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マーケティングの終焉 「新・卓越の戦略」の意味と価値

私は20数年前まで、個人事業主のいわゆる下請け大工の職人でした。本格的に起業するきっかけになったのは、仕事をもらっていた元請け工務店の業績不振で、「これからは自分で仕事を探せ」と言われたのがスタートです。起業当初は知り合いの伝を頼って不動産会社や大手ハウスメーカー、デザイン事務所などから木工事だけを請け負う下請け工務店で、真面目に一生懸命働けばそれなりに受注は取れましたし、徐々に社員の大工の人数も増えていきました。しかし、当時の日本はデフレスパイラルに陥り、職人の単価がどんどん下がる局面で、必死で働いても利益は上がらないし、しかも常にいつ仕事が途絶えるかわからない不安に駆られる毎日でした。そんな自分で未来をコントロールできない状態から抜け出そうと現在の本社ビルを建てて、元請け転換を目指したのが16年前、顧客やスタッフ、協力会社さんとの良いご縁に恵まれ、昨年なんとか元請け会社として創業20周年を迎えることができました。

メンターの存在

職人上がりの現場作業以外、全く何の知識もなかった大工経営者の私が、奇跡的と言っても過言でない、20年以上も事業を継続して来れた背景にはいくつかの理由と転機(人との出会い)がありました。その1つに原理原則型のマーケティング理論を学ぶ勉強会との出会いがあります。今は亡き私がメンターと慕っていた先輩経営者に誘われてその勉強会で学び始め、学んだことを実践に落とし込み、マーケティング(=自社独自のマーケットの確立)に取り組んだことで、今の私たちがあると思っており、私に小手先のノウハウではなく、本質的な事業の組み立て方を教えてくださった先輩経営者や当時一緒に学んでいた経営者仲間の皆さんにはいくら感謝しても足りないと思っています。

卓越の戦略

金なし、学なし、コネなしの文字通り徒手空拳だった私が死に物狂いで様々な概念や仕組みを学び、取り入れ、実践してきた中で最も中心的に取り組んできたのはジェイ・エイブラハムが提唱した「卓越の戦略」です。「7つの習慣」のスティービン・コヴィー博士、「マネジメント」で有名なピーター・ドラッカー博士が提唱した原理原則に基づいた信頼構築をベースにマーケットを作り上げる「やり方」と「あり方」を体系化し、非常に具体的に示した彼の著書「ハイパーマーケティング」に書かれていた概念で、これを実際の事業に実装してきたことで今の株式会社四方継が存在していると言っても過言ではないと思っています。以下にその「卓越の戦略」を転載します。

卓越の戦略
•あなたから何か買う人は、単なる「顧客」ではなく、あなたの保護下にある「クライアント」と考えるべきである。
•クライアントの生活をより良いものにする、という高次の目的のためだけに、ビジネスに取り組む。
•惚れ込むべき対象は、自分の商品ではなく、クライアント。
•クライアントが言葉に出来ない想い、ニーズ、課題を明確に表現し、それを満たすリーダーとなる。
•あなたやあなたの会社、商品、サービスがなかったとすれば、クライアントにとって損になる程のレベルで商売をする。
•あなたとクライアントの双方が、信頼、誠実、尊敬の対象となるような精神的な「きずな」を構築する。

Apple社の卓越性

この卓越の戦略に則って事業展開、サービス開発をした企業はジェイの本拠地アメリカだけではなく日本にも多く存在し、大きな成果をあげられて有名になった会社も少なくありません。その中でも最も有名な企業はなんと言ってもApple社で、世界一のブランド、世界一の株式時価総額を持つ会社として君臨しています。そのApple社が提供している商品やサービスを見ると、いまだに卓越の戦略の痕跡が残っていると感じずにはいられません。世界を変えたと言われるiPhoneやMacの商品開発の凄さだけではなく、ショップのデザインや接客、そこでの対応の細やかさ、またトラブルが起きた時に連絡するAppleCareの窓口の親切さ、丁寧さは同じデバイスを供給している他の企業と全く違うレベルでシステムが組み立てられており全く他の追随を許しません。まさに卓越の戦略がそのまま生かされ、圧倒的な顧客からの信頼を得て、独自のマーケットを創造していると言って過言ではないと思います。私たちとは全く次元が違うし、同じ概念を取り入れたと口にするのも烏滸がましいですが、資金もコネも顧客も、なんの強みもなかった私たちがこれまで生き残って来れたのはこの卓越の戦略に取り組んだおかげです。

新しい世界への対応

私がマーケティング理論を学び、取り組み始めてから15年が経ち、世の中は大きく変わりました。数年前から令和への改元、地の時代から風の時代に変わった、西洋と東洋の文明の隆盛期の転換期に入ったなど、様々な説がまことしやかに流れましたが昨年からのパンデミックによってそれが一気に加速したかの様に顕著な変化として現れ、これまでとこれからは全く違う世界になるのだとの認識を誰もが持つようになりました。あらゆるものが陳腐化する中ではもちろんビジネスモデルも今まで通りの踏襲では先行き怪しいと多くの方が感じられていると思います。マーケティングの世界も例外ではなく、原理原則に基づいた「卓越の戦略」さえも見直すべき時期に来ていると私が危機感を覚えたのが一昨年で、社内で改めて仕事のやり方、自分たちの在り方を問い直す取り組みを始めました。その結果、昨年の年頭には社名を変更し、組織図を解体し、新たな事業部を立ち上げて再スタートを切りました。そこで見出したのは自社独自のマーケット構築を目指すのではなく、自分たちは地域コミュニティーの一員であるとの在り方とその全体の課題を解決して良くしていくことが私たちの事業そのものになるということでした。以下に私達が新たに書き換えた「新・卓越の戦略」を転記します。

新・卓越の戦略
•あなたから何か買う人は、単なる「顧客」ではなく、あなたと継続的な共生関係にある「クライアントであり、コミュニティーメンバー」と考えるべきである。

•クライアントの生活をより良いものにする、という高次の目的と同時に関係するステークホルダー、地域、環境にも寄与するべくビジネスに取り組む。

•愛し大切にすべき対象は、自分の商品ではなく、クライアントを含む地域社会であり地球環境

•クライアントが気付かない潜在的な想い、ニーズ、課題を共に探求し、それを満たし、解決するパートナーとなる。

•あなたやあなたの会社、商品、サービスがクライアントにとっても地域社会にとっても不可欠なレベルで商売をする。

•あなたとクライアント、関係するステークホルダー、そして地域社会が、信頼、誠実、尊敬しあう精神的な「きずな」で結びつく

マーケティングの終焉と共感資本社会への移行

現在の株式会社四方継では建築技術に強みを持つ社員の大工と設計士が地域のインフラを守り、安全で快適な生活を安心して送れることを目的に掲げて次世代に引き継がれる価値のある丁寧なモノづくりを目指して活動をしています。そして、建築以外も含めたあらゆる地域サービスのHUBになって地域で頑張っておられ、信頼に値する人達との繋がりを見える化するコミュニティーサービスのつない堂では地域全体を盛り上げる活動を精力的に行っており、決して自社だけの発展や成長、安定を目指すのではなく、地域の一員としてご縁をいただいた方々と共に四方全部の皆さんと安心で健康的な暮らしを送れる状態を整えるべく、課題解決への取り組みを進めています。地域の皆様に存在意義を認められ、必要とされる業態を創り上げることこそ、マーケティングではなく、これからやって来る共感資本社会で生きていく私達の在り方だと考えています。

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新・卓越の戦略を実践、実装しています


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