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廃材をアートにする人

現在、大丸神戸店の催事場で「廃材のアート展」が開催されています。アーティストの綾海さんは私が世話人として所属している経営実践研究会のメンバーで以前から懇意にさせて頂いている事もあり、応援がてら個展の会場に足を運びました。

有明海のヘドロを使った作品

アートから発せられるメタファー

綾海さんは廃材を利用してアート作品を作る活動を、キャンピングカーで全国を周りながら行われています。捨てられるモノ、朽ちていくモノにスポットライトを当てて、それらにもう一度命を吹き込み価値を創造する、彼女が生み出す作品達は私達が普段の暮らしの中で全く知らない気付く機会の無い廃材の世界に誘ってくれます。鹿の角や篝火の炭、有明海のヘドロ、コーヒー豆を入れていた麻袋など、リサイクルやリユースと言った経済活動の循環の中での廃材利活用とは一線を画し、目の前に見える作品だけではなく、その奥に潜んだ彼女からのメッセージ、メタファーを感じずにはいられません。

鹿の角を使った作品

美女とヘドロ

私は以前から彼女の活動を遠くから見ていて、うら若い女性が何を求めてこんな活動をしているのか、イマイチ分からないと言うか、不思議というか、腹に落ちた感じがしませんでした。年々、地球環境への負荷が高まっている、環境破壊に対する危機意識は私も持っていますし、自社でも少しでもその負荷を減らしたいと建築廃材の分別だけでなく、残材の木の長さを切り揃えて薪として使ったり、キャンプに行かれる方に配ったりもしています。しかし、彼女の生活自体が廃材と共にある暮らしぶりはそんな私達の取り組みとは全く次元の違うレベルであり、何故そこまで廃材アートに傾倒しているのか正直不思議な気持ちがありました。

長良川の鵜飼の篝火の炭

純粋さが世界を良くする

今回、実際に個展の会場に行って彼女の作品を見せて貰う中で、私の中で理解出来ていなかった部分についてなんとなく分かった気になりました。(完全な主観です)それは、彼女が薄汚れた廃材に傾倒しているのではなく、美しい世界への渇望を抱いており、表現者として現実と理想のギャップを埋めたいと願っているという事です。そして美しいとは綺麗な色や新しく傷ついていないモノではなく、彼女の主観に基づいた価値観と言うか世界観です。純粋と言ってしまうと少し陳腐ですが、真っ直ぐにこの世を見て意味を感じるモノに対してその中に内包されている画一的では無い美しさを見出すのが彼女の存在価値になっていました。

問いかける作品と芸術の秋

想像を遥かに超えて幅広く多岐に渡る廃材を生まれ変わらせる彼女が作品に使っている素材の面白さに驚き、社会のお荷物と認知される廃材が生み出されるまでのストーリー、それらに命を吹き込む彼女の意図と世界観、そして「100年後の世界」とのテーマを掲げて集められた作品を見て、私にも問いを与えられたように感じました。彼女の作品を部屋にかけて飾ると、自然と世界に対する問いと、自分が目指す世界観について考えるきっかけになるのかも、なんて考えたりしました。10月11日まで大丸神戸店7Fに「廃材で描く展」としてブース出展されておられますので、神戸界隈、関西にお住まいの方は是非足を運んで頂ければと思います。秋はアートに触れる季節、ちょうど良いのではないでしょうか。

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環境負荷を出来るだけ無くした地域材、高性能、自然エネルギー利用の家づくりをしています。


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