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期待外れの世界に諦められない人が気づいたこと

2015年に国連で採択され世界中の国が批准した、地球全体、人類の進む先を包括した持続可能な開発目標であるSDGs。2030年に向けてのゴール設定とそれに対する目標は気候変動に対するリスク回避と貧困と差別を無くし、誰もが取り残されない理想的な世界への変革を表しました。しかし、残念ながら、2030年に環境負荷を無くし、誰もが笑顔で明るい未来を望めるようになるのは全く現実味のないゴールだと誰しもが気づいています。
理性で考えて出される解と実際の人の行動は整合しないのはこれまでの長い人類の歴史が証明してきました。しかし、かといって諦めて成り行きに任せてしまうには今の世界はあまりにも凶暴で破滅への道を歩んでいるとしか思えません。

人は本当にそんなに愚かなのか?

ユーラシア大陸とアラビア半島、世界中に戦火が広がり、ハルマゲドンの可能性がまことしやかに囁かれる今の世界を見ると、人間ってこんなにも愚かな生き物なのか?と悲観的になってしまいます。一方で、そんな訳ない、誰しもが平和を求めているし、苦しんでいる人をみて他人事だと無関心を決め込む冷血な人ばかりではないはずだ、絶対に。世界は成熟し持続可能な循環型の社会を実現するはずだ。との仄かな期待も持ってしまいます。また、誰が見ても達成する訳ないと思える目標をそのまま放置するのは如何なものか?と思う人たちも数多くいるし、その対処を考え、行動を呼びかけたり、自ら行動に出る人もいるはずだと思ってしまいます。
複雑怪奇に絡み合い、解決困難だと思えるほど圧倒的な量で数多く存在するこの社会の課題。その原因を紐解くと実は意外にシンプルな解に帰納するのではないかと私は考えています。それは太古の昔から悠久の時を経て現代に受け継がれてきた「良知」という性善説とその実践です。代表的なのは儒学者王陽明が伝習録に著した陽明学(実践哲学)で、それは東洋の思想と思われがちですが、近年では西洋の文化にも形を変えて広く知られるようになっています。SDGsが世界中の国と地域に批准されたのも実はその世界観が深く関係していると思うのです。

イスラエル、ガザで局地的な地上戦 空爆でハマス指揮官2人殺害
https://mainichi.jp/articles/20231014/k00/00m/030/195000c

働くの再定義

人は生まれながら学ぶことなく、慮ることなく良性を持っており、知っている。心の中にある良知に誠実に、真摯に従った行動を取ると人は幸せを感じる。世界的にその名を馳せたピーター・ドラッカー博士は資本主義経済が拡大して世界を呑み込むフェーズの時代において、経営、マネジメントに最も重要なのは真摯さであると断言して世界共通の価値観として東洋的思想が存在することを示しました。今の日本で、それが逆輸入されて学び直されなければならない状態になってしまっているのは少し残念ですが、我々が元々の国民性として持っているのに気づき始めた人たちも少なからずおられ、徐々に明るい兆しが見えているように感じ始めてまています。
西洋の思想では労働は神から与えられる罰の一種であり、日曜日にその労役から解放される安息日が設けられました。今の日本もその価値観にどっぷりと浸かってしまっております。しかし、元来、日本では働くとは「はた」を「らく」にする人の動きのことと定義しています。人のために行動することは喜びであり、人として生きがいを生み出す根源になります。
今一度、人が生まれながらにして持つ良知を存分に発揮して世の為、人の為に働くとの価値観をまず日本人が取り戻し、そのムーブメントが、金が金を生み、格差と断絶が極まっていく金融経済ではなく、信用や信頼、贈与や奉仕で人が幸せに暮らせる共感経済をかたち作れば、社会課題の多くは解決に進む可能性があると思うのです。

「両替商を神殿から追放するイエス」(ジョット作、14世紀) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%AF%8C

