厘舎と入鹿Tokyo

話は変わって本題です。東京での2日間、両日ともランチにラーメン店に入りました。初日は東京駅ビル内の東京ラーメンストリートの一番人気で最も長い行列が出来る六厘舎、2日目は六本木の東京ミッドタウン近くの少し人気のない路地にある路面店、入鹿Tokyoでした。両方とも行列のできるこだわりの人気店ですが、ラーメンを作るオペレーションが全く真逆なのがとても面白く、興味をそそられると共に、スモールビジネスの在り方を考えさせられたので、以下に考察をまとめておきたいと思います。

大ザル茹で麺方式

何が対照的だったかというと、一度に茹で麺器に入れる麺の量です。ひっきりなしに人が歩く東京ラーメンストリートに出店している六厘舎は、常に10名〜20名の行列が出来ており、麺茹で担当の人は一度に十人前くらいの麺を釜に放り込んで大きなざるで豪快に湯切りをし、冷水で締めた後、一人前の麺の量を秤で計測します。店内の席数はカンターとテーブルで30席くらいで、BGMで流れる津軽三味線がかき鳴らすリズムに追い立てられるように次々と客が回転するのに合わせて、とにかく工場での作業のようにどんどん麺を茹でます。一般的なラーメン店では一人前用の麺の茹でカゴで調理をするので、十人前もの麺を一度に大ざるで茹でる様は圧巻で、あまり見ることのない光景に非常に興味を唆られました。とにかく、どんどん作れば作るほど、いくらでも客は入ってきて回転するわけで、麺茹でのスピードがそのまま売り上げに直結する、大都会のど真ん中の絶好のロケーションでしかあり得ないスタイルは東京ならではの光景だと思ったのです。

行列による宣伝効果

今日、六本木で昼食を食べようと訪れた入鹿Tokyoでまた驚きました。今度は一人前用の茹でカゴが6つ時入る普通の茹で麺器を使われていたのですが、わざと一度に二人前ずつしか茹でないというこれもまた珍しいスタイルで、私達は3名でお店に入って、一緒にオーダーしたにもかかわらず、先に二人前だけが調理されて出され、もう一人前の麺はおもむろにその後に茹で麺器にほうり込まれたのです。どんぶりに入った麺を丁寧に整える様を見ていて、一度に多くの麺を茹でると麺がのびてしまうからか?と思ったりもしましたが、それだけではなく、このお店はカウンターと一つのテーブル席で10席程度のみで調理に時間がかかる分、行列が出来やすくなるのは当然で、調理の数を絞る事で行列を作る意図を感じました。ゆっくり時間をかけて調理すれば売り上げが下がりそうですが、行列が出来ることで逆に分かりにくい場所に位置するお店の認知を広げ、ブランドとして認めらようとされているように感じました。

儲かっているのは大企業

たかだか麺の茹で方の違い程度の事ではありますし、お店の規模も違えば商品も違うので別段取り上げる必要もない些細なことかも知れませんが、極端から極端というか、全く真逆のスタイルを連続して体験して、どちらが良い、悪いではなく、自分ならどうするだろうと考えてしまいました。ちなみに、どちらのラーメンもとても美味しく、素材にも麺にも出汁にもこだわりを感じる満足できるレベルでした。お店の本質であるモノづくりの面から見たら、つけ麺とラーメンで若干ジャンルは違いますが、甲乙付け難いくらい拮抗していたと思います。六厘舎の大量生産、高速回転モデルは、味が良いのはもちろんとして、やはり駅ビル内にあるロケーションによる影響が大きいです。当然、テナント料も半端なく高いでしょうし、周りに競合のお店がたくさんある中で、あまり待たすと客が逃げてしまいます。従業員の数もそれなりに必要で、生産性を落とすと売り上げに対する家賃の割合がすぐに大きくなるのは想像に難くありません。そう考えると、高速回転を止めるわけにはいかないし、必死で回しても一番儲かっているのはテナントを持っているJRなのかも知れないな、なんて思いました。

理想は牛のよだれモデル

入鹿Tokyoの方は、丁寧に作るこだわりがあるのはよく伝わりましたが、もう少し生産性を上げることが出来る余裕を感じました。少人数での運営ですし、大規模商業施設に入っているわけでもないので、今のスタイルで十分必要な収益が上がっているのかも知れませんが、せめて3名で入店した客には3名分を同時に調理しても良いのでは?
と思いました。とにかく、理想のお店の運営とは、バタバタとパニックになるような忙しさにならず、営業時間内は平均的かつ順調に絶え間なく客が来店し、必要な売り上げが継続的に上がり続けるスタイルではないかと思います。そんな商売のやり方を昔の人は「牛のよだれ」と言いましたが、飲食店はモノづくりと同時にやはり接客が非常に重要で、忙しすぎるとその部分がおざなりになり、客足を遠ざけることになってしまいかねません。入鹿Tokyoは意図的に牛のよだれモデルを作っているのではないかと思うのです。(あくまで私見です)

顧客満足と持続可能性のデザイン

そんな観点から2つの店を比較して特筆すべきはゆっくりと食事をするスタイルの入鹿Tokyoの方が(当然ですが)接客が丁寧で、券売機での注文時にお勧めのメニューを聞けたりします。当然、お店側が1番気合を入れて作っている高い商品が売れるわけで、入店した際に行列店にやっと入れた雰囲気と相まってついそのオススメを注文してしまいます。今回もラーメンとオススメのトッピングで1500円オーバーの高単価ラーメンを何の違和感もなく購入しました。その上で、ゆで麺機に2杯分ずつしか麺を入れずに丁寧に作る様を見せつけられ、ポルチーニ茸やトリュフの香り豊かなラーメンを出されると嫌がおうでも満足感は高くなります。六本木界隈に来た際は違うメニューのラーメンを食べにきっと足を運んでしまうと思います。要するに、行列を作って存在に気付いてもらう→並んでもらう事で期待値を高める→オススメ商品を注文してもらう→丁寧さと美味しさで高い満足を提供→リピーターになってもらう。と、牛のよだれモデルを丁寧にデザインされている訳で、これを地道に手堅く続けられたら(爆発的な売り上げは望めませんが)持続可能なラーメン店になるだろうと思った次第です。私ならこっちの店をやりたいですね。(^ ^)

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持続可能なビジネスモデル構築を現場を起点に進める研修事業をやってます。

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