気付いて、行動し始めた人たち

まず、人としての在り方を見直す、次に世界に対する見方、考え方をアップデートする、良心と理性を認知した人たちが繋がる、そして社会実装の取り組みをスタートさせる、人としての在り方を明確に持った人たちがはたを楽にする行動をし続ける。こんな当たり前のことばかりの集積が世界を変えると思いますし、世界の成熟とはこんなことだろうと私は長年、ぼんやりと理解をしていました。しかし、実際はなかなか同じパラダイムの人と出会う機会を得られずに、結局何も社会に対してアプローチ出来ていなかったのが実際のところ。歯痒い思いをしていました。
そんな悶々とした思いを抱えていた2年前に、ひょんなご縁で経営実践研究会なるコミュニティーに関わるご縁を頂きました。10数年前から目に見えない資本を重要視する経済(信頼や文化、知識や経験、関係や文化等々・・)の重要性を訴え続けてこられた田坂広志氏や進化型組織の旗手として有名になった武井浩三さんがアドバイザーとして参加されておられ、同じ価値観を持つ人たちが数百人も集っている事を知って衝撃を受けると共に、本当に嬉しくなりました。
今ではその研究会に1000人もの経営者が集まり、オムロンの創業者、立石一真氏が提唱した未来予測、SINIC理論の研究委員会も発足するなど、世界を変える可能性を秘めた団体へと成長を続けています。

IDGs(Inner Development Goals )


そして、在り方、考え方、人と人との繋がり、協働、そして実践に繋げて世界を変革する一連の流れは別段、新規性が高いわけでも珍しいものでもなく、ごく当たり前の人の世の営みを整理したに過ぎません。いわば、誰もが知っているし、気付ける当たり前のことばかりです。世界がVUCA化を加速させ、SDGsの目標が未達に終わるのが火を見るよりも明らかになった今、私たち以外にも同じ原理原則に気付き、軌道修正のムーブメントを起こす機運が高まってもいいのにな、と私は以前から思っていました。
実は最近になってそれが漸く生まれ、世界中に広がりつつあります。
それが、IDGs(Inner Development Goals ) です。SDGsの目標達成が絶対に不可能であるとの見地に立って、何が必要か?を冷静に分析した結果、導き出されたのは直訳すると「内部開発」とされる「在り方」の再定義です。「在り方から始めよう。」との概念はあらゆる組織づくりや事業、原理原則型のマーケティングの合言葉ですが、改めてそれを広くを広めてスタンダードにすることを目的とした非営利団体が提唱する概念であり、アクションです。

IDGsの「5つのカテゴリー」

  1. 「在り方」自己との関係性/ Being–Relationship to Self

  2. 「考え方」認知スキル/ Thinking-Cognitive Skills

  3. 「つながり」他者や世界を思いやる/Relating-Caring for Others and the World

  4. 「協働する」社会的スキル /Collaborating-Social Skills

  5. 「行動する」変化を推進する /Acting-Enabling Change

マジョリティーは既に気づいている。

欧米諸国が世界を席巻し、奪い、搾取し、殺しながら拡大を続けてきた、これまでの金融中心の強欲資本主義社会の延長線上に、世界中の人が分け隔てなく平等に平和に幸せに生きられる世界は絶対にないし、格差と分断が加速する先には破綻と地獄しか待っていない。地球の資源は有限であり、際限のない成長を求めることは地球を破滅に向かわせる所業以外の何でもない。
そんな当たり前なことに殆どの人は気づいています。とはいえ、自分から主体的になかなか声に出し、行動を起こすのはそんなに簡単ではない。
慣れ親しんだ日常を変えるには何かしらのキッカケが必要ですが、今の世界は毎日のように悲劇や惨状、不条理が拡散され、キッカケに溢れかえっています。既に気づいている多くの人たちは、何か行動を起こさなければならないと思い始めているし、その蓄積されたエネルギーの向かう先はまず、inner(在り方)への真摯な向き合うことだと世界中で認知され始めました。そしてその表出で身の回りから変えていくしかない、それがこの不条理に満ちて、閉塞感漂う世界を生きるに値するものに変える唯一、自分が出来ることだと声を上げ始めています。
在り方を見つめ直し、気づいた人達でプロジェクトを立ち上げ、共同体の再構築を行うことで社会を変革する。そんなコミュニティーが日本でも立ち上がり、活発な活動を行っています。興味を持たれた方はお気軽にお声がけください。

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職人の地位向上、人を道具ではなく、人として向き合う職人育成のコミュニティーを運営しています。

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